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俺と聖女でひとつの身体  作者: 天川 和
復讐の女神編
119/268

118:クロカミ ノ リセルナ


「ふ~ん、あれがそう」


「間違いないわ、一度聞いた音は間違えないし」


「バンナー、降ろして」


 クロはバンナーの背から降りるとスカートの裾を整えた。180を超えるバンナーからすればクロは小さい。まるで子供だ。少し背伸びする生意気な子供。


 生きていれば20代後半に入りつつあったバンナーの母性を擽る。バンナーには娘が居た。勇者との間に出来た子供だ。懐かしさと共に悲しみ。


 別にいつまでも背負っていても構わなかったが、姫の性格も知り尽くしていた。決して口に出してはいけない事だ。


 そこには周りの木々に囲まれて隠れるように山小屋が建っていた。茂る葉が日差しをも遮り、日当たりは最悪の部類だろう。だが、そこに居る者にとっては都合が良かったのだ。


 ピピエラがリセルナの音を聞いていなければ、探すのは困難を極めただろう。だが、音を追って辿り着いた。


「メイズ?どんな感じ?」


「中には男ひとり、女二人の計三人」


 男はボルト、女は……リセルナとあのとき邪魔した女。


「了解~、リシリア~準備~」


「頑張っちゃうよっ!」


「結果を出してよね?リシリア」


「はいはい、姫」


 これで自分も解放され、みんなも解放できる。いや、全ては終わってからだ。クロは気を引き締めた。


「じゃぁ、皆、お願いねっ!!」





 山小屋の存在が発覚した同時刻、ファウ=バルドは魔神ボルトの返答待ちだった。


「で?返事は?」


 ボルトに『八翼天翔・千方陣』の解除を提案してから丸一日過ぎている。


(よほど警戒されてるな)


(それはそうです。私ならこんな提案受けません。利用されるのが見え見えですからね。マスター?)


 確かにディアレスの言葉通りに、俺はボルトを利用する気だ。それは言い訳出来ない。だが目的の為にはどうしてもボルトでなければならないのだ。


 本来は気の進まない計画故に尻込みしていた。しかし、偶然にもリセルナとボルトに出会った。


 ならば、今がその時だと感じていた。理由も理屈もない、俺の感だ。今を逃せば手遅れだと感が告げる。その為に今出会ったのだと。


(ん?)

(どうしました?マスター)

(いや、何でもない)


 何故、()()()になると……俺は思ったのか?


「だから、狙いは何さ?」


 本当の理由を言えば、多分こいつは手を貸さない。


「ボルト様?」


 リセルナだった。水汲み用の桶を手にしている。


「お水を汲んでまいりますね?」


「ああ」


「ごゆっくり、バルド様、葵様」


 リセルナ自身はボルトの解放に賛成している。現状、自分に何かあればボルトも道連れだ。リスクは減らしたいのだろう。それもボルトの為に。


 だが、口は出さない。何故、こんな良い娘が魔神に惚れたのか?


 仮説はある、そしてボルトを開放しなければならない真の理由はそれだ。


 ただ、俺の仮説は当たって欲しくはないモノだった。


「お前にとっても悪くない話なんだがな……」


「ハッキリ言って信用できないね。世界を壊す?君が?」


ボルトは一呼吸置く。


「嘘に決まってる」





 水汲みへ……と外に出たリセルナは走り出す。接敵は遠ければ遠いほどいい。勿論、ボルトからだ。


「また、お会いしましたね?死人使いさん」


 忘れもしないこの魔力の色。ピピエラが音で相手を探れるのなら、リセルナも魔力の色で相手を察知できる。


 クロと呼ばれる少女『ネクロマンサー』。そして、死人である六聖女。


「わざわざ首を持参かなぁ?リセルナ」


「試してみます?」


 その自信は何処から来るのか。前回は死の寸前まで追い詰められたはず。


「リシリアぁ~」


「はいなっ」


「やって!」


 リシリアと呼ばれた少女が前に出る。頭に大きなリボン。


 リセルナは色を見る。色は『電子』。


(何?それ?)


 ソレが何かは分からなくても、相手の技を色から理解するのがリセルナだ。そしてそれを使いこなす。『蒼の聖女』が『蒼鏡』を使われたときの様に……。


 だが、それは再現できないモノ。


(この子、死人じゃない。生きても死んでもない)


 リシリア=ホーメア『電子の聖女』はそのままの意味だ。架空の聖女。つまり『仮想の聖女』。


 幻想種と同じく崇められ、信仰されて実体化したモノ。そこに命の概念は無い。


「『電脳世界』」


 身体が少しだけ沈んだ気がしたが、それ以外は感じられなかった。


 目の前に居たリシリアが消えている。


「?」


 リシリアだけではない、クロも他の聖女の色もない。


「これは何?」


 そこは本物ではないけど、本物の世界。人の認識を脳が司る以上、区別をつけることは不可能よ。そして理の法則が違う。解除は無理ね~。こちら側からの声も聞こえてはいないだろうけどね。


(良く分からないけど、不味いことになってるは確か。今のファウ様は戦えない。何とかしないとっ!)


 数日前に自分は死を覚悟した。それもこれも、これを使わなかった為だ。使っていれば負けなかったはず。


 もう、ファウ様に会えないと思った。私が死んだら、魔力供給はどうするの?と不安だった。


(あんな思いは二度としたくない!!)



 ツカッテ



「わたくしは、ボルト様を守る!」



 ソウ マモルノ



「だから、全力でっ!」



 ダカラ ツカウノ



「全ての色を!!」



 カイホウ スルノ


 魔力が交じり合い爆ぜる。


 それは『虹』ではない『黒髪』のリセルナ。


 かつて、ハジールの処刑会場で見たこれを、ファウ=バルドはあの状態のリセルナが最強だと表現している。ならば、これが何なのか心当たりがあったのか?


 リセルナから溢れた魔力はそれだけでリシリアの電脳世界を轟音と共に崩壊させる。



ドゴーーーーーーッ!!



「う、うそっ!力押しで干渉?有り得ない!」


「そして邪魔ナ者、全てをハイジョするノ」



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