45:第二聖女VS第三聖女(1)
『ダーク・ワールド』!
話しも一区切りついて、魔王達がのんびりとお茶を飲んでいると、いきなり始まった『第二聖女』対『第三聖女』。
昼間だったものがいきなり夜となり月まで浮かんでいる。
「中々の好カードじゃが、実力的には『第三聖女』では勝てまい」
「ルクス様、よいのですか?止めなくても」
「葵お姉さん、様はいらないよぅ。わたし子供だよ?」
魔王ルクスはいきなり子供口調になった。なったと言うが本来、子供だ。魔王としての威厳を出すために年配口調をして居たに過ぎないのだが。
「しかし、私は『フェイゼノルン家』のメイドです。ルクス様は当家のお客様ですので」
「え~。ファウお兄さんなんか呼び捨てだよ?わたしもその方が気が楽」
ルクスは、椅子に座り届かない足をブラブラさせなからそう答えた。
「では、人目の無い所でとの条件付きで良ければ」
「ありがとう!」
「……で、止めなくていいの?あの二人」
葵は式神の『折り鶴』を展開させながら尋ねる。こちらにとばっちりが来ないとも限らない。万が一の時はルクスを守る準備をしていた。最も、自分が守らねばならないと本気で思っている訳ではない。何せ相手は魔王だ。だが、用心に越したことはない。
「レムリお姉さんだけなら止めるけど……」
「ファウさん?」
「そうそう、もしかしたらもしかするかもよ?」
帝国の『戦乙女』を撤退させた力。あれは中々の見物。まぁ、リリスお姉さんは、遅刻でも行けって、お兄さんが学院に行かせちゃったから、同じ事は出来ないと思うけど……何か見れたらと思うとワクワクする。最も同じ事が出来たとしても最終的にわたしが元に戻してあげないと消えちゃうんだよね。お兄さん。
「浄化されなきゃ良いけど……」
葵は自分で言って不安になった。
(大丈夫よね?あのバカ)
そう思い、庭の二人を窓から見下ろした。
『第二聖女』と『第三聖女』は対峙していた。
ふらりと『フェイゼノルン邸』を訪れた『第二聖女』だったが、既に様子がおかしかった。この時点で既に学院へと赴き、レムスタリアが欠席していることを確認。それが更にレムスタリアの中に存在するモノへの心象を悪くし、もはや猶予はないと結論付けられた為だ。
「何故です!リテリお姉さま!おやめください!」
「レムスタリア。貴女の内に存在する悪しき者を退治するだけです。大人しくして」
「仰る意味が分りません!わたくしの内に悪しき者などっ!」
既に周りは夜だ。準備は整っているといっても良い。『月』が輝く前に誤解を解かなければ。無力化される。それをレムリは知っていた。
「貴女の内にいる男性。私はこの目で見ているのよ。あれは呪いの塊」
(ファウ様のこと?)
「何故だまっていたの?最近様子がおかしいと思っていたわ。私や葵にも口付けしたのはもしかしたら、その男が原因ではないの?」
「それは、そうですけど……悪気があってした訳では」
(いや、そこは正直に答えると色々ややこしくなるだろ、レムリ)
(これはマスターの自業自得ですね。だから私にしておけば良かったのに)
「何処の世界に、行き成り女の唇を奪う男がいるの?それはもう悪即斬よ!」
ごもっともです。返す言葉がありません。リテリさん。
「確かにそうですけど。リテリ姉さまも葵ちゃんもズルいです。わたくしだって、まだしてもらった事ないのにっ!」
「え?」
「あら?」
うん、知ってた。説得どころか火に油だね。
「そこまで浸食されているのね。一刻の猶予もないわ」
『コンファインメント・ムーンライト』
「まっ……」
優しい光がレムリの意識を包み込んでいく。
「大丈夫よ、眠ってもらうだけだから。目覚めたら終わっているわ。さあ、出て来て本性を現しなさい!」
あ、レムリが眠らされた。これはもう起きないだろう。ならば次の手は。レムスタリアのもうひとつの人格であるスタアしかない。別人格とは言うが本人そのものだ。
(ちょっと、貴方、私を出す気なの?)
(頼む、スタア。俺が出ても話を聞いてくれそうにないからな。俺が頼れるのはお前だけだ!)
