116:聖女達の復讐
「いい加減、答えなさい。ファウを狙わせた理由。魔神ボルト、そして虹の聖女であったリセルナを狙う理由」
「…………」
「レムスタ……」
「その名前で呼ばないでって!分かった、分かりましたぁー」
憔悴していた顔には血の気が差す。屋敷に戻ってからはいつものこの子に戻りつつある。だが、聞き出すなら今だ。今しかない。
この子の正体などではない。それなら初めて会った時に気づいた。そう……。
この子も『レムスタリア=アルバーノ=フェイゼノルン』なのだ。
だが、外見はまるで違う。私とレムリが瓜二つ、言い換えれば同じモノなのに対してこの子は違い過ぎる。
でも、間違いなく私達と同じもの。正確には私と同じもの……。
「お姉さまは、あの男にご執心らしかったけど……あの男はとんでもない男だったのよっ!」
何故ここまでこの子は言い切るのか?
「約3か月後、いいえ、もう3か月は無い」
クロは言葉を止めた。
「あの男、ファウ=バルドは、魔神ボルトと狂虹リセルナと共に八つの世界を滅ぼすために動き出したっ!」
「…………」
スタアは言葉を失う。この子は何を言っているのか?
「信じてない顔ですね?お姉さま?」
「そんな話、信じろと言われても無理ですわ」
「なら、ピピエラー。起きて!」
ピピエラなら、ファウ=バルドに帰されたず。本来の自分が居るはずの世界へ。だが。
「姫は人使い荒いよぉー。まだ、本調子じゃないのに」
そこには以前のままのピピエラが現れる。
「ピピエラ、証明ーーしてーー」
言われたピピエラはスタアの前に立つと、上着を脱ぎ始める。白い肌を全て晒して後ろを向く。
そこには。
「て、天翔紋。まさか、貴女」
ピピエラの背中には『一翼の天翔紋』。そしてそれは、勇者と正式なパートナーの証。完成されたツガイの紋。
「正式な自己紹介はまだでしたね?スタア……様」
「スタアでいいですわ、それよりも貴女、もしかして」
「ピプエラ=エスカミュ。一翼世界の正聖女……だった者です。一翼では『音の聖女』と呼ばれていました。音楽の世界でしたからね。そちら側の魔王ルクスとは色々あった仲なのよ」
間違いなかった。聖女候補なら見間違うはずもなく、偽物なら気づける。
「それがどうして……」
「え?」
「どうして死人として使役されているか知りたいですわね?」
「流石はスタアさん。ハッキり言うわね。普通は遠慮するものだけど……」
ピピエラは上着を着ながら笑った。
「答えは簡単。使役されてるのではなく、お互い同じ目的の為に協力しているからよ」
「その通りだよ」
そこには消えたはずの残りの5人が。元々広くはない部屋に8人。
「あたいは『拳の聖女』バンナー=ホリキムだ。ガラじゃないんだが、『二翼世界』で聖女をやってた。あたいの世界はこれが全てでね」
そう言って『拳』を握って見せた。
「皆、殴り倒したら『聖女』になってたよ」
「……そう、素敵な世紀末世界ね」
「だろ?最高の世界だったよ」
「…………」
「私はアズハ=ムライ『点の聖女』です。よろしく。スタアさん」
「貴女は何処の聖女なのかしら?」
「三翼世界です。そちらのリリスさんとは少し揉めた過去がありますが、今ではお友達ですよ。まぁ、妹には恨みはないですから」
(リリスと?)
この時点でスタアは気づく。『宝珠』保護との名目で、自分以外の者はそれぞれの世界に向かった事がある。その時に色々とあったのだと。
「メイズ=ワンガ。『七翼の聖女』。『瞳の聖女』」
「…………」
「…………」
「メイズは元々無口だから気にしちゃ駄目。私は、リシリア。リシリア=ホーメアよ、『五翼世界の魔法少女』」
頭に大きなリボンを付けた少女が告げた。
「魔法しょう?何ですのそれは?」
「リシリアぁー。真面目にー」
クロだった。
「あはは。了解~。『五翼の聖女』よ?電子の魔……せ、聖女よ?」
疑問形だった。
(デンシ?なによ、それ?)
「私は、クレシュ=カギナリ。挨拶はいらないわよね?」
そう、今更だ。初めに自分に接触してきたのはこの『六翼の聖女』と名乗るクレシュだったのだから。
「つまり私達6人の元聖女は『ファウ=バルド』『魔神ボルト』『狂虹リセルナ』への復讐の為に『姫』の下へ集まった者達なの」
「3か月後に壊れる世界の、命を奪われた自身の……愛する者を奪われた事への……」
「聖女達の復讐」
「これで分かった?お姉ちゃん?これは、この先必ず訪れる厄災から世界を救うための正義の戦いなの!」
だから今なのかとスタアは思う。
以前にクロはこう答えている。『今だからよっ』と。
『過去の世界』『未来の世界』が存在しない『箱庭世界の八翼』は無くなった。
つまり、神の力でも『無かった事』には出来ないのだ。
ファウ=バルドが死んでも『挿げ替え』は起こらない。
でも、真実なら。この6人は『未来の死人』だ。そんな矛盾がありえるのか?何故なら、今現在は生きている聖女が各世界に存在するのだ。
「けど、思わぬ邪魔が入ったね。何?あのメイド女。知ってる?クロ」
「あははは、凄かったね。私達6人が一瞬で帰された。でも私知ってるし」
「「「「!!」」」」
「リシリア……貴女……」
メイズが呆れた顔でリシリアを見た。
「な、なによ、前に会った時は大したことなかったんだってっ!」
「で?誰なの?」
「八翼世界の真巫女よ。名前は確か……『葵』。五翼に来たことがあるよ」
「そんな名前は出てこなかった。だから、脅威にはなり得ないわよ。そうでしょ?メイズーー?」
「はい、姫。もう、この『瞳』で見ましたから」
「それよりも、ファウ=バルドが死んだ今、残るは魔神ボルトと狂虹リセルナ。次は必ず仕留めるわよ?」
「それで世界が救われる。聖女としてやり遂げられなかった、本来の使命を果たしましょうっ!」」
復讐の聖女編の終わりです。ありがとうございました!




