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12:聖女の解呪戦


「『バステルの正門』発動!!」


(『バステル』拘束化、発動します。発動条件クリア。調整は私が。)


「ああ、任せる!」


 背後に禍々しい門が現れる。そして、門が僅かに開き、隙間から放たれた『鎖の束』が一面を埋め尽くした。


 『首』『腕』『胴』『足』に絡みついた鎖によって『レムスタリア』は十字に固定される。


 本来ならば、ここで拘束され、精神を引き千切られて廃人化する。




『バステルの正門』(精神系)


 名の由来は、古代国家『バステル』にあった正門からきている。戦に負けた多くのバステル人が鎖に繋がれこの正門にて処刑された。その数は門が返り血で赤く染まった程だったという。個よりも集団での想いが呪いとなったもの。無念の想いが膨大なため精神に与えるダメージは想像を絶する。




「な、何ですの?」


「ファウ様、これは?」


「心配するな。自傷しないように拘束させてもらった。まぁ、過剰気味だが念には念をだ」


 『解呪』中に最も懸念されるのは、対象者の自傷行為だ。場合によっては呪いより前に自ら命を絶つことさえある。絶望するのだ、信じていた者達からの裏切りなどに……。


「引き続き、『ジンの風』』『アリスの心臓』『『マウラの爪』発動!」


(バステル発動中により以下の呪いの発動条件がクリアーされました)





『ジンの風』(魔術系)


 別名(悪魔の風)。内にあるモノ全てを押し出す風。ある村をこの風が過ぎた後には、家財道具一式が家の中から頬り出され、傷ひとつ無い空っぽの肉体と、中身であったモノが辺り一面に巻き散らかされていたと言う。生存者はゼロ。




『アリスの心臓』(物理系)


 絶対防御を誇る英雄に恋人を殺された少女が、自らの心臓を触媒に呪ったもの。対象者の全てに実体化と弱点効果を与える。鎧、盾、魔法のシールドだろうと受けた時点で直接ダメージとなる。英雄はその後死亡。




『マウラの爪』(霊体系)


 生きている者ではなく、死んでいる者を呪った特殊な例。『霊体』『空間』など本来干渉出来ないはずのモノに干渉する爪。ただ、この世界では『時間』にだけは干渉でき無い。代償として常に己の生命力を喰らう。呪ったが故に呪われた典型的な呪い。



(逆流制御、入ります)


 逆流制御とは発動中の『呪い』の対象が俺に向くのを防ぐ役割だ。『神国の』『真巫女』当たりなら、余裕で『呪い返し』してくる。



 室温が下がったかのように、吐く息が白い。


 室内の空気がゆっくりと流れだす。徐々に早くなると渦を巻いた。


『レムスタリア』の正面の空間に黒い染みのような物が現れ。そして、一気に膨れ上がった。黒い粒子の集合が、只々、暗く、黒く、黒く、黒く、暗く……。


 そして、一人の顔の形を作りだす。


(マスター『ジンの風』発動しました)


 それは『レムスタリア』の身体より浮上した。


「し、将軍!」


「グニス将軍……」


「知り合いか?」


「王国の将軍の一人ですわ」


「ファウ様、これはいったい?」


「こいつが、二人を呪った張本人だ」


「「!!」」


(引き続き、『アリスの心臓』発動確認)


『レムスタリア』に死を!『レムスタリア』に死を!『レムスタリア』に死を!

『レムスタリア』に死を!『レムスタリア』に死を!『レムスタリア』に死を!

『レムスタリア』に死を!『レムスタリア』に死を!『レムスタリア』に死を!


 只々繰り返す。呪いの実体化により声も聞こえるようになる。



 呪いそのものは意思を持たない。『結果』を与える為に存在するモノだからだ。今回、聖女達が『解呪』出来なかったのは、『質』による問題が大きいが、何事にも例外はある。


 呪いとは……何やら邪悪な神秘的な訳の分からない力で死に至らしめるモノ……ではない。魔法同様に『過程』があって『結果』があって発動する。


 属性もあり『物理的』『精神的』『魔術的』そして『霊的』に分類される。


 相手に災いを成すためには実際に干渉しなければならないのだ。それが『物理的』か『精神的』か『魔術的』か『霊的』かどうかの違いだけだ。


 そして面白いのは、この四つが互いに干渉しあうこと。三すくみならぬ四すくみの状態になるということ。これが俺が内に100の呪いを持てる理由だ。


 俺の中には絶妙なバランスで互いをけん制しあう呪いが100ある。


 ただ、バランスが絶妙であるがために条件がそろえば即、発動してしまう。自ら発動条件を揃えて使うことも出来るが、自然に条件がそろって発動することもある。もろ刃の剣だ。


 俺にしても初めからこんな危険なものを使ってやろうと思っていたのではなく、やむに已まれずといった感が強い。


 そんな呪いだが、今回は少し勝手が違う。それが聖女達が『解呪』出来なかった原因だ。


 何が違うのか……先程の四つに当てはまらないのだ。




(『ディア』、こいつが元凶で間違いないな?)


