53:聖女VS魔王
唐突に開始された魔王ルクスとの戦い。
『勇者』と『聖女』が行動を共にしているのなら、それが極当たり前の出来事なのだろう。だが、これは本来ならば回避できたはずの戦いだ。
(ディア!ディアレス!)
だとしてもだ。
俺の出る幕は全くない。分かり切った単純な答え…………魔力の総量からして規格外。
つまり、戦闘力の問題で相手が出来る者は限られている。
そう、『勇者』以外には考えられなかった。
只、ここで問題が発生していた。当の『勇者』である『ディアレス』の反応が無い。
「ファウ様!もう、もちません!!」
ルクスから溢れ出る魔力の渦。ただ、それだけを受け止めるだけで『蒼鏡』は1枚、1枚と砕け、煌めきと共に消えていく。
この魔力が『攻撃』という方向性を持った時には…………考えたくもない。
(耐えてくれ!レムリ!)
確かに今はサポートとして存在しているはずの『ディア』。
この場合は機能していないと言うべきか?もう一度言うが、反応が無い。
(ディア!ディアレス!)
この状況に至って俺は、以前より考えていた疑問を思い出す。今までも多くの危機的状態はあった。だが、『勇者』として戦う姿を見たことが無いことを…………。
初めてその姿を現したのは『闘技場』だったが、恐ろしいまでの魔力を開放はしたが戦闘は無かった。
『真巫女』の襲撃のきは、何と言っていたか…………そう。
「だって、私なら死なせてしまいますから…………」
そう答えた『ディア』をサポートに戻し俺が戦った。
『白金の戦乙女』との戦い。
リリスの『構築』で難は逃れたが、あれだけの窮地にも関わらず『ディア』は一度として反応すらみせていない。
まるで…………そう、いや、考え過ぎか。
『第二聖女』とのやり取りで現れた時も言うに及ばず、
「ファウ様!何故こんなことになっているのですかっ!」
(すまん。俺が選択を間違った)
何故こんなことになったのか?答えは簡単だ。『魔王軍』が行う『治安維持』に対する『決まり事』に俺が触れた。
そして、そのために俺を排除しようとしている。実に単純な答えだ。
「本当に残念だよ。お兄さん…………」
ルクスがそう告げた。
それだけで理解できてしまった。おそらくレムリも…………。
指一本動かせず、瞬きする間もなく。
その瞬間『第三聖女レムスタリア』の存在は…………灰となった。




