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俺と聖女でひとつの身体  作者: 天川 和
復讐の聖女編
114/268

113:リセルナ決死戦(3)


 それは八翼の女神アンニージェの加護か?

 それとも、四翼のティティ神の加護か?

 魂に刻まれてしまった禁断の力のお陰か?

 どれであっても構わない。

 どれも全て重要な事ではない。


 最も重要な事は

 その男がそこに居た事。


 その男のとった行動のどれが欠けてもたどり着けなかった。

 死の偽装。葵との一体化、解析の中断、転移門への突入。

 だからこれは必然。


 確かに『ファウ=バルド』はそこに居た。


 だからこそ『魔王ルクス』はこう評価した。


 飽きないと。




「『バステルの正門』!!」



「発動する!!」



 ソレは遥か昔、数万を処刑した血塗られた正門の鎖。聖なる鎖などではなく、只の『呪い』に過ぎない。


 一帯を埋め尽くした鎖は、今まさにリセルナの首めがけて振り下ろされようとしていたメイズ=ワンガの剣に絡み付いた。


 そして、7人を拘束する為に伸びる。


 メイズ=ワンガは、剣から手を放し距離を取るために後ろへ飛んだ。


(良い判断だ)


 他の6人も拘束から逃れる為に距離を取る。必然的にリセルナが取り残される形となる。


(まぁ、狙いは初めからこれだ)


 つまり本命は初めからリセルナ一人だったのだ。リセルナに絡み付いた鎖はそこに現れた9人目の下へ、リセルナを運んだ。


メイド服の少女『葵』。だが、現状の肉体の主導権はファウ=バルド。


 葵の下に運ばれたリセルナは時間を無駄にしなかった。


 何故?とも、どうして?とも聞かない。


 寧ろ聞くだけこの状況を打開する確率が減る。そんな事は全て終わってから聴けばいいのだ。そして、足の治療を始める。生き残るための最優先事項だ。


「お話しは、これを乗り切った後で」


「ああ、勿論だ」


(流石だな、何を行うべきか理解している)


 現状、鎖でけん制しているが、初めて見るモノに警戒しているに過ぎない。直ぐ反撃に移るだろう。


7対2では不利過ぎる状況に変化はない。


 そう、魔神ボルトの見た「未来視」の結果が少しだけ伸びたに過ぎないのだ。


(ディアレス、6人の『解析』!表示はいい。必要な時に呼び出せるようにしておいてくれ!)


(了解です。マスター。クレシュを除く6名の『解析』入ります)


 さて、計画はある。いくら俺でも考え無しで飛び込んで、どうにかなるとは思っていない。だが、これを思い付いた自分を殴りたい気分だ。今は葵の肉体なので我慢する。


「さて、リセルナさん。ここから生きて帰れる方法かひとつだけある」


「はい」


 やはり優秀だ。時間を無駄にしない。そう、今は聞くことが大事だ。疑問は後だ。


「俺は今からある『呪い』を使う、身体への負荷が高いので最悪命を落とす」


(ディアレスの名に懸けて有り得ません)


 お前が茶々いれてどうする?


「つまり、頼みたいことは二つ。俺が呪いを使うまでのこの身を守る事。使って死亡した場合『完全復活』を使用してもらいたいこと。どうだ?」


「了承しました。お守りいたします。そして死亡の際には復活をお約束します」


 話しが早くて助かる。


(葵?済まない……)


(その話は終わり。私も同等の対価を貰う。だから、これはお相子!)


 クロ以外の6名が動いた。


「リセルナっ!!」


 俺の言葉の前にリセルナは既に動いていた。6人の足元を虹の帯が通り過ぎる。一瞬動きを止めるがメイズがクロの下へ戻る。護衛に残ったとみた。


 他は、こちらに再び向かう。しかしその動きは……。


 まるで水中での動きの様にゆっくりとしたものに変わっていた。


『七光・流帯圧』


 それは、相手の侵入を阻むためではない。何故なら範囲が桁違いだ。完全に森全体を取り込んだと言っても良い。


(やはりな……)


 そこには黒髪のリセルナが居た。


 それは、光ではない何かを混ぜてしまったモノ。


 本来、桁外れの魔力を持つリセルナ。魔王ルクスに規格外と言わしめた。だが先程までは『虹』で戦い敗北している。では、何故これを使用しなかったのか?やはり、そうなのか?


(今はいい、俺は俺の成すべきことをするだけだ!)

(ファウ!!急いで!!)


 分かってるさ、ただ……葵の肉体を壊すことに緊張しているだけだ。



「天にカーミラの血十字!!」


毛細血管が破裂する。葵の身体の肌の色が一瞬で変化した。激しい痛みが全身を襲うが、寧ろこれは俺が受けて当たり前。葵にこの痛みを体験させずに済むことが主導権の利点か。


「地にオレオスの棺!!」


視界が、音が、森の香りが消失した。つまり五感を失った。負荷が人体の限界を超えたのだ。俺は幾度も体験していることだが葵はそうでは無い。視力、聴覚に至っては共有しているので行き成り目と耳を失うに等しい。


「そ、そして人、俺ファウ=バルドが解放する!!


