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俺と聖女でひとつの身体  作者: 天川 和
復讐の聖女編
116/268

115:魔人と魔神、再び


 リセルナが無事に戻り、女を連れてきた。確かウォボスと対戦した『葵』だったか。


 女の肉体の損傷は酷い有様だったが、リセルナによって癒された。


「放っておけ」


 との俺の言葉に、リセルナは微笑んだだけだ。


 俺の言葉に従わなかったのは珍しいが、理由は知っている。



「あれから二日だ、もうそろそろ目覚めて良いころだがな」


「気になりますの?」


 それはどのような心理ゆえの言葉か?


 気になる?いいや、気になどしてるはずが無い。



 あの『葵』の中に奴はいる。どういった原理か、理屈か、俺でも分からないが事実だ。一時期は『勇者ファウ=ボルト』の中にさえ入り込んだ男だ。


 俺にとっては災いの種でしかない。今の現状は奴のせいだ。


 さっさと追い出し、リセルナとの静かな生活……。


「…………」


 何を考えようとした?


「?」


 リセルナと目が合った。


「どうされました?」


「…………」


 答えてやる義理は無い。いや、義理くらいはあるが……。


(どうやら、この壊れた女に毒されたらしい)


 何が嬉しいのか、リセルナは俺を見て微笑んだ。


(本当にリセルナ。君は壊れてるよ……)




「あの?」


 リセルナとは違う女の声した。


「お加減はどうです?何処か違和感は?」


 リセルナが駆け寄る。『葵』が目覚めたようだ。では、ファウ=バルド、お前も目覚めてそこに居るのか?


「はい、おかげさまで助かりました」


「いいえ、助けられたのはこちらです。貴女が助けてくださらなければ、わたくしは今頃……」


 リセルナはそこで言葉を切った。



 そうだ、俺の見た「未来視」通りにここに現れるのはアノ女『クロ』だったはずだ。そして俺が取る行動は、魔神としては認められないモノだった。


「ふん」


 まぁ、俺は実際にはその行動を取っていないのだから魔神としては許容範囲内だ。


 情に絆された訳では無い。


 つい口を付いた言葉が自分に向けられたと思ったのか『葵』が俺の前に来る。


「お、お邪魔してます」


 この挨拶は正しいのか?


 確かに邪魔ではあるんだが……。


 勿論俺は、答えてやる気はない。


「…………」


「え~、葵さん。まずは掛けてください」


 勧められて葵が腰を掛けた。俺の正面だ。その後、リセルナが俺の隣に座る。


「…………」

「…………」

「…………」


 沈黙が流れる。


 リセルナも何も言わない。無言で水差しから水を注いだものをテーブルに置く。


 お茶なんて物はここにはないからな。あっても水で十分だ。


「よお、思ったより元気そうだな」


 葵だった。しかし、葵であるはずが無い。葵の声だが確信した。


「ファウ=バルド……か?」


「正解」


 俺にとっての元凶。


「君にはもう二度と会いたくなかったけどね」


「そっちでいいのか?」


 勇者ボルト・モードでいいのか?との意味だろう。


「勿論だよ。そうでなければ君への殺意を抑えられないからね?」


「まぁ、そうだろうな」


「で?僕への挨拶の為にテーブルに着いた……なんて事は言わないよね?」


「まぁな……。単刀直入に言う。時間もあまりないんでな。取引がしたい」


 また可笑しな事を言い始めた。だから、こいつ……ファウ=バルドは信用してはいけない。取引?魔神と?


「お前の『八翼天翔・千方陣』を解除しようと思っている」


「本当ですかっ!バルド様!」


 声を出したのはリセルナだった。


「し、失礼しました」


 お陰で冷静を保てた。何が狙いだ?ファウ=バルド。『八翼天翔・千方陣』を解除すれば、俺の魔力の制約は無くなる。そんなリスクの高い真似をするか?


 いや、こいつはリスクの高い事しかしてこなかったな……。


 つまり、狙いがあると言う事だ。


「へぇ、何が狙いさ?」


 ボルドは間髪入れず答える。


「八つの世界を壊す。お前に手を貸してもらいたい」


 何度でも言う、俺はこいつを信用しない。そして俺にとっての元凶だ。




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