50:女神様と一緒
「……と、言うことだよお兄さん」
そう言ってルクスはお茶を啜った。自分で入れたお茶だ。
「『女神』と言えば親も同然『転生者』と言えば子も同然です。お願いしますね」
なんか、『女神』様にお願いされている俺。しかし、多分だけどあの婆神様と同一人物だよね?人物って表現もおかしいか。
「ただ、私は傍で観察するだけです。人は困難を自らの手で乗り越えなければなりません。皆さんへの試練ですね」
「つまり、俺達に介入しているであろうモノを見極めるだけで、直接は手を貸さないって事ですか?」
「そうです。皆さんは普段通りに過ごせばいいのです。私の事は気にせずいつも通りに生活してください」
……やはり気になる。
「ひとつ聞きたい」
「何でしょう?」
「俺を転生させた婆さんだよね?」
「お姉さんです」
「婆さ……」
「お姉さんです」
ヤバイ。今、確かに身の危険を感じた。
「まぁ、冗談です。本来は決まった姿などないのが神ですが、女神などと呼ばれているので女性の姿をしています。あの時の高齢者の姿は来たものを安心させる為。気兼ねなく話せたでしょう?今のこの姿は貴方のためです。男の子は女子がいるだけで張り切りますからねぇ?」
まぁ、言いたいことは分かる。実際、男だけよりも女が一人いるだけで仕事の能率は上がるのだ。女の前ではカッコ付けたい生き物、それが男……悲しい性だ。
だがこの現状、ひとり女性が増えたからと俺のやる気に繋がるだろうか?
「で、女神アンニージェ様でいいのかな?今、俺の身体ってどうなってるの?」
「んーーーー」
今明らかに視線を反らした。何?もしかして、最悪の可能性があるのか?
「わたくしも知りたいです!」
「ははぁーーーー!」
「リリスも知りたい!」
「教えてください!」
「聞かせていただきたいわ」
「マスターはわたしの嫁!」
一斉に声が上がった。ルクスだけが無言だったな。何か知っているのか?
そして約二名完全に変だからな?その反応。
「も、もちろん……ありますよ?あ、貴方が使命を果たした暁には戻してあげましょう」
「…………」
「…………」
「今考えたよね?女神様?」
「私はこの世界の女神ですよ?今考えようが、後で考えようがそれが正解なのです!」
開き直った。あー、何となく分かった、この現状を招いている原因が。もっとしっかりした神だと思ったのにな……。
「何か失礼な事を考えていませんか?」
「イイエ」
「まぁ、良いでしょう。皆さんもよろしくお願いしますね」
するとリテリさんが直ぐに口を開く。
「では、何とお呼びすればいいのかしら?女神様?私達だけならいいけど、人に聞かれたら騒ぎになりません?」
おお、堂々としたものだ。流石『魔女』。『神』値が低いから物怖じしないな。…………ん?何でここにいるの。自分の『ルクルブ邸』あるよね。
それに引きかえ『葵』は、案の定ひれ伏していた。『神』値高いからな『真巫女』。信仰心が高いと言ってもいい。
「葵、お前、それじゃ仕事にならないからな」
「ば、バカなの?女神様よ、アンニージェ様が降臨されてるのよっ!」
うん、ソウダネ。ビックリダネ。
「アンニージェと呼び捨てで構わないわ。女神と言っても肉体を持って下界に降りた時点で人族と変わらないのよ。違う点は不死なだけ」
(それ……十分違うと思いますよ?)
「ではこうしましょう」
レムリが入って来た。悪い予感しかしない。
「アンちゃんとニージェちゃんでアンニージェちゃんです!」
「「「「???」」」」
予想はしてた。皆、理解できていない。しかし、俺には理解できてしまった。
レムリとスタアでレムスタリアが気に入ってたんだな。お気に入りを当てはめた訳だ。しかし、レムリ……女神さまは一神だ。二重人格ではない。分ける必要が無いんだよ。
「良い考えですね。これなら名前で私と分かってしまうことはないですね。ではニージェとしましょう」
何で後ろを選んだ?だが、女神様には好評のようだった。『ニージェ』呼びで決定したようだ。
「うむ、呼び名も決まったようじゃな。では今後の方針じゃが『ニージェ』への協力を第一とする。協力と言っても進んで何かをする必要はない。普段の生活の中で明らかに低確率の中から掴み取ったであろう事柄を報告してくれたらよい」
「ルクス、それってどんな小さなことでもいいのか?例えば、ダンゴが一本多く入っていたとか、何の関係もなさそうなことも?」
「うむ。判断は『魔王』と『女神』が行う。面倒掛けるがよろしくの」
確かに面倒なことになった。しかし、俺達に介入している奴か……。
その者が存在した場合、俺達は意図的に集められた事にならないか?
……雲を掴むような話しだった。




