27:破滅へと動き出す世界(リテリ)
「何処へ行こうとしているのですか?」
男は気づかなかった。彼女が初めからそこに居たことを……。
「まさか、アレだけの事をして逃げ切れると思っていたのかしら?」
男は答えない。
「王国の聖女候補も甘く見られたものね………いいわ。後でゆっくり伺います」
男は思った。任務は達成した。なら、後は逃げるだけ。
男は一気に加速すると女の頭上を飛び越える。女は動かない。
女を通り過ぎた。女は動かない。
その時……………
『夜』になった。
先程までの日の降り注ぐ風景は一転して夜の『静』けさに包まれた。
異常事態だ。理解している。
だが、どうしてかは理解できない。
『月』が出ていた。『新月』だ。
何故かは分からない。だが、現状は不味い。
とにかく逃げる。逃げる。逃げる。
走って走って走った。
女は、目の前にいた。
そうして男は理解する。一周してしまったのだ……と。
元の場所に戻ってしまったのだと。
ならばこの女が原因だ。間違いない。
『カノン』(無属性単一破壊魔法)
すぐさま行動に出た。
女は動くことも出来ずに『カノン』の的になった。
「何?」
うかつにも声を出してしまった。失態だ。
女は無傷だった。
ただ何もせず、『静』にそこに佇む。
『カノン』!!
『カノン』!!
『カノン』!!
動けないのではない、動かないのだ。
女は、立っている。ただ、立っている、『静』に立っている。月の光を浴びて…………。
「げ、月光だと?」
男は頭上を見てしまった。
そこには月が…………。
『新月』だった月が『半月』になっている。
そして、女の背後に重なる。
女は『半月』を背負い立つ。
「知っていますか?」
女が口を開いた。俺はこの女を知っている。ならアレはなんだ?この女……『聖女』が持つ武器ではない。
月を背後に立つシルエットは「死神」だった。
「月は、自らは輝かない……」
『コンファインメント・ムーンライト』
男の意識は…………途切れた。
立つのは……
『王国第二聖女』『リテリ=ユイーシ=ルクルブ』『静の聖女』だけだった。




