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俺と聖女でひとつの身体  作者: 天川 和
魔女、魔王編
58/268

57:四翼の勇者

(ファウ様、起きてくください)


(ファウ様)


(ファウ)


(お兄ちゃん、起きて)


(マスター、時間です)


(お兄さん)


(ば、ばかなの?起きなさい)



(あぁ、これは夢だ。間違いない。夢を夢だと認識している『明晰夢』だ。『明晰夢』は自身で夢をコントロールし望む結果を得ることが出来るらしい。だからと言ってこれが俺の望みだとか認められん。絶対にだ!認めてしまったら…………)



(頑張ったね、もう、我慢しなくていいんだよ?)


(この身も心もファウ様のモノです)


(貴方が望むならいいのですわよ)


人種(ひとしゅ)との混血でも強く育てて見せるぞ)




(俺がこれを望んでいたことになる)




(お兄ちゃんと呼ばせて。一子相伝の子作りを)


(マスターと子作り~)


(血の繋がりはないから、お兄ちゃんと子作り~)




(それだけは認められん!お前ら服を…………)




「服を着ろーーーーーっ!!」


「はい?」


 そこには見知らぬ少女が小首をかしげて俺を見つめていた。


「はい?」



 俺『ファウ=バルド』は転生者である。


 初めに生を受けた世界では、何をするでもなく何を成すでもなく、只々平凡に人生を終えた。ただ一つあるにはあるのだが口留めされているのでここでは語れない。


 それもあってか、記憶を残したまま次の人生の『八翼世界』へ転生することになったのだが、遺跡探索中に『リリスの口付け』にて23年の人生に幕を下ろす。……が、女神アンニージェによって再び『八翼世界』へと転生……いやあれは転生と呼べるのか?


いや、そもそも俺は何をしていたんだ?夢の中の女性達は誰だ?


「……したよな?転生」


「はい?」


「いや、こっちの話だ。で?君は誰?」


 俺を見つめる少女。


 俺が初めて転生したしたときに感じた疑問がある。何故、転生世界には美女や可愛い子が数多く存在するのだろうか?との疑問。それはもう、はしゃいださ。しかし、相手にされないという現実もまた存在するのだ。取柄と言えば『呪い』の俺には本当に縁がなかった。


 そんな美女の一人がそこに居た。ただその少女は群を抜いていた。特に特徴的なのは髪。見る角度、光の強弱で色を変える。俺が今まで見たことのない美しさ。一言で表すなら『虹』を髪にしたとでもいえばよいのか。


 だが、警戒を怠っているわけではない。こう見えても順風満帆な人生は送っていない。俗にいう「ハニートラップ」では痛い目を見た経験もある。一瞬、赤毛の同業者の顔が浮かんだ。


 白一色で統一された調度品。豪華でいて嫌みのない細工が施されている。敷き詰められた絨毯、窓からの風で揺れるカーテンでさえ一級品。俺が今まで見たこともない、何に使うか不明なものまでその価値は破格のものであろう。『鑑定人』魂が疼く。


「まだお加減が宜しくないのですね?」


 俺の質問にそう答えた少女。


「では、少し早いですが」


 そう言って頬を赤らめた。


「わたくしの中へ来てください」


「は?」


 その時の俺は間抜けな顔をしていただろう。自覚はある。


「ですから、いつものようにわたくしの中へ…………」


「なななな、なか、いいいいいつもっ!」


「わたくしだって恥ずかしいのですから、これ以上は言わせないで…………」


 少女はそう言って瞳を伏せる。そして俺は確信する。


 これはあれだ。夢から覚めたと見せかけて、実はまだ夢の中。



『美女ばかりの世界で一人に決められないけど、夢なら食べちゃっても関係ないよねっ!』



 なんか、そんな最低のタイトルが浮かんだ。


 前世も含めて23年、前々世も含めると……。


「黙秘権を行使するっ!」


「はい?」


「いや、では、お願いしますっ!いや、しかしっ!」


「ふふっ、おかしな勇者様。いつものようにわたくしに身を任せてくださいね」


「え?ゆう……今、なん……」


 最後まで口に出すことが出来ずに俺の視界は暗転し身体が後ろに引かれる感覚。


 それは、懐かしいような……つい最近まで身近に感じていた。そんな感覚だった。



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