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01:100の呪いをもつ男

 

 何故か『転生』したら『聖女』の肉体。君なら嬉しいか?俺は……。


 『ファウ=バルド』は混乱している。


 故に『混乱』が引き金の『呪い』が発動する……。一度目の転生にて魂に刻まれてしまったモノの内のひとつ。


 (『ズズの呪い』の発動を確認しました。敵対者に作用。引き寄せてしまいます!)

 

 ディアの声が頭に響いた。


 俺を護衛していた騎士団が弾き飛ばされ、綺麗な円状に囲まれてしまった。


『ズズの呪い』……『混乱』が引き金となる。敵対対象、もしくは悪意のある一定範囲の生物を対象者に引き寄せる呪い。かつて生贄に殺された『ズズ』の最後の瞬間が呪いとなったもの。


 危険度的には低い呪いだが、混乱している対象者を集中して襲わせる……と、状況次第では十分厄介にもなる。混乱中の行動など、理性的であるはずが無いからだ。


 俺の場合にしても、例外ではない。


 手にした錫杖を振り回した。駆け引きとか技術など頭にない。


 だが、それだけで……取り囲んだ男達が吹き飛んだのは、あっけないを通り越して不自然だった。


 もちろん俺が手にしているのは『第三聖女の錫杖』。本来の使用法は魔法触媒。つまりは魔法反応を促進するために使用する魔具であって相手を殴るために使用するものではない。


 だが、魔法使えない俺にとっては、只の手ごろな鈍器でしかない。リーチもあり驚くほどの軽さ。


 それを目撃した騎士達は危機が去ったことに対する安堵か、『聖女様』が魔法を使わずに敵兵を殴り倒したことへの驚愕か、複雑な表情をしていた。


「「「さ、さすが聖女様でございます!!」」


 そして……感じる不自然は違和感へ変わる。


 本来、俺の戦闘力そのものは高くなかった。何と言っても本職は『鑑定人』。遺跡に潜っては、珍しいアイテムを見つけ出し自分の店で売る商売。ある程度の剣術、体術は(こな)すが護身程度の物。


 そんな俺が敵を撃退できた……。


(『混乱』解除されました。それに伴い『ズズの呪い』停止。通常ステータスに戻ります。他呪いの発動確認。ありません、マスター)


「ん?ああ……」


 そんな俺が敵を殴り倒した……。


(でもマスター?『100の呪い持ち』とは、私のマスターはどんな『クズ』なのでしょうか?)


「認めたくないものだな……若さゆ」


(あ、そういうの結構です)


「あっ、そう?」


 本当に若気の至りなんだけどな……。



 突然、視界が暗転する。


 同時に俺は後に引かれる。


 いや、実際に引かれた訳ではなく強引に俺自身が持っていかれる体感。高いところから後ろ向きに落とされた感じだといえば分かり易いだろうか?


 抵抗する間もなかった。


 「なっ!」


 そして、俺の傍に……俺とは別の意識を感じる。

 

 (この身体には『聖女』の自我が存在しているようです。マスター)


 瞬間、肉体の主導権は奪われ……。


 少しだけタレ目がちな、濃いブルーの瞳は回りを見回して。


 「あら?わたくしは何を?」


 …とつぶやいた。


 この身体の本来の主『聖女』『レムスタリア=アルバーノ=フェイゼノルン』の意識は、この時覚醒した。



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