(はい、マスター)


(しかし、これはまた。俺のような一般人が出会っていいものではないよね)


(流石マスター、前世ではどんな悪さをしたのでしょうか?因果応報と言う言葉をご存じですか?)


(それについては、弁解出来ないが……これ『勇者』の管轄だぞ?)


(……でも、やるのでしょう?)


(もちろん、これからが本番だよ)




「レムリ!スタア!準備はいいか?」


「いつでもどうぞ!ファウ様」


「よくってよ!」


 まぁ、やることは同じだ。


 浮上させ、実体化し、弱点化もした。後は、干渉化(殴る)!


(『マウラの爪』発動しました!マスター!)


 こちら側が物理的に干渉出来るようになったってことは、逆に言えば向こうもこちらを殴れるようになったってことだ。


 (無論、抵抗するよな)


「来るぞ!見せてくれ!聖女様の本気ってやつをっ!」



「聖女の聖域!!」

「ホーリー・バレット・ダブル!!」


 『レムスタリア』の淡いブルーの髪が発光する。魔力の残光だ。


 鎖に繋がれたままというのはシュールであるが、繋がれていなければこの吹き荒れる気流で叩きつけられていただろう。「スキル」と「魔法」の同時発動は見事。どちらも『レムスタリア』なので息は合ってる。聖属性の効果を上昇させる範囲スキルと聖属性の攻撃魔法。 


 実際お膳立てさえ済めば、戦闘力で俺の出る幕はない。何と言っても、殴れるならば『聖女』の勝ちは揺るがないだろう。


 (まぁ、俺の本当の仕事は終わってからだ)


「来ますわよ!守りは気にしなくていいわ!攻撃に集中なさい!」


「ありがと!スタア!いっくよー!」


 怨念は今や只の物理現象と化している。只の空気の流れだ。毒気にあてられることもない。多少は勢いのある風程度だ。


「グガガガガ!」


 『レムスタリア』の身体から無理やり浮上させられ、肉付けされ、弱点化までさせられた『呪い』であったモノは、レムリのホーリー・バレット・ダブルに貫かれながらも俺たちに迫る。


「止めますわ!ホーリー・シールド!」


 スタアの無詠唱で現れた壁に遮られて『呪い』の進行が止まる。…………が、そのまま突き破りレムスタリアに突進。


(まずいっ!)


 視界が赤く染まる。


「ホーリー・ネット!」


「ガガ!レムスタリアァ!貴様は死なねばならんんんん」


 光の拘束で、間一髪完全に動きを止める。そりゃそうだ。『勇者』が対峙すべきモノに一般人の俺が関わっている時点で気を抜いていいはずがなかった。


「今ですわ!レムリ!」


 髪からあふれ出た残光が頭上に天使の輪を創る。


「「蒼・鏡・展・開(そうきょうてんかい)」」


 『レムスタリア』を囲むように六つの(きら)めきが現れる。それはひとつひとつが天界の宝石のようですらあった。


()ちた魂よ、彼の地の楽園にて安らぎを願う!蒼の牢獄っ!」


 身体から放たれた光が、六つの帯となり駆ける。


「グガガガ。レムスタリアァァァ」


 それは、魔力で生成された六つの蒼鏡(そうきょう)。『蒼の聖女』と呼ばれる所以。


「きサマだケはぁぁぁぁぁぁぁ」


 それらは『呪い』を包み込むように上下左右、そして前後と一瞬のうちに正六面体を形作る。その中は……。


 合わせ鏡の無限の世界!


 無限の蒼の牢獄!


 抜け出すことは不可能!


「『レムスタリア』ぁ! 終わらせろーーーーーっ!!」


「こぉーれーでーーーっ!」

「終わりですわーーーっ!」


「「エクシード・シャイニング・トリヴュートォーーーーーーっ!!」」


 光の槍が空中に浮かぶ。それは爆発的に増殖し……。


 更に増殖し……。


「え?」


(マスターの呪いと同じ数だけありますね)


(ちょ、村が吹き飛ぶぞ!やりすぎ……)


 一斉に鏡の正六面体に向けて放たれた。




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