120:魔王と魔女と聖女と戦乙女とペット
「よっ……くっ……あっ」
ガーゴイルの死角から回り込み、巡回の時間を避けて塀を登る。何か楽しくなってきたところで頂上を乗り越えて下りに入った。
縁に手を掛けて足で踏ん張る。お尻を付き出す形になって思った。
スカートでやるべきでは無かった。正確にはワンピースだが、この姿勢。
「下から見たら丸見え……ですね」
自分にとっては別段恥ずかしい事では無いが、一般常識では見せる物では無いと頭が理解している。
「レムリ?」
キャッ!
手が滑った。そのままお尻から地面に落ち……無かった。
声の主に抱えられた。
「何をやっていますの?レムリ」
スタアちゃんだった。
「お、お散歩……かな?」
「私に聞かれても困りますわね。それと出歩くことはお勧めしませんわ。重要参考人ですからね」
「重要さんこう……?」
「それよりもレムリ。ルクスは中?」
魔王ルクスの姿はここ数日見ていない。魔王どころか誰にも会っていないのだ。会ったのは、今ここでスタアに会えた。久しぶりだった。
「いいえ。でも、親衛隊の方々なら知ってるかも……」
「なら、お願いしますわ。大急ぎで皆を集めてほしいの」
「りよ、了解だよ。スタアちゃん」
動き出そうとしたレムリは塀を見上げ考えたが、門まで歩き鐘を鳴らし開けてもらった。
魔王ルクス邸にそれぞれが集められた時には、既に日は傾きかけていた。
「良くおめおめと姿を現せたな!」
「ソフィア殿?まずは話を聞こう。進まんでのう」
スタアをへの殺気が凄まじいが、一応は抑えてくれているとルクスは進める。
そもそも王国に入り浸っているが帝国の業務は平気なのだろうか?
「では、スタア。お主の取った行動の意味を聞こうか?ファウ=バルド殺害の理由を」
「えええーーーーっ!」
一人声を上げたのはレムリだった。
「ファウ様殺害?何それ!スタアちゃん?」
「だから、今からそれを聞くのだ、落ち着けレムリ!」
レムリは口を開こうとして、息を吸い込むと閉じた。
「はい」
(知らなかったのは自分だけ?)
皆の反応からそう判断した。ならばスタアからの情報を得る。それで不明な点を確認すればいい。
「ではスタア、聞こうか?」
ルクスお茶を手にしようとして無い事に気づく。いつもなら葵が入れてくれていた。ここに居ないのなら何処に居る?
「先ずこれだけは言っておきますわ。ファウは死んではいない、葵と一緒に四翼世界に居ますわ。私がファウを本気で殺すはずが無い」
(いない理由はそれか……)
「そして、私が取った行動の全ては私の『妹』の為。理解出来ますわよね?レムリ?」
スタアはレムリを見つめた。
(スタアちゃんが妹と呼ぶのなら、それはわたくしの妹でもある)
しばらくしてルクスに向き直る。
「だとしても、ファウの魔体を破壊したことは事実。このケジメはこの件が解決したら付けますわ。ただ今は、愚妹のクロとファウの危機を救うために力を貸してほしい……」
そうして、スタアは頭を下げる。
全てを自分一人で何でも解決する、自分の出来ない事が出来てしまう……そんな理想の自分。
そんな想いから生まれたスタアは事実……何でも出来た。
そんなスタアが助けを求める状況。
つまり、今は崖っぷちなのだ。
誰が?
スタアが?
違う。
自分の為だけなら、助けを求めないだろう。
妹と呼んだクロ、そしてファウ様。
その二人が危ない!
「それで、わたくし達は何をすればいいの?スタアちゃん」
なら、今する事は。
「状況を説明してもらおうかの?」
と、ルクスちゃん。
「なるべく手短にね?」
と、リテリ姉様。
「お兄ちゃんのピンチなら答えは一つだよっ!」
と、リリスちゃん。
「妻の行動としては、当然だな!」
と、ソフィアさん。
「コンッ!コン!」
と、きつねさん。
え?狐さん?誰かの愛玩動物かしら?尻尾も多いような……。
それを聞いたリテリ姉様が狐に近づく。
「なんで、居るんですかっ」
小声だった。
「愛玩動物ですもの」
しゃべった?
と、とにかく皆の気持ちは確認するまでも無くひとつだった。




