37:歪
「よっと!」
男は大剣を肩に担ぐ。
「ここが、八翼か、しかし、雪と氷の世界とはな」
「ウォボスはアホ?ここは北の大陸、雪と氷、あって、当然」
ウォボスと呼ばれた男。身長は190を超える。肩に担ぐ大剣は剣というよりは金属の塊。ただ、その金属は不思議な光を放っていた。見た目は正に野獣。
「早速、乗り込むとするか。早く帰ってやらねぇとよ」
「ウォボス、死んだね」
少女はさらりと言った。
「今までのような、力押し、死ぬだけ。そしたら、皆……」
「わ、分かったよ。で、どうする?」
少女は考える。頭の上の耳がピコピコ動く。見た目は人間だが耳の場所が違う。形も猫の耳に似ている。
「考えがある」
「ん?」
「私に、まかせて」
ここは慎重にいこう、ウォボスの力があれば大丈夫とは思う。でも、絶対じゃない。絶対じゃなければ動かない。まずは、この世界の決まり事を知ること。それが先だ。
この世界は『歪』だ。何故、こうなってる?
誰が……こうした?
「いくよ。ウォボス」
少女は歩き出した。
「「同時刻帝国某所」」
「ご報告が……」
「…………」
「『黒死の人形』のマインドコントロールが、解かれたと報告が。ただ、当初の目的は完了しております。確認したと……」
「『人形』ならば持ち主の物であろう?」
「はっ!」
「回収して修理すれば使える」
「では、そのように」
「待て!」
「はっ!」
「解いた者……目障りだな。その者は?」
「『第三聖女候補』『レムスタリア=アルバーノ=フェイゼノルン』とのことです」
『第三聖女候補』か。なら好都合か……。
「排除のついでに取り出して壊せ!『ドールズ・ヴァルキュリア』を使って構わん」
「御意!」
『八翼』が現れたこの時期に不安の芽は潰しておくに限る。
「ソフィア、いるか?」
「お側に……」
姿は見えない。声だけが響いた。
「お前も出ろ」
「よろしいので?」
「構わん」
「では、そのように……」




