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俺と聖女でひとつの身体  作者: 天川 和
四翼世界編
64/268

63:魔王救出戦2(真魔王)


 勇者ボルトの魔力供給を終え、俺達は中央広場にやって来た。もちろん、魔王の処刑が目的だ。中央広場とは言うが見た目は多目的野外競技場に近い。観客席が階段状に外側に広がり相当数の観客を収容出来る作りとなっていて広さもかなりある。


 客席の一段目には、警備の兵が重装備で並び会場を囲む。それだけでもかなりの数が配置されているが分かる。


 四柱が四方向に設置され、中央に人の形をした物体が置かれて、もうじき正午の日を浴びている。そして八翼世界では見なかった技術。そう映像技術だ。空間にそのまま拡大投影されていた。


 勇者ボルト、聖女リセルナ、ウォボス、ミユウの四人はそれぞれの四柱を前にして立つ。


(それでマスター?何か策は?)


(有るには有るが……)


(気が進まない策なのですね?でしたら、取りやめることをお勧めします)


(どんな策か聞く前からか?)


(はい。マスターが失敗する時は大体2パターンあります。自信過剰で油断し凡ミスを犯す場合。一か八かで確証もなく行動に出た場合。今回は後者に当たると予測します)


(…………)


(だいたいマスターは凡人なのですから、下準備し計算し成功確率を上げてから行動に出るべきです。私が記憶する限りではスタアの件が唯一のマスターらしい成功例です)


(唯一って……それだけか?)


(はい、それだけです。他は、上手くいったのが奇跡です。もしかしたら誰かが尻拭いしてくれていたのかも知れません。そうでなければ……奇跡です)


(二度言うか。奇跡の大安売りだな)


(はい、大安売りです)


 だが、ディアの言う通りかも知れない。この状況に陥っているのも確証もなく行動に出て、ルクスの言うところの『決まり事(ルール)』に触れたからだ。俺は英雄なんかじゃない。自分でそう言ってたはずだ。色々な問題が上手く解決出来過ぎて、いつの間にか増長していたのか?


(確かにそうだな……)


 なら、考えろ。今のこの状況で俺に出来る最善策。


(マスター、安心してください)


(ん?)


(いざとなれば、私が出ます)


 今まで一度として戦闘行為に参加しなかったディアが出ると言った。何故か不安が広がる。こいつ、言ってなかったか?勇者ボルトには負ける……と。それでいて自分が出ると?


(ディア?)


(魔王を救うため異世界の勇者が現れる。熱い展開ですよねっ)


(ディア、お前……)


(あれ?マスター。ひょっとして私の事、心配してくれてます?……そうなら、嬉しいですけど?)


(あ、当たり前だ。相棒だからな)


(相棒としてですかぁ?残念っ。でも、嬉しいですよ、マスター)



 銅鑼の音が三度響く。いよいよ始まるのだ。魔王の処刑が。


 ディアの真意を聞きそこなった。杞憂(きゆう)であればいいのだが。



「これより世界に災いをもたらした『魔王ハジール』の処刑を執り行う!」



 満席で埋め尽くされた観客席から歓声が上がる。それは全ての不幸の恨みをぶつける、そんな罵声の集合体だった。


「聖女リセルナ様!」


「はい」


 リセルナが手にしたロットに魔力を込める。すると、中央の物体が一人の人物の姿に変わった。俺には人間と区別がつかなかった。初老の男性。そうとしか見えない。それでいて男は身動き一つ出来ないでいる。


(あれが魔王のようですね。四柱の結界です。)


ディアが説明してくれた。


(確かにルクスも人間の子供にしか見えなかったな)


歓声が一層大きくなり、会場内を埋め尽くす。


「おい、ボルト」


 俺は周囲に聞こえないように小声でボルトに話しかけた。もっとも、この罵声の大音量の中では気を使う必要もないようだ。むしろ、こちらの声がかき消されそうだ。


「ん?どうしたの?」


「この魔王ハジール……だったか?何をしたやつなんだ?」


「何……とは?」


「ん……罪状だよ。災いってどんなことしたんだ?」


「さあ?」


 俺は自分の耳を疑った。勇者が魔王が行った事を知らない?


「さあって……じゃ、何で処刑されるんだよ」


「だって、魔王だし」


 俺はボルトの答えで、ルクスの言葉を思い出した。


(この世界の魔族もそうなのか?姿形が違うだけで人は恐れ排除の対象とする)



「ウォボス殿!」


ウォボスの名が呼ばれると、金属の塊としか思えない大剣を構える。魔力を込めたのか大剣が淡い光を放った。


「魔王ハジール、これで終わりだな」


「ふん、後悔することになるぞ。人種(ひとしゅ)の若者よ」


「脅しは俺には通用しねぇよっ!」


「愚か者め!!」


「言い残すことはそれだけか?じゃぁなっ!」


 その瞬間。ウォボスが大剣を振り下ろそうとしたその瞬間。


 勇者ボルトを中心に魔力が溢れ出した。膨大な魔力量にウォボスの動きが止まる。


(では、マスター。行ってまいります……お元気で)


ディアがそう囁いた。よせディア、そんな別れの挨拶みたいな真似……。


(ま………)


 引き止められなかった。俺には現状を打開する策が無い。今の俺は無力だ。


 会場の石畳が光を放ち、ディアの召喚陣が刻まれようとしたその瞬間、更に事は起こった。


 正午の日中にも拘らず辺りが暗闇に包まれる。光の降り注ぐ昼が『夜』になったのだ。いや、夜と言うには異様だ。星一つ出てはいない。急に視力を奪われ会場から悲鳴が上がった。


「てめぇー何しやがったっ!」


「それは、言い掛かりと言うものだ」


 ウォボスと魔王ハジールの会話が聞こえてきた。


「場内の灯りをっ!」


 聖女リセルナの一言で会場の灯りが場内を照らす。昼から暗闇へ、暗闇から明るい灯りへ。パニックを起こした観客には、逃げだす者も出始めていた。


 昼から一転して夜へ。俺はこの現象を知っている。いや、でも、まさか。



 有り得ない。



 やがて上空を指さした者に釣られて、観客が視線を上に向けた。悲鳴が一斉に上がった。


 そこには。


「魔王を騙る者の処刑と聞いてやって来た。特等席にでも案内してもらおうかの?」


 


 そこに居たのは明らかに魔族。漆黒の翼、鋭いかぎ爪、そして頭には2本の角。会場の灯りがスポットライトであるかのように照らし、そいつは静かに舞い降りた。


「何者です!」


 リセルナ、ウォボス、ミユウの判断は早かった。勇者ボルトを中心に三角陣形を取る。現れた魔族を脅威と認識した為だ。そう、魔王ハジールよりも優先順位が上だった。警備の兵は、まだ状況を把握できていない様子で立ち尽くしている。


「ウォボス、先走らない。死ぬよ」


「やっぱりそう思うか?俺の勘違いならいいなって思たけどよ。だが、ボルトなら……」


「うん、リセルナと、ボルト、いれば、勝てる。ウォボス、分かって、るよね?」


「ああ、命に代えても」


 素早く会話しながらも目は離さない。二人の意思はボルトとリセルナを守ることに統一されていた。


「もう一度尋ねます。何者ですっ!」


「我を知らぬと?」


「ええ、貴女のような禍々しい魔力の者が居たなら気づけたはずです。断言できます。貴女はこれまで存在していなかった」


「なるほど、素晴らしい魔力探知を持っておるようじゃ。ならば、覚えておくがよい。我が名は……」



 翼が一際広がる。



「魔王ルクス!真の魔王である!」




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