13:解呪と終わり
結論から言えば村は無事だった。
100もの光の槍は正六面体に吸い込まれ、中で反射を繰り返し繰り返し繰り返し……目標が消滅するまで暴れまわるのだとか……。
えぐい……。本当に『聖女様』の技なの?
その六面体も役目を終え、光の粒子を散らして消えた。その光景は、行った破壊とは反する幻想的な光景だった。美しい……と言ってもいい。
聖女の持つ魔力の質なのだろう。
(マスター。『バステルの正門』『ジンの風』』『アリスの心臓』『『マウラの爪』停止しました。現在の呪い発動数……(1)です)
(ディア……)
(はい?)
(ありがとうな……)
(いいえ……お役に立てたのなら幸いです)
『ディア』が微笑んだ気がした。『ディア』は俺の負荷が最小限になるように気を配ってくれていた。普段、口はわるいのにな。
(でもよろしかったのですか?)
(何がだ?)
(101個目の呪い、GETしそびれちゃいましたね)
GETとかいうなよ。前々回の人生を思い出すから。
(まぁ、今回はこれでいいと思うよ。俺では扱えないよ……身を亡ぼす)
(なんせ、アレは『魔王の呪い』だからな。勇者でもなければ直接の『解呪』なんて無理な代物だ。消滅して正解だよ)
そうなのだ、今回の『レムスタリア』の『呪い』は通常は存在しない五つ目『魔王系』だった。本来なら俺なんかにはお鉢が回ってくるはずの無いモノだ。
『魔王』あるところに『勇者』アリと言って、絶対に首を突っ込んでくるのが『勇者』という存在だ。不思議だ……何故、勇者がこの件に関わっていない?
だが、『魔王系』ともなれば、レムスタリアを呪ったグニス将軍とやらは今頃は……。
「終わりましたの?ファウ?」
「終わったのですか?ファウ様」
「ああ、『レムスタリア』を苦しめていた『呪い』は消滅したよ」
「やったよ!スタアちゃん!」
レムリは喜びを全身で表した。長かった一年の戦いが終わったのだ。
「よかったわね。もう辛い思いは、しなくていいのよ。レムリ……頑張ったわね」
そうだ、苦しめていた呪いならば消えた。レムリとスタア、今の戦いで二人は最強のコンビを見せた。それだけにこの後の展開に気が重くなる。
「『ファウ』様?どうされたのですか?あまり喜んでいないような……」
スタアからは切り出さないだろう。おそらく残された時間は多くはない。なら俺から切り出すしか他にない。
「レムリ……。スタアとのお別れを済ませた方がいい……」
「お別れってなんですか?何のこと?スタアちゃん?」
「呪いが消えたんだ、今のスタアは、もうじき消える」
「え?うそ、嘘ですよね?スタアちゃん?」
「……………」
スタアは答えない。答えられない。
「ファウ認めるわ。貴方は確かにレムリの……レムスタリアの救世主でしたわ。貴方に心からの感謝を。今度、お茶くらいなら付き合ってあげますわ」
「そしてレムリ。いいえレムスタリア。短い間でしたが楽しかったわ。苦しいことばかりではなかった、この半年は本当に楽しかった。」
「スタアちゃん、何をいってるのですか?」
「いいこと?大好きなレムリ。貴女は聖女なの。こんなことで立ち止まってはだめよ」
「いやです。スタアちゃんが消えるなんて、いやです!」
「貴女ならなれるわ、立派な聖女に。だって、貴女は私なのだか……」
・・・・・・・・
「スタアちゃん?」
・・・・・・・・
「スタアちゃん?……スタ……」
・・・・・・・・
「ファウさま……」
「あぁ」
「消えました……わたくしの中から……いません……も……う」
「そうか……」
「スタ……ちゃ……どうして…………う……」
「うわぁーーーーーーっ!わぁーーーーーーーーーっ!」
レムリは子供のように声を上げて泣いた。
(マスター。私は知りませんよ?)
(何がだ?)
(本当のことを話しておけば……と後悔しても知りませんよ)
(いや、後悔はないよ)
(あの子たちのヒーローになれましたのに)
(ん……ガラじゃないかな)
(転生しても変わりませんね。マスター)
ディアの最後の言葉は俺には聞こえなかった。




