132:新たな魔神候補?
「お疲れさまです」
このドアを開けるのにも抵抗が無くなった。そこには生徒会の面々。
「来たわね?木曽二田くん、では、殺し合いを……」
「殺し合いは無しですよ、会長」
いつもの戦闘ポーズを取ろうとした瑠奈会長が動きを止める。
「あら?そう?」
この人、無茶苦茶ではあるが無理強いはしない。素直に引いてくれた。
「どうしたんっすか?お疲れのご様子っすね?」
俺が席に着くとお茶を持ってきてくれた辰之助が尋ねる。
「それは、男の子ですからね~」
どういう意味ですか?葛葉さん。まぁ、口癖なのは分かったので深い意味は無いのだろう。
「まぁ、予想はできるわ。貴方もあんな子が好みなのね?能力は私と互角、それは認めましょう。でも、あの髪はウィッグ?コスプレイヤーかしら?」
「ああ、これっすか?」
辰之助が端末デバイスを操作、空間投影モードにしてある映像を表示した。
空間には一人の女性の映像が映し出される。
「異世界人、インチキ女、異星人、と色々呼ばれてましたけど、本物だってお墨付きが出てからはこう呼ばれるのが一般になったっす」
「蒼の聖女」
(ピンポイントだろ、そのままだろっ!)
瑠奈会長と目が合った。普通の表情、出来ていたか?
「昨夜、特番やってたからね~。男の子なら見ちゃうよね~」
「凄いっすよね、彼女。能力の桁が違うって言うか、人間離れしてるっすよね?」
「あら、この子、胸も人間離れしてるわね?だからなの?木曽二田くん、胸なのね?」
「あ、気にしなくていいですよ、それパッ……」
3人の視線が俺に向く。
「パッ……、ぱっと見、大きく見えるだけだと思いますよ?」
「「「……」」」
瑠奈会長が席を立ち窓の外を見る。
「で、ネットの噂なんっすけど、才能ある人の能力を開花させる力があるとか?」
「へぇ~。本当なら神様みたいだね~」
「まぁ、噂っすよ、噂」
コンコンコン。
ドアのノックと共に元気な声が響く。
「虎雄~?」
「どうぞ」と言われてから入れと言っておいたはずが、返事を待たずに侵入してきたのはディアレスだった。しかも、ここへは来るなとも言っておいた。
「あ、いたいた。マス……虎雄~」
「ね、姉さん、ここには……」
俺の声より早く反応したのは瑠奈会長だった。
「どうぞ、こちらへ。お掛けください」
「マス虎雄……」
呟きと共に何故か赤面する葛葉。うん、何となく予想は付くが、それではない。絶対に!
瑠奈会長はディアレス、つまり今は寧々子を椅子に案内すると切り出した。
「虎雄くんのお姉さん?初めまして、私は利瀬 瑠奈。生徒会の会長を務めさせていただいてます」
「私は姉の、寧々子。木曽二田 寧々子です」
「虎雄くんのお姉さま、との事でしたらさぞかし……強い能力をお持ちなのでしょう?」
嫌な予感しかしない。
「では早速ですが、殺し合いを始めましょう!」
(やっぱり!!)
「ふっ、マス……虎雄を倒したくらいで思い上がったわね!虎雄は我が一族で一番の弱者!木曽二田の神髄、その身に刻んで後悔しなさい!」
乗るなよ。
「マス虎雄……」
葛葉の呟きが聞こえた。それも、もういいから。
「姉さんっ!何か用があったんだろ?」
寧々子はワザとらしく、両手を打ち合わせる。
「そうそう、見つけたよ。虎雄」
それだけで理解する。ワールド・サーチでも居場所の特定が出来なかった為にディアレスに任せた案件。
女神の所在。
「直ぐ向かう!会長、申し訳ないですが今日はこれでっ!」
俺は生徒会室を飛び出す。
新たに現れた『能力者』。それも俺の良く知る人物。
『レムスタリア』
外見だけなのか、本人なのか、確認は取れていない。映像からでは『解析』出来なかったのだ。
ただこれだけはハッキリしている。今までに起きなかった事が、今回に限って起こった。
俺が変えた『魔神は誰でもいい』に対応したのなら、介入しているモノは間違いなく……。
だが今は女神との接触が先だ。この世界の滅びをまず回避、その後で八翼を存続させるためにも必要な事だ。
「木曽二田くん、待ちなさいっ!」
会長の声が聞こえたが、今は無視する。
(すいません。瑠奈会長)
(木曽二田くん?虎雄くん?……そのやり方では、足元をすくわれるわよ?)
魔神誕生まで後、57日。




