119:神と神と神
「「カリウズ」」
「ん?」
小さな光の点は一気に膨らむと、人の輪郭を取る。女と男の姿として現れた。
「ティティ、アンニージェ」
「カリウズ、無茶しましたね?」
「これか?別に無茶でも何でもない」
カリウズの身体は再生途中だった。厳密には肉体ではないのだが一目見て深刻なダメージを負っているのが見て取れる。
ティティが言葉を発した。だが口は動いていない。
「別にその事では無いよ。君の行動の事だよ。世界間戦争の事はいいよ、娯楽として楽しめる。でも、その為に行った『決まり事』破り」
ティティは大袈裟に肩を竦め首を左右に振る。
「これはもう、決定的だ」
アンニージェが続く。
「私達はともかく、他の神……特に『ダルガム』が黙っていませんよ?」
「ふん、だがお前達とて忌々しく思っていたのであろう?アノ『決まり事』には?」
「…………」
「…………」
「沈黙は肯定だよ。神でありながら関与できない『決まり事』。正に、旧世界からの『呪い』だ。可愛い嫌がらせ程度のものに過ぎないが、俺は我慢ならん!」
「だから、俺が行動を起こしてやった。『決まり事』の大元を排除する為にな。それにアンニージェ」
「何でしょう?」
「お前とて、俺と似たような事をこそこそしていたではないか」
アンニージェは笑みを浮かべた。
「あら?何のことでしょう?でも、仮に私が何かしていたとしても……ソレは『決まり事』内での事。誰に何を言われる筋合いも有りません」
「相変わらずだな」
ティティが割り込む。
「アンニージェの事はともかく、君は滅んだ世界を『決まり事』無視で復活……そう、存在しない肉体からの復活、滅んだ魂からの復活だ。勇者に対しては、神託によって四翼世界への宣戦布告を行なわせている。これはもう、擁護出来ないよ」
「別に擁護などいらぬ。俺の目的は奴だけだ。別に四翼世界など、どうでも良いのだよ。事が済めば軍は引くさ」
(そのことを言ってるのでは無いのだけどね……やはりこのバカ神には通じないか)
ティティの輪郭がぼやけて光となった。
「ティティ?」
「僕の用事は済んだ。アンニージェまたね。そしてカリウズ。さよなら」
そう言い残してティティが消える。
「相変わらずの気の短さだな。で、お前はまだ何かあるのか?」
「……カリウズ、あなたは最悪の結果を予測出来ていますか?」
「最悪の結果など存在しない。奴がその気になったら力でねじ伏せてやればよかろう?」
(ああ、もう、このバカ神はっ!)
「それは『最終戦争』も辞さないと?」
「その通りだ、新地にして新たに築けば良いのだ。世界をな!」
バカだバカだと思っていたがここまでバカだとは思っていなかった。『最終戦争』後の世界など、それは最早……八翼ではない。八つの世界は旧世界になる。そう、神の交代が行われるのだ。私達は古い神となる。
「それに、安心しろ。『最終戦争』は起きぬよ」
「何か、根拠が?」
「お前の世界の第三聖女候補」
「レムスタリアが何か?」
「そう、そのレムスタリアの第三人格を手に入れてな。肉体を与えている」
「はぁ?」
コホン。
「失礼……」
レムスタリアの第三人格?もう、嫌な予感しかしない。嫌な予感しかしない。嫌な予感しかしない。嫌な予感しかしない。聞きたくない。
「奴の始末に向かっている」
はい。嫌な予感的中です。
アンニージェは顔を手で覆う。
「心配するな、一人ではない。六人の聖女も一緒だ」
(聖女?)
「命のない者達だがな」
はい。またまた嫌な予感来ました。
「なんて……こと」
「ん?どうした?アンニージェ」
「それで?その肉体は……いつまでもつの?」
「持って後、三月といったところか」
三か月、では残り三か月を切ってるはず。ファウ=バルドがそれを知ったらどういった行動に出るか?アンニージェは良く知っている。いや、知り過ぎている。あの双子ですら排除の方向で動かなかった男。
魔神が誕生する原因。まぁ、ほんの少しだけ私にも関りがあるけど、責任はない。それすら救った。
カリウズを見る。
「ん?」
「カリウズ……貴方の切り札。それジョーカーよ?」
「ん?」
「帰ります。カリウズ」
「まぁ、任せておけ!」
いいえ、カリウズ。バカ神と皆から呼ばれていても他の神に比べれば下界への関心があった方。だからこそ、残念よ。
アンニージェはカリウズの下を去った。
結局、結果を変えることは出来ないのだ。
また、変わらない。
女神が望んでもそれは叶わない。
神であっても変えられない。
何故なら、それは自分がこの世界の神だから。
ああ、ここにも矛盾が。
神として存在しているから変えられない矛盾。
「ごめんなさい。また、ダメみたい」
それはあり得ないこと。
女神の謝罪。
それは、誰に向けられたものだったのか……。