(ま、まぁ、それならしょうがないですわね。感謝なさい)
『セシュの心言』での会話を終えるとスタアが表層に出てくれた。
(マスターも『クズ』ですが、スタアもチョ……)
(おっと、そこまでだ)
「は、初めましてですわね、お姉さま。私はスタアと申します」
「あら、あなた。レムスタリアの別人格でしたね。痛みや苦しみを引き受けてくれたとか……話はあの子から聞いてます」
お、好印象だ。いけるか?スタアで。
「ええ、まぁ」
「それで?貴女も内に潜む男のことを知っているの?」
「そうですわね、レムリ……レムスタリアと同じ程度には……」
「もしかして、貴女もあの男と口付けしたいとか思っているとか?」
「ま、まさか!私はそんなことは少しも思っていませんわ」
「そう、貴女はまともなのね。良かった」
(いいぞ、そのまま説得だ。スタア!)
「ただ、あの男がどうしてもって言うなら……考えてあげても良いかなと思ったり思わなかったり……」
「…………そう、貴女もなの。貴女も浸食されているのね」
(だーっ。何故、つけたした!スタア!)
(結果は見えていましたよマスター、何故ならスタアはツンデ……)
(おっと、そこまでだ!)
『コンファインメント・ムーンライト』
「貴女も眠っていてね。目覚めたら終わっているわ」
スタアも眠りにつく。俺の意識が急激にレムスタリアの身体と同調する。
「…………あ」
(さて、どうしますか?マスター)
「出てきましたね?悪の根源!」
俺は覚悟を決める。
(『解析』、文字列も表示!)
『リテリ=ユイーシ=ルクルブ』
『静の聖女』『????の魔女』
『エスリ王国第二聖女候補』
出生地 :???の揺り籠
性別 :女性
年齢 :18
武器 :第二聖女の大鎌
防具 :静の聖女の聖衣
装飾 :??の指輪
月光の首飾り
戦技 :『コンファインメント・ムーンライト』
『コンファインメント・フルムーン』
『ルナー・エクリプス』
『????????』
戦魔 :『ダーク・ワールド』
『エナジー・コンバージョン』
『ナイト・フライト』
『????????』
技能 :聖女の聖域 月夜強化 属性変化
魔法 :聖域魔法 月属性魔法 四属性魔法
属性 :月 魔女
加護 :聖女の加護 夜の加護 月の加護
『力』 :200
『心』 :700
『技』 :850
『体』 :670
『神』 :400
『魔』 :999
『霊』 :380
『武』 :430
『学』 :890
人間への『解析』は非常時以外はあまりしたくない。何故って、知ってはいけないこと知らなくていいことも暴いてしまう可能性があるだろ?大体が知ってしまったら厄介ごとに巻き込まれるのが落ちだ。
ほら、今回も更に状況を悪くしそうな『解析結果』が出てるだろ?
これは、多分触れてはいけない部分だ。
「まずは、自己紹介といきませんか?それから話し合いを」
「今更、何を話し合うと?貴方を消せば全て解決するのに?」
そう言ったリテリさんの手には大鎌が握られていた。
「心配しなくていいわ。レムスタリアの身体には傷ひとつ付かないから。これは貴方だけを切る!」
「ちょっ!」
やばい!とにかく止めないと!
「「『バステルの正門』」」拘束!!
「「発動する!」」
背後に禍々しい門が現れると同時に門が僅かに開く。隙間から放たれた『鎖の束』が『夜』の世界を埋め尽くすかの如く放たれた。
リテリさんの『首』『腕』『胴』『足』に絡みついた鎖によって空中に十字に固定した。
「成程、本当に『呪い』そのものなのね」
ふと、懐かしさのようなモノを感じるが振り払う。
自らの手に目を向けると何かを確認するように握り、開いた。
「……中々のモノね」
「申し訳ないです。まずは話だけでも聞いてもらわないと何も解決しないんで……」
「まぁ、いいわ」
『第二聖女』の手から大鎌が消える。
『エナジー・コンバージョン』
瞬間、『バステルの正門』の拘束が消滅した。
「!」
(マスター、バステルの正門が無効化されました。いいえ、これは……転換されました)
「『王国第二聖女』だし、ダメ元だったが無理か!」
(月が満ちていきます。魔力反応アリ)
「原因は?」
(転換されたエネルギー及び魔力が月に集められていると予想)
「簡潔に!」
(干渉は無効です)
「『アリスの心臓』でもか?」
(同結果と思われます)
現状の打つ手が無くなった。
視界が赤く染まった。




