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俺と聖女でひとつの身体  作者: 天川 和
魔女、魔王編
55/268

54:闇VS闇(1)


 葵はそれを見ていた。いや、見てしまった。


 幼き頃より呪いを持たされ、星読みと呼ばれる呪いに縛られて、一時は生きることを諦めた。そんな自分が今もこうして生きていけるのは…………。


『嘆きの束縛』!!


 ルクスに放たれた呪いの荒縄は届くことなくはじけ飛ぶ。無意識の発動だった。


「何の真似かな?葵お姉さん?」


「そ、それは…………」


 葵は唇を噛み締めた。


「それはこちらの台詞です!」


 ルクスの目を真っ向から見据える。


(ほう…………。)


「何故、何故っ!」


 ソレを見た。それはかつては「第三聖女(レムスタリア)」だったモノ。黒く炭化し崩れ落ち、人の形は残されていない。既に灰の山として存在しているだけのモノ。


(何故…………か?)


 そう言いルクスは考えるそぶりをする。


「理由は、言えないかな。それを聞いたら葵お姉さんもそうなるよ?」


 灰の山に目をやる。


「葵お姉さんは、計画には入ってないから……今なら無かったことにしてあげる」


 計画?計画?何…………それ。


 まさか。


「まさか、初めから…………?」


「そんなこと考えてなかったよ。でも、時期的に丁度良かったからね。つい…………ね」


「つい?ついって何ですか…………」


「ん?」


 小さなつぶやきはルクスには届かなかった。


 葵の周りを『折り鶴』が浮遊する。


「まぁ、これも想定内かな。でも本気?」


「本気です。」


「なら、ハンデをあげるね。葵お姉さんの攻撃が私の身体に触れたら勝ちでいいよ。」


「なっ!」


 そう、確かにまともにやって勝てる相手でない。『第三聖女(レムスタリア)』とあの人が反応すら出来なかったのだから実力差は歴然。


 それでも、生きていれば楽しいこともあると教えてくれたあの人を殺した理由を私は知りたい。その為には…………。



 (かつて『勇者』を殺そうとした『葵』お姉さん。『勇者』を殺すために王都に訪れた。私ですら勝てないと思えるあの『勇者』をだ。だから何かある。『葵』お姉さんには、まだ何かが)


「仮にもかつては呪いの真巫女と呼ばれていたのであろう?」


「…………」


「真巫女の神髄、楽しみじゃ」




「『鬼神・結界』!!」


 先に動いたのは『葵』。後手に回っては勝ち目はないと理解している。5つの『折り鶴』を使用した『五芒星』による拘束。


「『雷撃・招来』!!」


 続けて頭上からの雷攻撃。動きを封じて攻撃を当てる。戦いの基本だ。

だが、封じられたらの話だ。


 相手は『魔王』。


「悪くない攻撃じゃ。だが、魔王を封じるには聊か貧弱な拘束であったのう」


 『魔王ルクス』は雷を片手で防いだ。いや、違う。


 ルクスの足元は火花を放っている。ソレは雷が身体を流れて地面に抜けたということ。すなわち、雷のエネルギー程度ではダメージにならないことを表していた。


 だが、先程魔王は攻撃を当てたら勝ちと言っていなかっただろうか?ならば、既に『葵』の勝ちだ。しかし、ルクス、葵共にそんな条件は頭から消えていた。


「『風神・糸刃』!!」


 空より細い糸が舞い降りる。それは極度に圧縮された空気の渦。竜巻を圧縮し、圧縮し、圧縮し、破壊力を閉じ込め、糸の如き細さまでにしたモノ。その糸は全てを切断する。それは魔王を八方から取り囲み範囲を高速で狭めた。


「なるほど、雷は囮じゃったか、本命はこちらか」


『葵』は無言。


「じゃが」


 魔王ルクスは地面を殴りつける。巻き上がる土煙の中、竜巻の切断糸が一つに重なる。本来ならそれは、中心に居た者が八つに切断されたことを意味するのだが……。


 葵の表情は硬いままだった。


「下っ!?」


 咄嗟の回避を試みる……が、下からの閃光は回避途中の『葵』の半身を蒸発させた。そう、ルクスは地面の中に潜ったのだ。八方を囲まれたとはいえ竜巻は空と地表の間に存在する。ならば、地中こそが安全地帯。


 半分になった『葵』の身体は、そのまま力なく倒れた。


(ん?音が軽いの)


 いくら半分と言え、人の倒れる音では無かった。


『龍じ……』


「これが大本命じゃったか」


 『葵』の印は遮られる。手首を握ったルクスの手は、『葵』の力では振り解けなかった。


「式神を使用した本体の誤認。『風神・糸刃』までが囮じゃったとはのう。すっかり騙されたぞ?」



 呪いの発動は位置を断定される。その為に使わなかった『葵』だが、結果は同じだった。全てにおいて圧倒的な差がそこにはあった。



「さて、次の手はあるのかの?」



「そこまでです!」


 辺りが闇に包まれ、夜の静けさが訪れた。


第二聖女(リテリ)か?」


「やってくれましたね魔王!」


 既に大鎌を手にし、『満月』を背にしている。月は魔力の高まり。


 過去に発動と同時に月が満ちていることなどあっただろうか?


「私は貴方がこの屋敷に滞在するのには反対でした。魔王ですから…………」


「そうじゃろうの。この国の歴史を見れば聖女として当然じゃ」


「けれど、あの方はこうおっしゃったのです」


「…………」


「俺を信じてくれるならルクス(魔王)も信じてくれ…………と。それを、貴女(あなた)はっ!」


 純白だった聖女衣が影を帯びていく。


 いや黒く染まっていく。深い、深い、闇。


「なるほどのう。次は聖女様、いや『魔女』の本気か…………見せてもらおうかの」


「ええ、勿論ですわ。存分に味わっていただきます」



『葵』『ルクス』戦を追加。

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