121:全ての想いは始まりにある
その魔力の波動は俺と魔神ボルトに衝撃を与える。リセルナの魔力でありながら『虹』などではない。それはディアレスが初めて姿を現し、魔力を開放した時の様な衝撃。
つまり、未知のものを初めて体験した衝撃だ。
それに対する反応は……。
一人は焦燥。
一人は後悔。
それぞれの感情を押し込めて行動を起こす。
「急げっ!ファウ=バルドっ!」
言われなくとも!
ここに至っては、交渉など悠長な事は言っていられなかった。
それは俺もボルトも同じだ。
「ディアレスっ!顕現!!」
いつもの無駄な演出を省いて、ディアレスが実体化する。この辺はわきまえている。
俺はディアレスの実体化を最後まで確認することなく、山小屋を飛び出した。
(葵、『式神』を頼む。探してくれ!!)
(わかったわ!)
場所の特定を葵に任せる。
この瞬間にもやることはある。俺はディアレスが『解析』していた6名の結果を表示する。クレシュ以外の5名の聖女の名前。スキル、属性、加護、今の内に出来るだけのデータを頭に叩き込む。
もっと早くしておくべき事だった。しかし、ボルトを優先した……その結果がこれだ。
それが、今の俺の『後悔』。
クロの「解析結果」に移る。
「な、なんだこれ……」
思わず口を付いた。そこには良く知った名前が……。
『レムスタリア=アルバーノ=フェイゼノルン』
『仮初のネクロマンサー』
『黒の聖女』『第三聖女候補第三人格』
『自称クロ』
誕生 :レムスタリア
性別 :女性
年齢 :1年8か月
武器 :黒の両刃
防具 :六門零の衣
装飾 :黒のリング
;黒の首飾り
アクティブ:『虚構の渦』
『死人の諸侯』
『流れぬ想い』
『終命自爆』
パッシブ :『黒の決断』
『黒の絶真』
『黒の崩壊』
『黒の終焉』
技能 :死聖女強化 死聖女具現化
魔法 :%$魔法
属性 :蒼 黒 死人使い 短命
加護 :六翼の加護 カリウズの加護
『力』:050
『心 :010
『技』:450
『体 :050
『神』:150
『魔 :450
『霊 :800
『武』:100
『学』:400
第三人格?第三人格って……なんだ?
だが、『解析』に出たのなら真実だ。それだけは自信をもって言える。
『偽装』をそのまま結果として表す事はない。
つまり、レムリ、スタアに続く人格となる。ならば、いつからだ?
クロとしての人格はいつからレムスタリアに存在していたのか?
出会いからの場面、自身の行動、レムスタリアの人物観察、色々な要素から出た結論は……考えられる限り、最悪の結果だった。
あの時、俺が二人に名前を与えた時に……第三の人格は存在していたのか……。
「何てことしやがるっ!」
そして俺は『解析結果』に怒りを覚える。正確にはクロに加護を与えている奴にだ。
クロの属性、短命。常時発動している『終命自爆』。
言い換えるなら、『時限爆弾』。
何処の誰は知らないが、この『カリウズ』はクロをモノとしか思っていない。
この事を本人は気づいているのか?
(ファウ!見つけた!西へ300!)
(葵、向かってくれ!)
この場所では、葵が肉体の主導権を得た方が速い。そう判断する。
先にはクロと六聖女、そしてリセルナが居るはずだ。
今回は事態が常に俺の先を行く、つまり最悪の事態もあり得る。
(見えたわっ!)
そして、その予想は正しいものだった。
「まだかっ!」
「貴方に刻んだ『死点』がいくつあると思っているのです?もう少し掛かります」
『八翼天翔・千方陣』の解除は継続中だった。
「ひとつお尋ねしても?」
「何だ?」
「簡単な……場合に寄りますが、貴方自身の事なら簡単な事」
「だから、何だ?」
「リセルナの献身、貴方を想う愛情の意味を知っていますか?」
何なのだ、この質問は。
つまり、リセルナが何故俺を好きなのか理由を尋ねているのか?
「知らん。人として壊れているのだ。魔神に惚れるなど」
「そう……」
「何故」
と言いかけた俺をディアレスの声が中断させた。
「解除、完了ですよ」
今の会話など、どうでもいい。
「『重力操作』!!」
天井、屋根を吹き飛ばして飛翔する。ボルトの姿は直ぐに見えなくなった。
「この山小屋はもう使えませんね。確かに……もう戻ることは無いのですけど……」
さて、自分はどうするべきか。
ディアレスは考える。
全ての戦闘行為は過去にマスターより禁じられている。魔神ボルト戦はファウ=バルドからの直接指示だったのだから反してはいないだろう。
だか、今回はどうか。
指示は出ていない。つまり、今回も自分は戦ってはいけないのだ。
「ならば、この先必ず訪れる日の為に、成すべきことをしましょう」
「『転移門』!」
「ディア=レスとして……」
ディアレスは『世界鑑定協会』へと『転移門』を繋いだ。




