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09:絶望の果てに(スタア)


「大体のことは理解した。それで……」


「何ですの?言いたいことがあるならハッキリどうぞ?」


「二人が別人格なら、先はどちらなんだ?」


「そんなの『レムスタリア』に決まってます」


「…………」


「あの子のことよ!そんなことも理解できないのかしら?」


「あぁ、初めの『レムスタリア』か、で今俺と話してるのは?」


「そんなの『レムスタリア』に決まってますわ?」


「…………」


同じ答えが返ってきた。初めとか後とか面倒だな。


「よし、決めた。お前は『スタア』だ。……でもう一人を『レムリ』と呼ぶ」


「なんですの?それは」


「名前だよ名前。どっちも『レムスタリア』とか俺が面倒だ。分かりやすいように俺が付けた」


「貴方、何を勝手に!」


「まぁ、聞け。これは本来の名前の『レムスタリア』から三文字づつ取ってるんだ。『レムリ』と『スタア』合わせると『レムスタリア』だ。今の『レムスタリア』は二人で一人……だろ?」


「『レムリ』と『スタア』で『レムスタリア』……」


 スタアは、何か考えているようだったが、口元には笑みを浮かべていた。


 鏡の中で目が合う……との表現も変だがそうなのだ。


「べ、別に嬉くないわよ?でも、おバカさんが会話中に混乱しないように管理するのも上に立つ者の役目。だから認めてあげますわ!」


 あ、おれ、下なのね?まぁ、『聖女様』だし当然と言えば当然か。


「助かるよ。『混乱』は避けたいからね」呪いが発動するし。



(マスター、呪いの発動を感知しました!『名付け』に反応したと思われます!)



(あぁ、分かってる)


(わざとですか?マスター)


(計画通りだよ)


(何を考えているのですか?)


(そのうち、分かるよ)



「では、スタア。改めて聞くが、レムリの中にあの時点で入り込むのを知っていた?」


「もちろん、貴方が私達の中に来ることは知っていましたわ」


 だろうな……。


「不思議なお婆様に、私達の願いを叶えるために最適な者がいる。受け入れる準備をしろと言われましたわ。そして最後のチャンスだとも……」


 俺の脳裏に婆さんの顔が浮かんだ。やはり、普通に『転生』してたら間に合わないってことなんだろうな。


「婆さんも言ってくれれば、こんな面倒な状況になっていなかったのにな」


「だからって、いきなり現れて助けてやると言われて誰が信用しますの?」


 スタアは、姿見から視線を逸らす。


「日時も場所も指定されてましたわ。ただ……信じた訳でも、不安がない訳でも無かったわ。お分かり?」


 それはそうだろう。何処の馬の骨とも分からない輩が16の少女の内に入ってくるのだ。不安がない訳がない。むしろ良く受け入れたと思う。だから、自分達の現状を直ぐには伝えなかった。俺を見極めるまで。


「レムリには様子を窺えと言って聞かせたのに、途中からいつも通りに戻ってしまったのが誤算でしたわ」


「やはり……素かあれ。」


 思い返せばレムリは、望みはないか?何でもするとまで言い切っていた。


 『聖女』の力を何かに使えるのなら使おうとする輩は多いだろう。しかも、脅迫すら可能だ。


 何故なら、『命の恩人』にこれからなる人物だから。 


 つまり一連の流れは、俺を試すための舞台だったということか……?


「一つ聞いていいか?合格といったな?基準はなんだ?」


「あ、貴方には教えませんわ……」


 ん?少し慌てた?


 まぁ、いつ来るかが分かっていればそれに合わせて準備が出来る。そして『レムスタリア』は、只待つことを良しとしなかった。


 戦場を準備した。


 優雅な場所でお茶でも飲みながら話し合うなど論外。その者の本質を見極める為に、命の危険のある戦場を選んだのだろう。命の危機ほど人間の本質が出る。自分第一で他者を見捨てる者、自分を犠牲にしても救おうとする者、動けなくなる者、泣きだす者……と色々だ。


 これを考えたのは『スタア』だろうな。『レムリ』では、無いだろう。


 さて、俺の行動はどう映ったのか?


「レムリの『何でもします攻勢』は違和感だらけだったが?」


「あれは……純粋にお礼がしたかっただけですわね。駆け引きとか無縁の子よ。ただ単に貴方のために何かしてあげたかったのだと思うわ。これから自分を救ってくれる貴方に対して」


 スタアの瞳は優しい色を湛えていた。


「認めたくないけど……貴方はレムリにとっての救世主になれるのよ……」


 瞳は優しい色を湛えたまま、何故か寂しそうにつぶやいた。


「か、勘違いしてないでね!わ、私は別に貴方が救世主だなんて思ってませんわ。勿論、貴方がどうしてもって言うなら……レムリを救う権利を与えても良いかと考慮しますけど……」


「……そ、そうか」



(マスター、何で嬉しそうなんですか?)


(いや、居るところには居るんだな……と)



「スタアさ……レムリを救うと言ってるが、スタアの命でもあるだろ?」


「私はレムリの苦しみが消えたら消滅しますわ。元々はあの子の苦しみを肩代わりする為に生まれた人格ですのよ……」


 あっさりと言い切ったな……。


 そうだろうな、『解呪』と共に消える人格。正確には『解呪』と共に元に戻るのだ。呪われる前の幸せだった頃に。別人格を必要としなかった頃に。


 だからと言って……。


「あ~、それはお勧め出来ないなぁ~」


「……?」


「レムリは、呪いの辛さを全部押し付けたか?」


「……いいえ。あの子は、呪いの辛さからそれに負けない強い自分を……私を創造したくせに半分だけでいいからと……」


「そうだろうと思ったよ」


「その上、謝るのですわ。辛い思いさせてゴメンね……と」



「呪いの辛さから誕生した人格はさ。オリジナルを恨むんだよ。全部押し付けられるからね」


「私は恨んでなどいませんわ……」


「知ってるよ。だから消えるのはお勧め出来ないと言ってるんだ。悲しむだろ?レムリ……スタアが消えたらさ……」


「……でも、どうにもなりませんわ。解かない訳にはいきませんもの……あの子を救うと決めたのです。私が消えることになろうとも」




 どうにもなりませんもの……



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