第8話 一緒に行こう
ギイィイ不快な音をたてつつ斡旋所の扉を開ける
「シェリル!無事だったか!?」
男が慌てて駆け寄りシェリルの身体に
傷が無いかを心配している
「ま……魔狩人。私を心配してくれてるの?」
シェリルは顔を赤く染めながらも
必死に冷静を保とうとする
「あぁ…仕事が早く済んで、戻ってきたら
シェリルとアサミが居なかったからな。
お前との仕事を、俺が断ったせいだったか?スマン」
男は深く頭を下げる
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「私こそ……ごめんなさい。
アサミちゃんを勝手に連れ出しちゃって」
「シェリルちゃんと遊んで来たんだよ!」
アサミちゃん……なんて良い子なの。
私のせいで危険な目にあったのに。
魔狩人は二人が怪我をしていないかを確認すると
「まあ。無事ならいいさ。
俺は疲れたから今日はここで寝るよ。
明日にでも新しい家を教えてくれ」
そう言って2階に上がろうとする魔狩人のローブを掴み
「ねぇ。あたし アレ が飲みたい!」
「…………アレか……俺疲れてるんだ。明日じゃダメか?」
少女は真っ直ぐと魔狩人を見つめる
魔狩人は諦めたように
「あまり夜が深くなる前に終わらせるか」
アレ?そういえば聞きそびれたが少女は
何が飲みたかったのか?魔狩人なら知ってそうだ。
「魔狩人。アサミちゃんが飲みたがってる
アレって何?」
魔狩人は少し考え
「えーっと……ホラ シェリルも好きだろ?」
軽く拳を握り、口の前で前後させる仕草をする
「…………は?好きじゃないわよ。した事もない!」
「そんな訳あるか!?仲間と飲んでるのを
見た事あるぞ。」
「何を……言っているの?魔狩人……」
私がそんな尻軽な女な訳、ないじゃない。
胸を見せたのもアサミちゃんが初めてよ
「なんか勘違いしてないか?シェリル。
一緒に行かないか?3人の方が色々やりやすい」
少し呆れた顔で酒場に行く事を提案する魔狩人
しかしシェリルはナニか勘違いしている。
「さささ三人!?『やりやすい』って何!?
私の身体を道具として見てたの!」
魔狩人は大きくため息を吐き
「ハァー……いつもの意見が合わないやつか……
アサミ。二人で行こう。早く済ませて俺は寝たい」
…………この男は最低だ!
アサミちゃんを道具として扱っている。
だからアサミちゃんの事は心配しなかったんだ!
魔狩人の道具だから……
魔狩人が100万ルドンでアサミちゃんを買ったのは
何か誤解があるかとも思っていたが……
誤解していたのは私だった
コイツは…… 変態だ!
シェリルは少女を抱きしめ
「魔狩人……道徳心ってものはないの?」
男は少し項垂れ
「……俺だってこれが悪い事だって思ってるよ。」
良かった……一応罪悪感はあるのね。
大丈夫。私が正常な道へ戻してあげるわ
「シェリルちゃんも一緒に行こ〜。」
アサミの甘えた声での懇願
解ってるわ。アサミちゃん。お姉さん解ってる
本当はあんな事やりたく無いのよね?
アサミちゃんは私の命の恩人。
私が身体を張って……今度こそ…………
アサミちゃんを…………護る!
「…………解ったわ。準備するから待ってて」
意を決したように。2階に上がっていくシェリル。
………………
「良かったなアサミ。シェリルは酒強いらしいから
納得さえしてくれたら楽しいんじゃないか?」
「うん!ゴンちゃんも喜んでるよ!」
シェリルが去った後、他愛のない会話をする2人
…………
「お待たせ!い……いい行きましょう!
どどど何処へ行けばいいの?何処でするの?」
胸元を大きく開け 太ももにスリットの入った
妖艶な衣装を身に纏い。シェリルが降りてきた。
「シェリル……気合入ってるなぁ。
飲むのは久しぶりだったか?」
魔狩人の無神経な1言に顔を赤らめキッと睨みつけ
「ッ……初めてよ!!」
アサミを守るように抱きしめる。
三人は斡旋所を出て向かう。
思いは皆それぞれ…………
早く酒を飲みたい少女
早く帰って就寝したい男
未だ勘違いし続ける女