36:聖女VS真巫女(3)
本当にバカなの?
彼が発動した『呪い』『リリスの口付け』。まるで子供が作った『オモチャ』みたいなものだった。
120秒以内にキスしないと死ぬとか、これで死ぬバカがいたら会ってみたい。今どき子供でも即死回避なんて出来る。
「俺は即死系を回避できない」
本当か嘘か分からない、何かの駆け引きかも知れない。でもその後に彼が発動した『呪い』で、思わず吹き出した。それなのに、何故か私は自分の最後の『呪い』を発動できなかった。絶対効果がないと思っていた為、私自身がここまで発動しなかったモノ。最後まで残ってしまったモノ。
「『絶命呪』即死」
彼の言葉が真実なら、打ち消し合わない。何故なら私の『呪い』は瞬時発動。彼の『呪い』は時間差発動だから、似て非なる物。彼は死に私は120秒間の猶予を与えられる。生死の選択権は自分にあった。
使えなかった。
何故?分からない……。
今朝、生まれて初めて生きていてよかったと思った。
そして、生きてることが初めて楽しいと思ってしまった。先程のバカみたいな、意味のない潰しあいのやり取りも……ただ、楽しかった。
この世には、もっと色々な素敵な事、楽しい事があるのかも……と、思ってしまった……。
これは、私に選ばせているのだ。彼が『呪い』だと私に告げた『星読み』に従ったまま「死」を選ぶのか、それとも自ら「生」を選ぶのか。
でも彼は、本当の意味での私の「死」の原因となるモノを理解してない。
私には『勇者』を殺害するための『勇者殺し』がある。けれど、『勇者』にしか効果はなく、その代償は私の命。『星読み』に従えば「死」。それを行えと告げる『星読み』は確かに『呪い』かもしれない。
結局は『勇者』に使うか使わないかの2択が「生」への選択なのだ。
本当はもう分かっている。こんなことを考えてる時点で、もう結論は出ていた。
彼をマスターと呼ぶ『八翼の勇者』。災いをもたらすのだろうか?
『星読み』の結果に疑念を持ってしまった時点で私の負けだ。
きっと、彼のシナリオはこうだ。私が普通に誰でも可能にな即死回避で「生」を選ぶ。
それでも、いいかと思った。例え勘違いであっても私を救おうとしていることは伝わって来たから。子供のころから誰にも……実の兄にさえも、モノ扱いされていた私を人間扱いしてくれただけで嬉しかった。
……でも、悔しい。このまま彼の思惑通り即死回避するのは悔しい。
だから、彼の驚く顔を見よう。彼の思惑通りに事が進んでいるとしたら、彼にとってのコレは予想外のはずだから……。
でも、確かにこれで『星読みの真巫女』は消えるのだ。今日ここで終わるのだ。
……私はもう、自身の『星読み』を信じられないだろうから…………。
「ん?」
俺の頭の中は真っ白だった。何故こうなった?普通この選択肢は無いだろう。
俺は葵に「キス」されていた。
正確にはレムスタリアが……だが。
「私の……負けです」
「そこまでです!」
声の方を振り返る。そこには『第二聖女』『リテリ』さんがいた。そうか、第三聖女の屋敷で戦闘行為をしたのだ。無罪放免とはいかないか……。
「ついて来てくれるわね?拘束はしたくないの」
もはや葵には戦闘の意思は無かった。
葵は………うなずく。
「レムスタリア様、ありがとうございました」
…………と最後に見せた笑顔は、肩の荷を降ろしたような晴れやかさがあった。
意識が急激に引かれる。この感覚は馴染みのモノ。
「えーー何、何故、壁が壊れているのですか?ファウ様」
額に「中」の文字を書かれた美少女がそう言った。
(しまった、間に合わなかったか…………)
「あ、お、おはよう。レムリ」
「何で外に居るのですか?記憶がないです……もうひとり……人格増えました?」
「それは無いから安心しろ」
まぁ、壁は修理だな。意外と魔法で何とかなったりするのでは?
確信は無い。
俺は、レムリにここまでの出来事を聞かせた。
「私が寝ている内にそんなことがあったのですね」
今回のことで学んだことがある。レムリは熟睡したら少しの事では起きない。
「スタア、助かったよ」
「元はと言えば、私がきっかけを作ったような気もするし……別にいいですわ」
確かに、事の発端はお前が来ての話しからだったが、俺が『ディア』に実体化させたのが発見された原因だろう。
何か忘れている気もするが?
まぁ、いい。急がなければ遅刻だ。
部屋に戻り、リリスと制服に着替えようとパジャマを脱いだ。




