25:兄(聖女)VS妹(戦乙女)(2)
お兄ちゃんは初めから一人だった。父親も母親も居ないと言ってた。何処か遠くから来たらしい。だから、一人だった私に声をかけてくれたのだろうか?空飛ぶ船の話しとか、天まで伸びる建物とか、お兄ちゃんのしてくれるお話しが好きだった。
お兄ちゃんは女っ気がない。なんたって彼女いない歴=年齢だ。でもそれは、私のせいでもある。子供のころから私の面倒ばかり見ていたせいだ。だから、お礼も兼ねて、ちょっとしたいたずらを思いついた。きっとキスもまだだよね?
意気地のないお兄ちゃんの為に制限時間をつけた。私の『構築』を使って作った。これがないとお兄ちゃんの事だからいつまでもしないよね?こっそりとカバンに入れておいた箱。いつ開けるかな?
お兄ちゃんが、箱を遺跡で開けてしまった。
お兄ちゃんが、死んだ。
誰か来た。顔は見えない。
お兄ちゃんは遺跡で『能力』を食べられたのだと言う。
何言ってるの?お兄ちゃんは…………あれ?………そうだったね。
じゃ、探さなきゃ…………食べた人。
だから私は自分を殺してくれる人を探して。
あれ?…………頭の中がグチャグチャだ。
人形は考えなくていいんだよと言われた。
そうかだから私は『黒死の人形』なんだ。
お兄ちゃんだと言う女が現れた。
許せない!
「『シゴルウの真実』持続する!」
『シゴルウの真実』(精神系)
罪の意識を全く感じず犯罪を繰り返す男に掛けられた呪い。無垢な魂に刻まれた記憶を体現させる。心の壁、自己暗示、虚栄、理屈、嘘などを介さない為、意識していない罪さえも自覚させる。罪の数が多ければ多いほど自らを精神的に断罪する。
目の前にさっきの女が立っていた。あんなに怒っていたのに今は怒りが湧いてこない。
「あ…………」
何で、忘れていたのか?忘れてはいけない大事なことを。そうか、私が犯人だった。
『お兄ちゃん殺人事件』
だから自分自身を憎んで、憎んで、憎んでどうでも良くなった。
何か、どうでも良くなった。
「…………ごめんね、お兄ちゃん」
「バ~カ!俺がそう簡単に許すかよ」
目の前の女性がこっちを見て言った。確か、レムスタリア。王国の聖女だ。
凄い美人だけど、今のドヤ顔は凄く残念。
ただ、懐かしい気がするのは気のせい?
「どうだ?思い出したか?」
「…………」
「あれ?記憶の上書きされてると思ったんだが……」
綺麗な声なのに、口調が更に残念。訳分からないこと言ってるし。
「何だよ?その残念美人を見る目は?」
しかも、自分で美人って言ってるし。本当残念なひと。
「ファウ様、わたくし、何故か心が痛いのですが気のせいでしょうか?」
何だろう、このひと。今度はまともに見えた。
「リリス、お前まだ抱き枕使ってんの?」
「んな!」
「あと、アイスのフタなめるのやめろよー」
「…………」
「お前は、何でそれを知ってるの?……と言う」
「何でそれを知ってるの?」
「おー、出来た。一度やってみたかったんだ。それに、お前の事なら何でも知ってるぞ。妹だからな」
さっき言ってた。転生してその中にいるってやつ?まさか…………。
「7歳までおねしょしてたこととか。初めての料理は「卵かけご飯」初めてのチョコレート作りは塩入れて失敗、風呂に入ったら上から洗う派だ」
「ちょっ!」
「ピーマンが苦手なお子様味覚、普段私とか言ってるが家では自分のことを名前で呼ぶ、そしてその大きなものはパットだ、しかも裏にリリスって名前まで書いてある」
「あ、あの、ファウ様、そのくらいにしてあげたほうが……」
「そ、そうね、私でもここまでは出来ないわね」
レムリとスタアの声がした。
「ん?そうか?」
「ストーーーープ!!お兄ちゃん、何の公開処刑よ!!」
「おっ、認めたかー?」
「認めないと、もっと出てくるんでしょがっ!」
「だな」
「はいはい、みとめますー」
激しい戦闘から一転、何やらもめ出した闘技場内の『聖女』と『戦乙女』に会場がざわつきだす。
「私、思い出しちゃた。私がお兄ちゃんを殺したんだね。呪いで。」
「そうだな」
「でも、死んでほしいとか思ってなかったよ………」
「知ってるよ」
「ごめんね………」
リリスの目から涙がこぼれた。
「許さん!」
「え?」
「ファウ様!」
「ファウ!」
「俺はリリスを許さない。だからこの先も生き続けて、俺に償え」
俺が許してもリリスはまだ自分を許せない……だから、いつかの日まで繋ぐ。
「うん、ありがとう。ついでに謝っておくね。お兄ちゃんが寝てるとき額に「肉」って書いてごめんなさい」
「やっぱり、お前か!」
「お兄ちゃんが酔って寝たとき瞼に目を描いてごめんなさい」
「それもか!」
「お兄ちゃんの弁当の中身をパンツとすり替えてごめんなさい」
「メシメシ~と思ったらパンツだった時の絶望を知れ!」
「旅行行ったときお風呂の「男湯」と「女湯」を取り換えてごめんなさい」
「あれ、犯罪だからな。社会的に死ぬから!」
「お兄ちゃんのナイフをキュウリにすり替えてごめんなさい」
「戦闘!と思ったらキュウリだった絶望を知れ!」
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
リリスの贖罪は続いた。
「…………え~と、何なのでしょう?この兄妹は?」
「兄妹とは、このようなものなのかしら?違うような気も……」
「まぁ、取り合えず、終わらせるぞ、じっとして」
俺は、リリスの頭にてを置いた。
『ジンの風』発動!!
流れはもう一緒だ。『ジンの風』にて『呪い』を浮かせる。これは、自責の念だ。俺を殺してしまったと責める呪い。責める気持ちが、呪いまでに育ててしまったもの。いつ、死を求めてもおかしくない。取り除いておいた方がリリスのためにもいいだろう。そして、リリスを『人形』扱いした奴の顔を拝んでおくとしよう。
リリスの内から出たモノが形を成そうと渦巻いた。黒い黒い黒い黒い点は粒子となりそれが一人の顔になろうとした。瞬間。
『カノン』
客席から閃光が放たれた。それは客席を守るための防護壁を貫いて……。
「リリーーース!!」
俺はリリスを抱えて飛んだ。
「怪我無いか?」
「お兄ちゃん、今の私、強いんだよ?」
「…………そうだったな」
リリスはふっと思った。
(あ、この子の胸…………フフフ勝った!)…………と。
「ファウ様、わたくし……何故か、心が痛いのですが気のせいでしょうか?」
会場は混乱している。警備の者が閃光の放たれたと思われる地点へと向かっている。
逃げ出すものもいて、中々進めずにいた。
俺は、思う。今のは、どちらを狙ったものなのか?リリスより浮かせた呪いは跡形もなく消滅していたのだった。
「本日の決闘は預かりとする!!後日改めて通達するものである!!」
リリスと最後まで殺し合いをせずに済んで正直ほっとした。いまのリリスじゃ、俺とはもう戦えないだろう。そんな安堵をあざ笑うかのように…………。
あいつは、ここに現れた。