俺はちゃんと発音できているのか?そうでなければ困る。



「全てが……」


「終焉する!!」


「「パンドラの希望!!」」


 全身の力が抜ける。俺は何ををしているんだ?全てが無駄な事だ。


 コノコウイモムダダ。


 それは、あらゆる災いを詰め込んだとされる箱。伝説では最後に現れたのは『希望』だという。しかし、ファウ=バルドの持つ『呪い』が『希望』を与えるモノだろうか?


 否だ。


 希望を与えるなら『解呪』されるはずもない。害があるからこそ100内のひとつになったはず。


 そう、この箱の最後の最後にはソレが現れる。ソレは存在の根本を切りとる。故に存在するものは己の存在そのものを否定する。『希望』とは真逆……いや、ファウ=バルドはこう思っている。むしろ、現れたのはこいつで、伝説はコイツによって変えられたのだと。


 何故なら、その方が『絶望』する。


 命ある者なら当たり前に、それが死人なら尚更のこと。


 元々存在しない者達なのだから……それはある意味、簡単に行われる。


「ひ、姫……」

「こ、これは」

「まさか……」

「ひめちゃん……」

「ごめん……ひめ」

「お逃げくだ……」


 それぞれの声を残して6人は土の山となった。


「ピピエラ?アズハ?」

「バンナー!メイズ!リシリア!」

「クレシュ!」


「起きてよっ!」


 上手くいったのか?俺には確かめる術がない。そもそも、俺は立てているのか?


(ディア……レス?)


 失いそうになる意識を繋ぎとめてディアに問う。


(目標の6名は帰りました)


(そ、そうか、では後は……)



「助けて……みんな……」


 クロの呟きをリセルナは聴いた。


「何を今更」


 リセルナは決めている、この死人使いは生かしておいてはいけない。生かしておいたら再び、私とファウ様を狙う。


(よろしいのですか?マスター)


(何がだ?)


(リセルナ様はクロと呼ばれる少女を完全に排除するおつもりです)


(まぁ、そうだろうな。俺を狙った理由は気になるが、それで解決するならそれでもいいや)


(考える事を止めていませんか?後悔しますよ?)

 本当に、マスターなら後悔しますよ……。





「助けて……おねえちゃん」


「クロ、私はともかくファウ様に害を成そうとする者は排除します」


 クロはリセルナを見ていない。いや、現状を理解すらしていないのでは?先ほどまでの太々しい態度は消えていた。


「助けて……おねえちゃん」


 演技ではない。しかし、リセルナは揺るがない。ファウ=ボルトの為なら国も裏切る。鬼にも悪魔にもなる。

「お覚悟をっ!」


「助けてよっ!!おねぇちゃんつ!!」




「『蒼鏡』」




 それは、リセルナとクロを遮るように目の前に現れた。


 見間違えるはずが無い。過去に自分が再現して使用しモノ。『蒼』の魔力で作り出す『鏡』。


「まさか……」




「今は引くわよ?レムスタリア?」


「う、うん、分かった……」


「なっ、何が何だか分かりませんが、させませんっ!」


 動こうとしたリセルナをスタアが止める。


「以前『虹』の貴女と対戦したいと言いましたが、今ではありませんわ。後ろ……」


 リセルナは後ろを振り返る。葵が倒れていた。


「私を相手にしていたら、間に合いませんわよ?」


 スタアは葵を見る。


「出来れば死なせないで。その子をお願いしますわ」



(一番肝心な場面を見ていないマスター。本当、一緒に居て飽きませんね)




ーーーーーーーーーーーーーーーーー



『ワールド・サーチ』


思ったほど魔力の消費はなかった。

リセルナが気になった訳ではない。

もう一度言うがリセルナの為ではない。

俺の敵を見ておこうと思っただけだ。


確率はゼロでは無いと言った。

確かにそう言ったのは自分だ。

しかし、こうもあっさり都合よく俺の『未来視』を覆せるものか?

やはり、俺と奴には繋がりと因縁がある。

それも前世の世界での生き残りとして以外のモノだ。

そうでなければこうも簡単に俺の未来を変えれるはずが無い。

いや、そもそも奴の語った己の前世は本当の事なのか?

ファウ=バルド、お前は一体何者だ?


まて……。

奴の事だ、わざとそう思わせた可能性もある。


そうフェイクだ。


そちらに注目させておいて実際は違う。

いつもの奴の手。手品師のトリック。


俺と奴には何かが有るのか?あまりにも似すぎた名前はフェイクなのか?

ますます分からなくなったな。


しかし、これだけは言っておく。

お前にしては良い仕事だった。



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