123:女神ノ転生
リセルナに『電子の世界』を壊された。
私の世界。
この世界とは違う理で造られた私の世界。
その世界を崩壊させるには、理に干渉するチカラを持っていなければ不可能だ。
「リシリア!どういう事っ!」
クロ姫の声が聞こえた。
(待って姫、私にも何が何やら……)
……つまりどういう事?
決まってるわ。答えは一つしかない、持ってるのよ!
なら、姫……この女はヤバイ、ヤバ過ぎるっ!
「……けてっ!」
(え?)
「よけろーーっ!!リシリアーーーっ!」
バンナーの声が聞こえた。気が付いたら目の前にリセルナがいた。目が合う。けど、なにも映していない。私さえ見てはいない。興味も関心もないのだ。
「あ、あなたは……」
その手が私の頬を優しく撫でた。
それだけだった。そして私は……。
トケタ。
コレハ、あのトキ『葵』が使ったモノ。
イイエ違ウ。
あれは、タダノ劣化版に過ぎない。
マガイ物だ。
この女がオリジナル。この女を真似て、誰かが作ったモノだ。
ダッテ……。キエル……スベテ。
「ヒ……メ、ニゲテ」
「リシ……リア?」
リシリアが消えた。リセルナは触れただけだ。自らの手を見つめて首を傾げる。
まるで、何が起こったのか自分でも分からないように。きっと自分が何者かも理解していない。
「リシリアっ!リシリア!!」
前に出ようとしたのをバンナーに止められた。
「バンナー、見た?リシリアがっ!」
「落ち着け、姫、慎重に。あれは以前のリセルナじゃないね」
違和感を感じる。なんでそんなに冷静なの?目の前でリシリアが消えたのに?
「……で、リシリアって誰だ?」
「え?」
(な、何を……言ってるのよ。バンナー)
嫌な予感がした。
「り、リシリア=ホーメア……『電子の聖女』……よ」
「いや、あたいは聴いたことない名だ」
(まさか!!)
『死聖女具現化』。死人である彼女達との契約。そこに『電子の聖女』リシリア=ホーメアの名前は無かった。無いものは呼び出せない。
確信だ。
存在を消された。一時的にではない。
落ち着け落ち着け落ち着け。スタア姉さまスタア姉さまスタア姉さまスタア姉さま。スタア姉さまならこんな時でも慌てたりしない。私にも出来る出来るできる。
「ば、バンナー。あのリセルナを……み、見たことは?」
「いや、ないね」
「他は?どう?あのリセルナに見覚えは?」
皆の答えは「ない」だ。
なら、答えは決まった。アレが現れたのだ。
「撤退準備っ!バラバラでもいい。逃げ切ってっ!!」
今まで自らの手を見つめていたリセルナの視線がこちらに向けられた。
「早くッ!!行って!!」
「姫は?」
「私は平気なのよ。死人の貴女達には最悪の相手よ。浄化されるわ」
上手く言えてるか自信は無い。声は震えていない?
勿論、浄化では無いが説得するならこれしかない。
「けど……」
「ひめ」
「いい?こう見えて、あの『レムスタリア』なのよ。撤退の時間ぐらい稼げるわっ!」
お姉様達の名前は使いたくなかった。私と違って全てを持ってるから。私がレムスタリアなんておこがましい。でも……。
「わかった」
「姫、無茶しないでね」
「みんな行こう!!」
悔しいけど、効果は絶大。
(ごめんね……皆)
何故、今現れたの?予定よりも早すぎる。
皆が見ていないのはその前に亡くなっているからだ。
アレは最後に現れるはずの……前世界の亡霊。この世界の終わりに現れる『復讐の女神』だ。
魔神ボルトに世界を壊され、現神に神の座を奪われた女神。
そして、私が生かされた理由。
ならば、早すぎるけど始めないと。違うわね、アレを見つけてしまったら勝手に始まる。
「だから皆逃げて、巻き込まれないように……」
こうなる前に何とかしたかったけど、上手くいかないね。
そして、予め決められていた私の未来が始まる。
「『黒の決断』!!」
もう覆らない。私の意思は関係ない。それが決断された。
「『黒の絶真』!!」
絶対的な真実は一つだけ。自傷魔法発動。私の肉体が傷付けば傷付くだけ威力は高まる。命が消える程のダメージなら効果は絶大。
「『黒の崩壊』!!」
意識は邪魔、自我は崩壊する。ただの機械となって旧世界の女神を排除する。それがこの世界の為。わたしの存在意義。だから不安は消えた。
「『黒の終焉』!!」
そして終わる。私の命の終わりはそれを齎す。
そして私の中の『終命自爆』が発動する。
転生した復讐の女神を滅して平和な世界を齎す。
それは『最終戦争』の回避。
そして、本来なら消えていた私の使い道。
何故私は
彼に
救われなかったの
だろうか?
そうしたなら
違った未来も
もしかしたら……
クロの身体を割いて現れた爆炎は、クロだったモノを蒸発させリセルナを同じ運命にする為に渦巻いた。




