20:学院生活(三時間目)
『第二聖女候補』リテリさんに呼ばれて、人気のない使われていない教室へとやって来た。そこには使用されなくなった過去の魔具が陳列されていた。
軽く『解析』を行うが、大した価値のあるモノでは無かった。教材にはなる……程度のモノだ。
「今回の決闘のことですが………」
リテリさんは、そう切り出した。主導権はレムスタリアに委ねている。
「……はい」
「十分に気を付けて」
「え?それは」
「今回、相手側は代役をたてました。それが『戦乙女』だとの情報があります」
「え?戦乙女ですか?」
帝国の聖女的存在。『武』と『力』に重点を置いた近接戦闘特化型。帝国に居た頃に、正しくは前回の人生で見た『戦乙女』は言葉通りの『バケモノ』だった。
「リテリ姉さま、『戦乙女』とは本当ですか?でも、代役は本校の生徒に限るはずでは?」
「そうね。でも、それは問題ではないの。本日付けで交換留学したことになっていたわ」
「本日……付け」
沈黙が流れる。
「今回の決闘は何者かが裏で動いています」
「仕組まれたと?」
「いいえ。初めは生徒同士のいざこざでした。その後、便乗した何者かがいます」
「何者か?ですか?」
それはそうだろう。代理人に『帝国の戦乙女』が出てきたのだ。これは、どう考えても普通じゃない。そして本日付けでの交換留学ときた。
「その『戦乙女』とは、どの様な方なのですか?」
「『黒死の人形』または『黒死のヴァルキュリア』と呼ばれている帝国の序列二位とのことらしいです」
「王国と帝国は、認めたのですか?『聖女』と『戦乙女』の戦いを?」
「生徒同士のことだから問題ないそうよ……」
明らかに不自然だ。ただ両国が認めたとなると、何かしらの思惑があるのだろう。…………例えば、相手の戦力確認、手の内を探る、なんせ『聖女』と『戦乙女』だ。互いに情報は欲しいだろう。しかし、それだけか?
「レムスタリア………私は今回の決闘、良くないことが起こりそうな気がするの。もう一度言うわ。十分気を付けて」
「…………はい、ありがとうございます」
「それと、この間のことだけど……いいえ。この件が無事に済んだらにしましょうか………」
リテリさんは、そう言い残して部屋を出ていった。
「ファウさま?どう思われます、今回のこと」
「何とも言えないな」
「わたくし、心配なことがあります」
手のひらを付けず、両手の指だけをそれぞれの指に合わせて、胸の前でゆっくり上下に動かしている。これは、考え事をするときの癖だと最近分かった。
「ん?」
「もし、わたくしが負けて死んだとします。『完全復活』で復活した場合、ファウ様がわたくしの中に居るままに復活できるのでしょうか?」
それは、どうか?今の俺は『レムスタリア』には本来無いもの、要らないものだ。そうなると、排除される可能性がある。いや、ほぼ確実だろう。
例えば、爆風をうけて死んだ者に、『完全復活』した場合、致命傷となった破片などを残したまま復活するだろうか?
……しない。異物は取り除かれるのだ。
ならば『レムスタリア』の負けは、俺の消滅に繋がる恐れがある。
「俺は、多分、消える」
「そうですか、でしたら負けられませんね。スタアちゃんにも協力してもらいましょう!」
レムリは、握りこぶしをつくりそう答えた。
そして三日後、俺は当初の目的の一つを意図せずに果たすことになる。




