124:消える100の呪い
それは既に始まっていた。
カウントダウンはもうじきゼロとなる。その時、クロは死ぬ。
「よせっ!」
だが、もう間に合わないのだ。
クロは何も見ず、考えず、感じない機械として存在している。だからゆっくりと近づくリセルナに反応さえしていない。
何も考えがあった訳では無い。身体が勝手に動いた。
ファウ=バルドがこの状況になる以前に到着していたなら……リシリアの消える場面を目撃していたなら、この行動は無かったかも知れない。
だが、動いてしまった。
「バステル!!発動!!」
呪いの正門から伸びた無数の鎖は、リセルナの直前で自ら避けるように軌道を逸れた。
『呪い』だけに、神格により弾かれたのだ。
鎖を見たリセルナがそれを不思議そうに見つめ、指先で触れた。
触れてしまった。
ソレは鎖を伝わり、ファウ=バルドの魂に刻まれた100の『呪い』を一瞬で……。
消滅させた。
痛みも何もない、あっけないほど簡単に行われた。
例えるなら夜の停電。
光も、音も、全ての情報が遮断された。只の暗闇に取り残された。
(あ、葵?)
答える者など居るはずが無い。
会話に使用していた『セシュの心言』そのものが存在しないのだから。
この日、100の『呪い』を持つと言われたファウ=バルドは……100の呪いを失った。100の『呪い』など無かった結果にと理を改ざんされた。
それは、『呪い』があったからこそ知り合えた者達からの永遠の忘却。
『呪い』の解除で知り合った『レムスタリア』
幼少時に『魔女の呪い』を解呪して知り合った『リテリ』
解呪で正気に戻した今の『リリス』
そして、葵、ソフィア、クローリア、魔神ボルト、リセルナ、ミユウ、ウォボスに至るまで、ファウ=バルドを知るものは存在しない。
これは正史なのか?
それとも俺は何処かで間違えたのか?
結論の出ないままのファウ=バルドの意識を闇が飲みつくす。
ソレは何故が優しさに満ちていた。




