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05:聖女は真実を語るか?(1)

 

「それで『聖女様』。俺の存在は、何だと思いますか?」


 落ち着いたところでそう切り出した。


「わたくしのことは『レムスタリア』とお呼びください。呼び捨てで構いません。今更ですけどね?」


 やっぱり見た目は可愛い。今までが演技だったり腹黒だったりしたら……。


 兄は女性不振になりそうだよ……妹よ。


「まぁ、それでいいなら。それでは『レムスタリア』。俺の存在は貴女(あなた)にとって何ですか?」


 多分、この質問が正しい。答えを得られたなら全て繋がる。


何故(なぜ)『ファウ』様なのかは分かりません。ただ、わたくしの内に居る理由は在るのだと確信しています。わたくしの中に、確かに『ファウ』様が存在している……ならば、もうこれしか考えられません!」


 一呼吸置く。


「それに、以前にも似たような経験をしたのです」


「ほぅ」


 あえて核心には触れないように誘導していたのかとも思っていたが、そんなことはなかったのか?


 『レムスタリア』の中では状況の把握(はあく)が済んでいる様子だった。


 俺は自分の間違いを正せる男、心の中で反省した。


「そう、あれは半月ほど前のことです。気が付くと見たことのない場所に居るのです」


「なるほど、先ほどの戦闘が終わって目覚めた状況と同じか……」


「そして両手には(あふ)れんばかりのお団子が……」


 ……いきなり、雲行きが怪しくなった。


「でも、食べ物を粗末には出来ません。これでもわたくしは『聖女候補』。わたくしは、頑張って全部食べたのです……美味しかった」


「へぇー」


「ですが、その日の夕食はわたくしの大好物のエビ!」


「で、食べられなかったと……」


「いいえ、食べ物を粗末には出来ません。これでもわたくしは『聖女候補』です。美味しくいただきました」


「食べたのかい!」


「その後、体重が増えてしまいました……」


 ……俺は何をしているのだろうか?


「悲しい事件でした」


 ……うん、どうでもいいよね?それ


「そして思い至ったのです!お団子を買ったのは()()()()()わたくしに間違いないと!巧妙な罠だったのだと!……いたずら好きですね、もう一人のわたくし」


 俺は言葉を失う……だってそうだろう?


 この、可哀想な()にどんな言葉を掛けるのが正解なのか?


「つまり『ファウ』様も、わたくしの別人格で間違いないかと!」 


「……俺の反省をかえせ」


「あのぅ、何を(おっしゃ)っているのか良くわからないのですが?」


「それは、間違いなく俺の台詞(せりふ)だ」


「気が合いますね!わたくし達!あ、でも別人格でも元々わたくし達なのですから気が合って当然ですわね」


 別人格で決着しちゃったよ……。




 ダメだ『レムスタリア』のペースに呑まれる。


「いいかな?そもそも俺は、帝国出身の『鑑定人』だ。裕福ではなかったが、それなりには稼いでた。まぁ、お陰で少しばかり厄介な目にあってるがその辺は個人情報なので察してもらうとして。決して『レムスタリア』の別人格などではない!」


「もちろん、察しております!」


 何その……「貴方のことは全て理解してますわ」的な微笑


 もう、いやな予感しかしないのだが。


「ちなみに、何を察したのか聞いても?」


「はい。お名前は『ファウ=バルド』様。『鑑定人』との設定で他はまだ出来ていらっしゃらない。これから色々と設定を考えていきましょうね?初めての共同作業です!」


「設定じゃねぇよ!」



 ダメだ……この聖女。


 既に色々超越しちゃってる。


 『腹黒』とか思ってゴメンな。計算でどうこう出来るタイプではない。むしろ考え無しで回りを巻き込むタイプだ、貴女は天然モノでしたよ『聖女様』。



 俺は何故か敗北感に包まれた。



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