19:学院生活(二時間目)
(聖女科)とは言え、休憩時間ともなれば女子の集まりは姦しい。クラス総勢30人の女子が一斉に話し出すのだ。それはもう、想像できるだろう?
「聞いた?レムスタリア様が、決闘されるって」
「何でも、レムスタリア様が、決闘されるらしいわ!」
「入学式の伝説以来だね、決闘楽しみー」
「え~誰その無謀なひと~勝てるわけないでしょに」
「そう、それで相手はいきなり『代役』立てたのよ」
「決闘に代役?何それ」
「知らないの?実力差がありすぎると、立てなきゃいけないのよっ」
「私怨とか、いじめ防止よね~」
「でね、その代役が1年なのよ」
「いや、今度その1年に、代役必要でしょが!」
「「「あははは」」」
クラスの中は、その話題で持ちきりだった。
三日後、俺は『決闘』することになった。この学院では『決闘』が許可されている。安全が考慮された試合ではなく、全力の殺し合いだ。勿論、相手の死を持ってのみ決着する。『聖女』というクラスはそれだけの覚悟が必要で、綺麗ごとでは務まらないのだ。
お姫様みたいな、聖女様に憧れてた者は学院を去る。レムスタリアの『蒼の牢獄』がエグイのはそこにある。情けは微塵もなく、只々敵を殲滅する。
レムスタリア(俺だが)に決闘の証を拾われた生徒は思っただろう。
「あ、これ、死んだわ」……と。
だが、幸いか実力差がありすぎた。そこで、代役が認められたというわけだ。
まぁ、しかし、学生なわけで救いはある。
『完全復活』だ。だが、『完全復活』するからと言っても負けた者は殆どが学院を去るし、勝ったものが去るケースも稀にある。そして、魂の死は『完全復活』の適応外だ。
それだけ、人が人を傷つけることは、心の負担になるのだ。殺しても生き返るからいい……というモノではない。個が世界を救うこの世界は、強者にも過酷なのだ。
俺には、そこまでして『聖女』を目指す彼女らの心情が理解できない。平穏に生きられる自由選択が与えられているのなら、わざわざ争う選択をする必要があるのか?
「そうそう『勇者』様が現れたらしいわ」
「なんか、預言よりずいぶん遅くない?」
「本当?わたし『勇者紋』出てるかな?確認しないと!」
「あ~、無理無理、あんたには無理だから」
「ひっど~い!」
「でも……可能性があるとしたら……」
「そうだよね……」
「可愛いよね……はぁ……」
「ん?」
「ん?」
レムスタリア向ける視線が約一名オカシイ。
「……そ、そうそう、最近、変質者が出るそうよ」
「あ~、うちのクラスにもいるいる~」
「そう、わたしが変質者です……って、おい!」
「あ、聞いた。1年の子が見たって!」
「今日、いっしょにかえろ~」
「いやだよ、あんたと帰ると太るし」
「あ~あたしのせいにしてる~」
「課題みせて」
「ねぇ、無詠唱の同時発動ってさ……」
「王宮であった騒ぎって誰かしらない?」
「次、何だっけ?」
色々な会話が飛び込んでくる。この会話の渦に今のレムスタリアでは、圧倒されて入っていけない。椅子に腰かけるお地蔵さん……。この世界には無い石の彫刻を思い出す。
聞くことに徹していると、教室のドアが開いた。
途端に歓声があがる。
「レムスタリア。お話があります」
『第二聖女』『リテリ=ユイーシ=ルクルブ』、『静の聖女』その女だった。




