130:そして俺は選択する
さて、次に俺の狙いを説明しておこう。
今の俺は、存在の消えている木曽二田を演じている。
つまり木曽二田をファウ=バルドが演じることで、魔神と木曽二田は同一人物だったのでは?との歴史上の仮説を誕生させている。
実際はもう魔神となる俺と木曽二田は同一人物。真実になっているが、まだ仮説に留めておく。
結果、何が起こるか?今まで信じられていた真実が偽物になるのだ。
今まで伝えられてきた歴史が嘘になる。
世界は平面だ。宇宙の中心は地球だ。全てを否定されるまでは、その仮説は真実だった。それと同じことが起こる。後付けの真実がそれまでの真実を塗りつぶすのだ。
また、能力を隠すことによって魔神の特定化が出来ないようにしてきたのは「チート能力のファウが魔神となる」今までの歴史ではなく。
……魔神はある日突然現れるが「誰だか分からない」との歴史を創るためだ。
つまり、この歴史が創られた時点で魔神は誰でも良くなったのだ。極端な言い方をすれば、ハニワが怒りで目覚めたでもいいのだ。
生き物である必要性すらなくなった。何故なら、魔神の正体を確定させ認識する要素も情報も証拠も今の歴史のどこにも存在しないからだ。
結果、未来よりやって来るファウ=バルドが魔神であるとの……真実ですら必要無くなったのだ。
まぁ、ややこしいし、人は分かり易い方を選ぶモノだからな。
歴史とは真実や正解ではない。人が選んだモノが歴史なのだ。
よって、嘘も間違いも全部内包。人によって選んでもらう。そうだ、正しい歴史をな。
「歴史は勝者がつくる」
では勝者となって最高の歴史を創ろう。
どんなに矛盾があろうと、人が選んだ時点で歴史として確定する。
つまり辻褄が合う必要は無いのだ。
過去を見ても辻褄の合う歴史は数えるほどしかない。どこかに必ず嘘や、決めつけを含んでいる。ならばそれに便乗しよう。
それが、大まかな今の目的だ。
つまり、魔神とは何者であるか?を悟られてはならない。これが大前提だ。これがバレた時点で歴史は今までと同じレールに乗る。
ならば答えは一つしかない。
「それで、マスターはどうされたのですか?」
夕食を囲みながらの、お互いの情報交換。今日一日の成果の報告だ。あの後、生徒会では茶番劇があった。
「決まっているだろ?奴らに乗ってやったよ」
「嘸かし、見物でしたでしょうね」
あの悪夢の喜劇。思い出したくもない。
何故かストーリーは生徒会室がヒーローの秘密基地展開となって進んでいったのだ。それをごく普通に、当たり前に行える「あちら側の住人」。
「いや、待て……」
「?」
「ヒーローか、これは使えるか……」
「マスター?」
ファウ=バルドの魔神化まで……69日。




