35:聖女VS真巫女(2)
「『鬼神・結界』は『呪い』ではありません。私の単純な『霊力』での術。打ち消せませんよ」
確かに、俺は指一本動かせなくなっていた。単純な戦闘力の点では『ファウ=バルド』は弱い。力も弱く魔法も使えない。『鑑定人』はどちらかと言えば文系だ。
「もう一度だけお尋ねします。引いていただけませんか?」
「断る!」
「何故?」
「なら聴くが、君がここで死ぬと思う理由はなんだ?そこまで確証が持てる根拠はなんだ?」
(そんなの、私は『星読みの真巫女』。星が私の終わりを告げたからに……)
「それは信じて良いものなのか?俺からすればそれは……ただの『呪い』だ!」
葵の動きが完全にとまった。
「星読みが…………呪い?」
「「『飛点連撃』」」
一点集中持続攻撃の『死点流撃』に対して『飛点連撃』は五点連続中距離攻撃。
「しまっ…!」
五つの『折り鶴』が一斉に砕け消える。それと共に拘束が解ける。
「お兄ちゃん!!」
「でかした!リリス!」
リリスが俺を抱えてて距離を取ってくれた。兄の面目はないが、助かった。
「「『雷撃・招来』」」
葵の追撃がきた!
「スタアーーー!!」
「言われなくてもっ!『蒼鏡』!」
『蒼鏡』が頭上からの雷撃を防ぐ。雷の轟音と共に視界がフラッシュバックする。
蒼鏡の残骸がキラキラと落ちて来る。何枚抜かれた?いや、今それは重要じゃない!
「スタア!もう一度、『蒼の牢獄』!」
「やってますわ!」
(早いな)
流石だ……既に葵を囲もうとする『蒼鏡』。お前たち強くなってないか?
「ディア『解析』!!」
「既に発動済みです。マスター」
どいつもこいつも、頼もしいじゃないか。
(さあ、見せてもらうぞ。どうやって『蒼の牢獄』を抜け出せたか)
先程と同じだ。『蒼鏡』は葵を囲んで内側に閉じ込める。『蒼鏡』六面体による『蒼の牢獄』の完成。
だが、中に葵の存在はない。
そして、全く別のところでの存在の確認。
成程、『解析』は完了した。
「そうか、手品のタネは割れた、後は任せてもらう」
「お兄ちゃん無理しないで!」
「出来ますの?」
「ん?ああ、出来るよ」
応酬がが始まる。只の消耗戦だ。
呪いと呪いのぶつけ合い。子供のけんかだ。100ある呪いをぶつけ合う。打ち消された呪いは直ぐには使えない。リキャスト時間といえば分かりやすいか。
ならば、減って減って減っていく呪いが最後の一つとなった時からが本当の戦いだ。
葵の術はスタアとリリスが防いでくれる。他力本願だか防御は気にしなくていい。ハッキリ言おう、俺一人では勝てない。
それはそうだ『真巫女』は王国での『聖女』、帝国での『戦乙女』なのだ。レムスタリアやリリスとタイマンなんて命がいくつあっても足りない。
『解析』してみれば簡単な事だった。庭に出た時点で俺は葵の方を向いてさえいなかった。正面から戦っていなかったのだ。
その時点から葵は『呪い』の使用を止めている。それは何故か。
『呪い』の発動は方向性を誤魔化せないからだ。簡単に言えば位置の把握が容易。
そこで葵は『式神』に自身を『投影』して見せた。つまり『式神』を葵だと俺達に誤認させたのだ。
結果、『蒼の牢獄』に捕らわれるのは『式神』であって葵本人ではなくなる。捕らわれた時点で術を解けばいい。いや、牢獄内では自然に解かれたのかも知れない。それを俺達は消えたと思い込む。
ならば、呪いを使い続ける戦いに持ち込めばいい。そうすれば位置を誤魔化す事は出来なくなる。
それが今のこの状態だ。
「「『斬馬呪』両断」」!!
「「いけ」」!!
「「『ダジムの断頭』」」!!
「「発動する」」!!
互いの『呪い』がまたひとつ打ち消しあって消えていく。
「さて、お互いそろそろネタ切れだな」
「本当、あなたって信じられない!バカなの?無茶苦茶よ」
「口調がいい感じで砕けてるぞ?」
「あなた相手にバカバカしくなっただけ」
「「『灰燼呪』爆炎」」!!
「「いけ」」!!
「「『マルティの炎術』」」!!
「「発動する」」!!
またひとつ、お互いの『呪い』が打ち消しあった。
「それにしては、随分と楽しそうだけどな」
「……楽しそうにしてた?」
「ああ……」
「楽しいのかも?」
「そうか……」
「じゃ、楽しい時間も終わりだ」
「あ……そうね」
葵は何か言いかけて止めた。
「では、お互い最後の一つの発動をするわけだが……」
「ええ…………」
「ひとつ言っておく、俺は即死系を回避できない。葵の持ってる最後の一つが即死系であった場合、俺は死んで葵の勝ちだ」
「ちょっと、何で……」
「俺が死んだら、八翼の勇者は好きにしていいぞ」
「お前に対する最後の『呪い』はこれだ」
「「『リリスの口付け』」」
「「発動する」」!!




