112:リセルナ決死戦(2)
バンナー=ホリキムと共に戦闘に参加したのは、死んだはずが一瞬で蘇ったアズハ=ムライ。
元々が死人であるならば、蘇ってなど居ないのだが。ソレが一番分かり易い例え。
現状、彼女らは私の命を狙っている。理由は不明、何者なのかも不明、でも素直にハイそうですかと希望に応じる気はない。
だがクロが死人使いならば対応策は一つだ。
つまりクロさえ何とかすれば他の6人は消える。確証は無かったが、それに掛ける以外道は無かった。
7対1で、実力も高い相手を一人一人倒すなど現実的ではない。そして、倒した傍から蘇るのだろう。蘇る回数に限界はあるのか?確かめる気にもなれない。
(クロを倒して、ファウ様の下へ生きて帰る!)
リセルナは心に誓った。
「『レインボウ・レゾナンス』!!」
「『レインボウ・ミラージュ』!!」
先ずはクロまでたどり着くことが先決。その為のスキルを発動。
(まさか、自分が前衛の真似事をするなんて……)
(共鳴、加速、反射、そして……)
「らちが明かないな?何だこれ?」
『七光・流帯』によって全ての攻撃を反らされるバンナーが愚痴を漏らした。
「だから私を使いなさいって!」
「ああ、アズハ、たのむよ」
アズハと呼ばれた女性の色は『点』だ。何をするかは理解出来る。点と点と重ねて空間をゼロ距離にする。
ならば、いつまでも『七光・流帯』が破られないなんて思ってはいけない。常に自分の技の対応策を準備していた魔族を思い出す。あの戦いでリセルナも学んだ。
(おそらく、次で破られる。だから先手を取るっ!)
「『七光・連弾』!!」
バンナーとアズハめがけての虹魔法。だがこれは回避させるのが目的だ。まともに受けるとは思っていない。寧ろ避けてもらわねば困る。
「「!!」」
予想通り二人は左右に分かれてくれた。中心に光の道が現れる。後衛の私が加速を得るにはこれしかない。
『光の道』
勿論、光の速さを得るわけでは無い。だがこの距離なら瞬きの必要すらない。乗るだけで運んでくれる。
バンナー、アズハの二人を一瞬で抜き去る。
「し、しまった!!」
二人の声がした。
「うん、いい作戦だったね」
その声は耳元で聞こえる。
「メイズ、でかした!!」
誰の声かは分からない、確認している余裕もない!
(追いつかれた?)
瞬間、煌めいた剣筋がリセルナを肩口から両断する。
「なに?」
それは、メイズと呼ばれた者の声だった。両断されたリセルナの身体は光となって消えていく。
「幻影?なら実体は!!」
「リシリアっ!!貴女の前を過ぎるわっ!!」
ピピエラだった。音までは完璧に消せない。呼吸は止めても心音、血流音は消せない。それを聞かれた。ならば光を屈折させて姿を消しても無駄だ。
それを解除する。
「居た。そこっ!!」
だが解除したのはあえて姿を見せるため。そこに注目を集めるためだ。実際はそこには居ない。さらに光を利用したそれは蜃気楼。
そして、クロにたどり着く。
クロの背後から首筋に刃を付きつける。微かな勝率を引き当てた。
「そこまでですっ!!」
6人の動きが止まった。
「あははぁー。凄い凄い」
クロは皆を見渡した。
「それに比べて、バンナー、アズハ、メイズ、リシリア、ピピエラ」
「「「「「はい」」」」」
「真面目にやってるぅ?」
リセルナは会話に割って入る。
「余計なおしゃべりはいいわ。今すぐ彼女らを帰すか、ここで消えるか選んで?」
クロは考える素振りをする。これは間違いなく演技だ。
「う~ん、どうしようかなぁ。どちらも嫌だなぁ」
何を言ってるのこの子?状況はこちらが有利なはず。なのにこの余裕は?
(まって、5人。5人の名前しか呼ばれていない……もう一人は?)
「はーい。今回はクレシュの勝ちです。皆、見習うようにねー」
その言葉と共に目の前のクロが消えた。リセルナはそこに一人立っていた。
目の前を『黒揚羽』が通り過ぎた。そう、全てが蝶の見た夢に変わった。
「いい夢見れたかな?虹の聖女様?この人数を相手に、勝機を掴んだ夢でも見てたかな?」
「…………」
「いい顔だよ。希望が絶望に代わる瞬間だね?」
リセルナの両足に激痛が走る。
(足の腱を切られた!!)
立っていられず、その場にへたり込む。
「さて、文字通り首をいただくけど……言い残すことは?」
「…………さま」
クロはそれを確かに聞いた。
「最後の言葉が男の名前なんて……でも、確信したよ?魔神ファウ=ボルトは生きてるね?」
「…………」
「まぁ、いいわ。探すから。勿論、プレゼントは虹の聖女の首よ?」
「…………」
「メイズ、やってっ!」
「了解です、姫。悪く思わないでね、聖女リセルナ?」
メイズの持つ刃がリセルナの首にあてられた。
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魔神ファウ=ボルトは考える。自分は夢を見ない。
なら先程のは夢ではない。間違いなくリセルナは死ぬ。
そう、この先必ず起こる出来事だ。正に『未来視』だ。
魔神の能力なのか過去にも度々あった。それに従って最善策を取ってきた。災いの目は潰してきた。最近なら六翼を攻めたことか?
だが、今の俺は動けない。
リセルナを救うことは出来ない。望んでも出来ないのだ。
だが可能性はゼロではない。
過去に俺の『未来視』を捻じ曲げた男が居る。
捻じ曲げて全く違う今の現状に持って行った男。
そんな都合の良い事など有り得ないと知っている。
だが、八翼の奴が何らかの目的でこの四翼を訪れていたとしたら……。
可能性はゼロではない。
ファウ=バルド……お前は今何処にいる?




