41:魔王 ルクス
「じゃぁな!」
そうして俺は二度目のこの世界から………
消える
「じゃぁな!……じゃ、ないわ!この、たわけ!!」
俺は尻を蹴とばされ……
「とっとと、戻らんか!」
吸い込まれる感覚と共に、レムスタリアの視覚を通して周りの映像が飛び込んできた。
(あれ?あれ?戻ってる?)
(無事戻れたようで、何よりです。マスター)
(……お前には、後で言いたいことがある)
「おーに”-じゃーん!よ”がっだーーー!」
「ファウ様!ファウ様!……良かった……」
レムリは自分自身を抱きしめる。そこにいる『ファウ=バルド』を確かめるかの如く……。
「わ、わかった、泣くな、泣くな」
リリスがレムスタリアの身体に顔をグリグリしてた。
お前、何か拭いてるんじゃあるまいな?
「逃がすと思うたか?バカめが!」
レムスタリアの中に戻った俺の目の前には、腕組みをして仁王立ち(可愛い)『摩桜 留紅須』がいた。
「ルクス……?」
「この有り様、どうしてくれる!」
後ろを見ずに親指でクイックイッとする(可愛い)。
その後ろは凄い有様だった。庭の噴水は壊れ、ガーゴイルの像は転がり今も像のふりをしている。プロだな。
植えられた木々は根元から引き抜かれ、至るとこを深い穴だらけ。そして、何より大きなお屋敷は半壊していた。
「うぁー、凄いですね、ファウ様」
「「『魔王の隠れ家』半壊の責任取ってもらうぞ!」」
そう言って、地団駄を踏んだ。あ、初めて見たよ。本当にする奴っているんだ。
「激務を癒す憩いの場だったのじゃ!そ、そ、そ、それを」
拳を握りプルプル震えてる(可愛い)。
レムリが頭を撫でる。
「「え?」」
俺と留紅須の声がシンクロした。
「るくすちゃん、もう大丈夫だよ。でも、お家壊れちゃったね~」
頭なでなでは続行中。
「そうだ!家に来ればいんだ。お部屋いっぱいあるよー」
手を引いて歩き出す。
「レッツ・ゴー!だよ!」
それ言う奴も初めてみたよ。しかし、いいのか?レムリ。
「この幼女、確かに言ったぞ?『魔王の隠れ家』って。魔王のって」
「幼女言うな!」
「はい、まおうちゃんの家ですね。壊れてしまって可哀想」
だから、イントネーションが違うんだよ。
もう、いい。直接話を付ける。
「まおう……でいいのかな?」
「ふむ、間違いではなかろうな」
「アノ魔王だよな?」
「お主がどの事を言うておるのかは知らんが、唯一無二の魔王じゃ」
やはり、魔王だった。もしやと思ったが……。こう見えても数百年生きているんだろうな。言葉使いが子供じゃないし。
「で、見た目は子供の『魔王』が何故ここに?」
「見た目が子供とは失礼な奴じゃ。こう見えても7歳じゃ」
「はぁ?」
「7歳じゃ!」
「子供かよ!」
「何処をどう見ても子供じゃろうがっ!」
本当に子どもだった。いや。
「普通は、見た目は子供でも1007歳とかだろ!」
「主が何を言うておるのかサッパリ分からん」
俺を憐れむような眼で見る『魔王』
「口調がババ……お年寄りだろうがっ!」
「魔王としての威厳じゃ。キャラじゃ」
「キャラかよっ!」
話し込んでると『フェイゼノルン邸』に到着してしまう。
「ルクスちゃん、入って入って」
魔王ルクス(7)お隣さん。俺の記憶が確かなら『魔王軍』のトップだ。世界に災いを成す者、世界を破壊しつくす者、人類の天敵。色々呼び名はある。
それが俺達の目の前に座っていた。
「粗茶ですが……」
「うむ」
葵の出したお茶をすする魔王。
「ほう、良いお茶だ」
お茶の旨さを語る魔王7歳。見てる限りでは、害は無いように思えるが、実力は折り紙付きだろうな。
なんせ、ひと蹴りで俺をレムスタリアの『中に戻している』。こんなことが出来るのは俺の『ロクスヌの離脱』を除けば『神』以外知らない。相当な実力を持つと思える。7歳だけどな……。
「まず、先に言うておく。グニスの件はわしの、監督不行き届きじゃった。ゆるせ」
ルクスはそう言って頭を下げた。
「ファウ様、何のことです?」
「後で説明するよ」
「主、面白いな。中に後二人のおるのか」
「俺達のことはいい。グニスの件だ」
「そうじゃったの」
ルクスは話し出す。
レムスタリアの『呪い』は『魔王軍四将グニス』の独断だったと魔王は語る。
魔王とは先代から『能力』を受け継いだ時点でこの世に誕生するものらしい。
つまりゼロ歳から人と同じように成長していくのだ。
ある日完全体で現れたり、何百年も生きた強い魔族が受け継ぐものではないのだ。
つまり、そこを突かれた。
全てを掌握できていない子供であるが故のスキをつかれて、出し抜かれたのである。目的は…………。
「目的は?」
「宝珠じゃ」
やはりか。俺はスタアとの会話を思い出していた。葵の襲撃によって『解析』は邪魔されたままだ。あれから数日経っているのに『解析』していなかった迂闊さを悔やむ。
「なんじゃ、驚かぬところをみれば、薄々感づいておったか」
「聞いていいかな?宝珠とは?」
「秘密じゃ。わしの口からは言えん。お主らで突き止めよ」
「何故?」
「それが、決まり事じゃ」
決まり事?…………何だ、この言い回し。
決まり事…………決まり事。
ルール。
「さて、わしの部屋は何処かの?」
「こちらにご用意してございます」
「あぁーーーーー!!」
レムリが、叫んだ。
「どうした!」
「ファウ様、学院……」
既に日は高く昇っていた。
俺は、思う。
魔王が来た。
『聖女』と『勇者』と『戦乙女』と『真巫女』、そして『魔王』がそろってしまった。
……ん?これは何と戦うパーティーだ?




