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GOD HAND  作者: ホムポム
第5章
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第64話 狂った記憶


「おいエリー!お前エリス.カーティスと、

家族になりたくはないか?」


スラリとした長身の20代の男が

気安くエリザベスに、声をかける。


「なりたいですけど……無理ですわよ。

あとわたくしをエリーと、呼ばないで!お兄様!」


「おぉ…怖い怖い。まぁ俺に任せておけよ!エリー。

アイツさえいれば…俺が次期国王間違い無しだ。」


エリザベスの言う事など聞かずに

兄と呼ばれた男。リチャード.ヴァイスは背を向ける。



…………


……………………


退屈な王宮。礼儀作法もまともに習わなかった

エリザベス。どうせ女王などなれない。

エリザベスはいずれ好きな人と結婚して、


この国を出て行くと決めていた。

エリスと一緒に住みたいとも思っていた。



「エリスとリア……今日も来てくれないのかしら?」

戦争は終結していた。詳しい詳細は

8歳の王女には知らされていなかったが、



武功賞の時には絶対に会えると信じていた。

「それまでは……我慢。我慢

寂しくない。寂しくない。わたくしは大丈夫!」


自らを奮い立たせ。今日も檻の中を彷徨う王女。



…………


戦争の功労者を称える式典にエリスの姿はなかった。


話しにを聞いた限りではエリスが戦争の勝利に

導いたのは間違いない筈。しかし

彼女はその場には居なかった。


それどころかどれ一人として

彼女の名前を口に出さなかった。


代わりにエリスの活躍は全て男が受け取っていた。


ドグマ.マグナス。

貴族の地位を与えられ、領地。更には

王宮専属の講師として招かれると。


男は貴族の地位には付かなかったが他は

全て賜った。エリスの功績を……



………………


「ね……ねぇ貴方。エリスは何処にいるの?」

エリスは勇気を振り絞り兵士に声をかける。

自分から名も知らぬ者に声をかけるなど

生まれて初めて。


彼女は焦っていた。言い知れぬ恐怖に



「これはこれはエリザベス王女。

……エリス?どなたでしょうか?私にはわかりません。」


「エリスは……エリスは何処に行ってしまったの?」


「……エリス?存じ上げません。」

「……誰ですかな?」



エリザベスは王宮内全ての人物に声をかける。

しかし返答は同じ。


濁りきった否定の声。闇に隠した嘘の塊。



「ドグマ.マグナス!エリスは何処!?

何故みんなエリスを知らないって言うの!?」


冷静さを忘れてエリスが信頼していた男に声をかける。

また男はエリスを崇拝していた。

この男なら……

「…………申し訳ありません。失礼致します王女様。」


濁った嘘がエリザベスを包む。

ずっと拒否していた醜い濁りが少女を侵食していく。



「マリー!マリー!貴女……エリスを……覚えてる?」


「 ? エリーお姉様。エリスってだぁれ?」

澄み切った心で答えられる。

濁りなど全くない純粋な本心。


エリザベスの理解が追いつかない。


「なんで?どうして?何故

エリス?本当にいたの?えりす?存在が嘘だとでも……」


エリザベスが寂しさから作り出した虚像だったのだろうか?

そうとしか説明が付かない。



虚像ならば彼女に会える方法はある。

自室に戻り宝石のついた短剣を抜き……


勢い良く手首を切る


鮮血がシーツを赤く染め上げベッドに倒れ伏す。

「エリス。わたくし夢を見ていたの?

だったら……夢の中に………

これが夢なら……目が覚めたら……エリスに……」



………………


…………………………



「…………!エリス!エリスは何処!?」

目が覚めると知らない部屋。

ベッドとトイレがあるだけ。


豪華な物など何も無い虚無の一室。


窓も扉もない代わりにあるのは鉄格子。


鉄格子の向こうから父親……国王が見下ろしている。

「エリザベス。エリスなど存在しない。

気が狂った御前を外に出す訳にはいかん。

それが理解出来無ければ……

お前は一生を此処で過ごしてもらう。」



「お父様!?わたくし本当に……気が触れて

しまったのですか?エリスは……この世界にいないのですか?」



国王は娘に背を向ける。小さな呟きは確かに

エリザベスへと届いた。

「……本当にすまない。早く忘れるんだ。

ワシも、そんなお前を見たくない。」




ーーーー


エリザベス.ヴァイスが牢獄から解放されるのに

5年の歳月を費やす。


漫然と過ごしてきた訳では無い。

牢屋は王宮内の何処よりも不自由で……同時に自由だった。


彼女は書物を読み漁る。蝋燭の火を消す事は無く

慰み物の本を時間を忘れたように読み漁った。



「何処かに……エリスが消えた謎が…………

わたくしは気が触れてなどいない!絶対にいた!

皆が嘘をついている。エリスは……嵌められたんだ!

わたくしが助ける!」



たった1つの思いが少女に執念の炎を宿す。


彼女にとって牢屋からの解放は

自身への誓いの瞬間。何時でも出れた。

しかし力が足りなかった。子供だったから

相手にされなかった。



力は今も尚足りない。足りている物などない。

それでも、誰にも邪魔はさせない!





神歴 860年。


何気無く興味を示した人形から。


その名前が出てくる。〈エリス.カーティス〉


最後にエリスと一緒にいた亜人。

エリスはその亜人(むすめ)が母と呼んでくれない事を

寂しがっていた。


それをエリザベスは亜人(ゆうじん)に伝えた。

彼女は恥ずかしそうに、とても嬉しそうに

顔を赤らめた。


そう……名前を憶えてる。

亜人の名前。エリザベスの初めて出来た、年の近い友人。

リア  リア.カーティス。


彼女は絶対に知っている。

エリスの事を……これでダメなら……

それでもエリザベス.ヴァイスは諦めない。


エリス.カーティスを探し続ける。



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