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GOD HAND  作者: ホムポム
第1章
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第6話 魔を狩る者

「ねぇねぇ〜何処に遊びに行くの?」

少女は無邪気にシェリルの後を付いて行く


「もう少し歩くけどそこに洞窟があるの

洞窟には面白い物が沢山あるのよ。」


シェリルは罪悪感に苛まれながらも

アサミと洞窟を目指す。別に捨てに行く訳ではない。

ただ少しだけ……ほんの少しだけ魔狩人と

一緒にいる事は危険だと、理解させてあげるだけだ。


私達と少女では、住んでいる領域が違う。

それを言葉で教えるよりも

早く理解してもらう。心で……



「魔狩人……怒るかな?」

勝手に少女を危険な目に合わせようとしているのだ。

でも、これもシェリルなりの優しさだ。

いつか本当に危険な目に合う前に……

そう自分に言い聞かせる。



3時間程歩いた場所に、洞窟が見える

中は光が届く事は無く奥行きも解らない。

しかし確実に感じる。生物の気配。



「ここよ。少しだけ中に入ってみる?

怖かったら止めてもいいのよ?」


アサミは洞窟の入り口で目を凝らし

「ん〜〜…………5人。」

「え?」


「中に5人。人が居るよ」


「ほ 本当に!?ちょっと待って。神様に聞いて……」

シェリルは手を組み瞳を閉じようとするが


「…………」

こんな少女に分かる訳がない。

洞窟内は入り組んでいる。

確かにこの洞窟で行方不明は出ているが、

最新の依頼では全員死亡の報告だった。



そもそも、この少女は年齢からして嘘付きだ。

人が居るのも出鱈目に決まっている。

信じようとしてしまった自分に腹が立ってきた。

何よりこの少女に…………

魔狩人が気にかけるこの少女が……



「アサミちゃん!一緒に行きましょ。

危なくなったらお姉さんが守ってあげる。」


シェリルはアサミに手を差し出す

その手を何の疑問も持たずに

「ありがとう!代わりにシェリルちゃんは

アサミが守ってあげるね!」



…………


……………………




少女の手を握りながら、空いた片手で指に火を灯す

神術。それも1番簡単な火神様の力を借りる


少女はシェリルの手を握りながら

もう片手で顔を隠している。この先を見ないように



シェリルは笑いながら少女に問う

「どうしたのアサミちゃん?怖いの?

でも魔狩人もこんな所ばかりいるのよ」



アサミはシェリルの手を払い洞窟の隅へ移動し

「あたしはアレを見ちゃダメなの……」

両手で顔を覆ってしまった





ーーーーーーーー


ここに来てようやく私は自身の過ちに気付く。

私は何をやっているのだろう?


この子は小さいのに……私が危険な場所に連れ出して

怯えている。震えている。

心の何処かで彼が連れてきたのだから

この子に何か有るのかとも思っていたのか?



有ったのは……私の卑しい心だけだった。

        醜い心だけだった



すぐさま少女に駆け寄り

「ごめんね。アサミちゃん!直ぐに出よ。

ほら。お姉さんが付いてるから怖くないわよ」


必死に少女の不安を拭おうと試みるが

「…………来たよ。」


少女は暗闇を指差しその方向に火を向ける




子供のような風貌

痩せこけた体にポコンと出た腹

手には木の棍棒を握り締め

それらは数をなして近づいて来る


     餓鬼だ


   更にその奥



体長3メートルを越す人型。

暗緑色の皮膚を身に纏い。

歪な爪は様々な雑菌を保有する

大型獣の牙を持つ怪物(モンスター)


     大鬼



大鬼……資料には確認できてなかったけど……


「大丈夫よ……怖がらないで!お姉さん。強いから」

シェリルは瞳を閉じ……神に祈る



偉大なる万物の父よ

偉大なる世界の父よ


その力を持ちて邪悪なる物を砕かん


  「大地津波(グランドウェイブ)



ドド トトド


洞窟内の小石が鬼達に向けて迫り行く

しかしそれは餓鬼を僅かに退かせた程度。

大鬼に至っては一歩も後退していない



「な……なんで!?」  

神術の威力が弱すぎる。

いくら何でもおかしい…………


シェリルは咄嗟に少女に振り返る

顔を覆ったアサミを見つめる



祈りの時間が短かったのもある……


それ以上に……私が少女を貶めようとした……罰

    神からの天罰



顔を覆った少女の肩を掴み

「アサミちゃん!外まで走れる?

外に行けば怪物達は追って来ない筈だから!!」


追って来ない筈がない。

女の獲物が2人も居るのだ。

最悪大人の女だけでも逃しはしないだろう


シェリルはアサミの背中を強く押し

「走って!アサミちゃん!」


「……うん!」

顔を覆ったまま少女は暗闇をかけていった。



少女に背を向けるように……少しでも時間を稼げるように

せめて私の仕出かした報いは……私だけが受けるべきだ


「此処から先は……通さない」

とでもか細い声



足が(すく)む。怪物達の表情も解らない。

きっと震える私を見て嘲笑(あざわら)っているのだろう


指先の火は消え。私にはもう何もない。

あの子……アサミちゃんだけが無事なら構わない。

あの子が洞窟から出るまでは……絶対に死なない!



シェリルなりの覚悟と決意




しかしその思いは無残にも打ち砕かれる



ダダダダ


土煙を上げながら誰かがシェリルに話しかける

「外まで行って戻って来たよ〜!」


     「え?」


この子はバカだ。どうしようも無い程の大馬鹿



そんな事も解らずに少女は

「ごめんね。シェリルちゃん。

ゴンちゃん、別に島の外の怪物に興味無いみたい」




少女はゆっくりと怪物達に向き直り


   「あたしが守ってあげるからね〜」

絶対的事実を告げる


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