46:第二聖女VS第三聖女(2)
「あらら……追い詰められちゃった、お兄さん」
「えっ、大丈夫なの?このままリテリ様に浄化させられたりは?」
「まぁ、最悪な事にはならないと思うよー」
「どうして?」
今まさに、そうなろうとしているのにルクスは平然とそう言った。どうして最悪な事にはならないのだろう、何か根拠が?
「だって、あの女がいるじゃない」
「あの女?…………あっ」
そうだ、ついこの前まで私が命を狙っていたひと。今はもう自分の『星読み』を信じてはいないけれど世界を壊すとまで示唆された世界の理不尽。ファウはその人のご主人なんだ。今ひとつ、関係がよく理解できないけど……。
そして、今まさに彼女は現れた。
風が吹いた。
風が円を書くように走る。見えない何かで地面に文字を描くように彫り込まれていく。数字や記号や文字列を刻んだ地面の溝は、何かに呼応するように光の鼓動を始めると一斉に輝きを放つ。
それをもって世界を繋ぐ。それをもって宣言しよう。
今ここに現れるものは美の女神によって祝福されし者だと。
召喚陣
中から現れたのは『八翼の勇者』だった。名を『ディアレス』。
『聖女候補』であるならば知らぬ者は無く、待ち望んでいた者。それが『第二聖女』の前に現れたのだ。
「勇者様……」
『第二聖女』のつぶやきは、夜の虫の音にかき消されるほど小さかった。
「ディア!」
「はい、マスターのディアですよー」
間違いない。召喚陣を作り出した魔力は『レムスタリア』の内より発動した。ならば『勇者』は『レムスタリア』の中に居たことになる。
『レムスタリア』が『勇者紋』をその身に発現させたのではないのは理解できる。何故なら勇者様の『八翼天翔紋』は単体であり、『ツガイ紋』を重ね合わせていないからだ。『レムスタリア』が候補ではなく真の聖女となれたのならば、『八翼天翔紋』は次への形を成す。
ならば、『レムスタリア』の中に『勇者様』が居たことの説明が付かない。
「勇者様……なのですか?」
自分は何を聞いているのかとリテリは思う。それはもう、間違いない事だ。そうじゃない、自分が聞きたいことは別だ。
「失礼しました。何故、レムスタリアの内より?」
そう、それが一番知りたいこと。
「ん~。マスターと一緒に、まぁ、居候ですね」
「マスター……いそう……ろう」
頭が追い付いていかない。
「マスターが消えてしまうと困るので私が相手します」
リテリは焦る。当然だ、勇者と争う気など微塵もない。むしろ全面協力するつもりでの『聖女候補達』なのだから。
「お待ちください。貴女様と争う気はございません、ひとつお聞かせください。マスターとは?」
「貴女が悪しき者と呼んでいる、今まさに消そうとしてる男です」
「この……もの?」
『夜』が割れて現実に戻る。戦意は無くなったと理解してもいいのだろうか?
「えっと、いいかな?先ほども言った通りまず、自己紹介させてくれ」
「…………」
リテリは無言。肯定と受け取ろう。
「俺はファウ=バルト。元々は帝国領で『鑑定屋』をしていた者だ」
要点だけ、重要なことを先に伝えた方がいい。
「レムスタリアの『呪い』は俺が『解呪』した。レムスタリアが俺の存在を黙っていたのは周囲にあらぬ疑いを掛けられない為だ」
「え?呪いを解いた?レムスタリアの?貴方が?」
俺は、一呼吸置く。
「リテリさんなら、その辺、『あらぬ疑い』を理解してくれると思ってる」
リテリさんが俺を見た。
「鑑定屋……鑑定スキル?……私を見たの!」
正確には『解析』スキルだけどな。
「ん……まぁ」
瞬間、リテリさんが真っ赤になった。
(見られた見られた見られた、バレタ、わたしのショウタイ)
「先に言っておく、そのことに関して俺は何とも思わないし、誰かに言うこともない」
「そ……それで、何が目的なのですか?」
まぁ、信用できないよね。当然その質問は予想できた。だから、こう告げる。
「今から、俺の全てをリテリさんに見せる。それで俺を判断してくれ!」
「…………なにを」
「ディア、一度だけ俺を信用するように言ってくれないか?勇者の言う言葉なら信じてくれると思うんだ」
俺はディアを見た。
「そうですね、それが一番の解決方かもしれませんね」
「頼む」
「貴女が私、勇者を信じるのであれば、私のマスターを一度だけでいいので信じてください。性格は『クズ』なのですがこれで良い所もあるのですよ?後、女性に甘々です。本来の肉体だったら何人泣かせてるのってくらいにタラシです。本人は無自覚ではなく自覚して言ってる所も始末に負えません。下は7歳の魔王から上は年齢不詳の婆神までストライクゾーンも広いです。広すぎです。でも、出会ってしまったら諦めるしかありません。天災と一緒です。嵐が過ぎるのを待ちましょう。私は心配です。もしかしたら貴女もこちら側に来てしまうのでは?と。何故かマスターはレア職を集めてしまうのです。見たところ貴方にも資格がありそうですので気を付けてくださいね。でも、本妻はわたしです。それでも良ければ信じてください」
(ディアよ……それで信じる奴がいるのなら、俺は見てみたいよ……)
「分かりました、信じます」
「え?信じるのかよっ!」
「何か?」
「い、いや」
レムリといい王国の聖女候補……本当に大丈夫か?
「では、今から行うのは俺の生きてきた全てだ。心を繋ぎ嘘のない真実を貴女に晒す。それで俺を判断してくれ!」
「「『ルダーの真伝』」」魂察!
『ルダーの真伝』』が『シゴルウの真実』と違うのは己の真実を自覚させる『シゴルウ』に対して、こちらは相手側の真実を魂から体現させる。それこそ、何もかもさらけ出すことになる。彼女の真実を垣間見てしまった俺には対等の物など無い。ならば、出来る対応はこれしかないように思えた。
そしてリテリさんが抱える俺に対する不信感を取り除くことが出来たら……。
「「発動する」」!!




