106:俺と真巫女でひとつの身体(1)
さて……。
(身体能力的はレムリとスタアの丁度中間ってところか)
軽く跳ねてみる。
流石『真巫女』だ。少なくとも俺の肉体よりはステータスが高い。
まぁ、当たり前と言えば当たり前か。『真巫女』とは選ばれた神国のエリートだ。
視線を下に向ける。
俺の跳躍に合わせて、二つの膨らみが跳ねていた。
この感覚は男でいる限り味わえない。サイズ的にはリテリさんに次ぐ大きさってところか。侮れないな、神国の真巫女。
ならば、俺が皆を代表して少しだけ感触を……。
(ちょっと、何してるのかな?)
現状、肉体の主導権は俺に変わった。この先のやり取りを説明している内に。
「自分でやってっ!」
……と許可が出たのだ。
(あ、いや、準備体操をすこしな。慣れておかないと転ぶだろ?)
(ふ~ん。言っておくけど、変なところに手を持って行ったりしないでね)
すまん、皆。感触の説明は次の機会だ。
(心配するな、俺は紳士だ)
(どうだかっ)
全く信用が無かった。
(心配いりませんよ。マスターはチキンの中のチキンですから、そんな度胸ありません)
言ってくれるね、ディアレスさんや。俺だってやる時はやる男だ。ただ、今は本気出していないだけだ。それに、チキンの中のチキンって男の中の男みたいで少しカッコイイよね?
「あー、あああー。私は葵。好きな食べ物は天ぷら。趣味は盆栽。皆からは少し天然入ってるねって言われます。よろしくっ」
(今度は何?バカなの?)
(発声練習だ、肝心なところで噛んだら台無しだろ?)
(何処の合コンの自己紹介かと思ったわよ。しかも、頭悪そう……)
合コンを知っているとか、神国の真巫女……ますます侮れんな。
「まぁ、こんなもんだろ。葵を完璧に演じて見せるさ!」
(ちゃんとメイド歩きしてよね?)
(…………)
なにそれ?
「おう、任せろ」
メイド歩き、めいどあるき、冥途歩き?
(マスター?手と足が同時に前に出てますが……)
(はぁ、もういいわ、急ぎましょ。本当、緊張感のかけらも無いわね)
確かにそろそろ気を引き締めるか。
スタアの行動については検討がつく。あの肉体を破壊しても俺自身は死なない確信があったのだ。そしてその行動を誰かに見せる必要があった。
その人物……としておくが、人物は今の俺の肉体がディアレスが生み出した『魔体』であることを知らない。
『呪い』である『ロクヌス』を使い、他の肉体を共有できることを知らない。
分からないのは行動を起こした理由。そして笑顔の理由。あの笑顔には意味があったはずだ。俺を後ろから刺して笑顔でいなければならない理由。
普通に俺を刺して嬉しかった……は、有り得ない。自分の身を危険にさらしても常に俺の安全第一で行動していた『スタア』らしくない。
そう、らしくない……のだ。
だが、本人だった。
(お、いたいた)
今回の俺の葬儀でそれこそ『らしくない』行動を取ったもう一人の人物。
ファウ=バルドの妹。
『リリス=バルド』
時間をかけるつもりは無い。今回は初めから全力で行く。
(ディアレスっ!リリス=バルドを解析!)
(はい、マスター。リリス=バルドの解析、入ります)
さ てリリス。お前はどうだ?本人か?




