56:終わる世界
王国某所
「それで『第二聖女』は?」
「はっ、『第二聖女』様は初めは優勢であられたのですが魔王の第二形態にて左腕を損失。第三形態にて…………死亡が確認されました」
「リテリ…………が…………死んだ?」
「はっ!尚、片角を折られた魔王ルクスの怒りは凄まじく、そのまま人類に宣戦布告。各大陸に攻め入っています!我が国も国境は破られ王都に攻め入られるのは時間の問題かと…………」
「…………」
「クローリア様、我々はもはや『第一聖女』様に頼るほかないのです!どうか…………」
「わたしがここを出たらどうなるか分かって言っているのですね?」
わたしの役目、それはこの国の最後の最後に全てを焼き尽くすこと。『太陽の聖女』響きは良いがこれが女神がわたしに与えた役目というのなら…………。
「はっ!魔王軍に蹂躙され殺されるくらいならば『第一聖女』様のお慈悲をもって民を…………」
「…………分かりました。出ます、準備をっ!」
「はっ!」
(リテリ、レムスタリア、貴女達はもう逝ってしまったのね)
王国第一聖女候補クローリア。ミドルネームも家名もない。全て返上した。『太陽の聖女』別名『厄災の聖女』。属性は太陽。
読んで字のごとくその能力は太陽。つまり熱と炎に特化している。ステータスはパーフェクトだが一度その力を使うと全てを焼き尽くす。正に厄災。
第一聖女候補ではあるが過去に第二聖女が語ったように『聖女』としての資格はないと本人が断言している。何故ならその力は敵も味方も焼き尽くすのだから…………。
焼かれた民は、納得するだろうか?するわけがない、私と蹂躙する魔族と何が違うというのか?
太陽、太陽か…………。何が太陽だろう。これでは只、呪われた力でしかない。
『死点流撃』!!
飛来したそれは炎の壁が蒸発させた。
そこには少女が立っていた。この私の炎の中で生存出来る生物など存在するはずがない。しかし、そこに立っていた。
「何の真似ですか?」
「それは、こっちの台詞よっ!」
「現状が理解できていないのですか?」
「出来てるから、急いでるっ!」
(後、90秒で『構築』が切れる。そしたらもう、熱を防げない。怖いけど……この人、凄い怖いけど……お兄ちゃんがここに居たら絶対にこの人を止めようとしたはず……なら)
「お兄ちゃんの妹であるリリスが、逃げるわけにはいかないのよ!!」
帝国某所
「ぐふっ…………な、何の真似だ」
「何の真似とは面白いことを言う」
「そ、ソフィア…………」
「おかしいとは思いませぬか?皇帝?」
「ぐがっ!」
胸に突き刺した剣を捻る。
「トイネア女帝が収める帝国に皇帝?貴方は何者です?そしてトイネア様は今どこに?」
何故今まで疑問にも思わなかったのか。トイネア様に忠誠を誓ったはずなのに、いつの間にかこの男に挿げ替えられた私の忠誠。
「も、申し上げます!」
扉の前から慌てた兵士の声がした。
「何だ?」
「魔王軍が国境に侵入!」
(魔王軍?来たか。リリスの兄との再戦だけが心残りだが…………まぁ、いいか)
「ならば私が出るっ!」
「あ、あの勇者様は?」
(勇者、勇者か……自信ばかりで能力の伴わない軽薄な男。異世界からの転生者だったが、よほど平和ボケした世界から来たのであろうな)
「私の全力に三合ともたぬようでは使えん。切った」
神国某所
「魔王軍の侵入を許すとはっ!勇者は!真巫女は何をしていた!」
「それが…………呪いと思われる症状にて戦闘不能とのことで」
「呪いだと?呪い程度っ!」
「あら?呪い程度とはつれないお言葉…………」
そこには一人の少女が立っていた。
「何者…………」
「少し退いてくださいな」
そう言って兵士に触れた。それだけで兵士は絶命した。
「お前は…………」
「お前などとはよそよそしい、昔のように『葵』とお呼びください」
「葵…………」
「感謝していますよ、勇者様を殺ろす為だけに特化してくださった私の能力。やっと私の力が生かせました」
「勇者を…………どうした?」
「この国もおわりですねぇ。あはははははは!」
シルベア大陸某所
「なんだよ、せっかくこの地を纏め上げたってのに終わりかよ」
「ウォボスはあほ?戦わずに、済んだのだから、幸運。帰ろう?八翼世界はおわり」
「…………そうだな、帰るか。皆待ってる」
「うん!」
猫耳がピクピクと喜びを表した。
王国は『第一聖女』によって…………焼かれ、帝国は女帝トイネア不在、勇者不在のまま歴史から消える。神国に至っては『葵』によって呪われ、不浄の地となり下がった。北の大陸は王が急に消え混乱のまま魔王軍に蹂躙され滅ぶ。その後小国をも含め八翼世界は魔王軍によって征服。
こうして『八翼の世界』は滅びを迎えたのだ。




