表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GOD HAND  作者: ホムポム
第7章  愛しの我が子へ
123/184

第123話  深淵なる悪意


月が南の王国を妖しく包む。

殆どの竜人達は寝静まり、

未だ意識を覚醒させているのは見張りの兵と……


「…………。」


玉座で頬杖をつく竜王フェイラー。

4人の近衛兵に一切の隙を見せずに思案にくれている。


龍神の降臨。彼には全てを賭して捧げる責務がある。

国民にも同じ責務がある。

龍神の為に存在し龍神と共に滅びる。

それが竜人族の誇り。


しかし……龍神の中に存在するもう一つの魂。

フェイラーは小さな舌打ちを鳴らす。


「雄々しき我らの神…龍神様が……あ

のような小娘……寄りにも寄って人間……忌々しい。」


再び姿を現した龍神は完全な龍神ではない。

フェイラーが忠義を尽くすのはあくまで龍神。

紅い髪の少女ではない。


「我の半身が気に食わんカ?」


突然の声にフェイラーは玉座を立つ

「龍神様!?」


「質問は我がしておル。我半身……忌々しいカ?」


目の前の陽炎が如実に形を作り出す。

紅い髪をなびかせた龍神が

フェイラーの目の前に立っていた。

誰も気づかぬ間に。


「も……申し訳ありません!憎み続けた存在。

人間までも崇めよ……と言うのは……多少厳しく……。」


「誰が崇めよと申しタ?勘違いするなヨ。

我も半身も崇める必要などなイ。

貴様達が勝手に崇め始めただケ。

我はその忠義に僅かばかりの力を与えタ。

気まぐれでナ」


龍神はその場に座り込み

跪く近衛竜人族と目線を合わせ。


「さテ……どうしたものカ……」


龍神は指で兵士の顔を合わせるあげさせる。

抵抗出来ない兵士はゆっくりと龍神と顔を合わせる。


龍神は近衛兵達に膝を崩させる。

あくまで対等に平等に同じ高さ。


「我の血を受けた末裔達ヨ。

真に崇めるべきは龍ではなイ。

神ではなイ。己が誇りを崇めヨ。」


龍神は立ち上がり立ち尽くすフェイラーに囁く。


「……貴様達が欲する手土産と共に戻ル。

半身の望みを叶える事……常々忘れるなヨ。」


…………

……………………


「龍神様トイレ長かったッスね。ウンウンッスか?」


「……貴様と違い口から排泄物など出せぬのでナ。

何処まで進化するのやラ。」


龍神が部屋に戻るとご機嫌に珈琲を啜るニーチェ。

彼女も夜を徹して龍神の世話の為に起き続ける者。


「うっわ〜。

龍神様の中でのあっしはどんな化物ッスか?

ウンウン出した口で、ご飯さんを食べちゃうとか

考えられないですです!そんな進化お断りですです!」


自分の発言に身震いしながらも

ニーチェはふと思い出したように……


「龍神様ぁ。失礼な事聞いてイイッスか?

いや……眠いならいいんスけどけど。

ふと思い出しただけなんでなんで。」


アヒル座りの体勢から身を縮こませた龍神が

顔だけをニーチェに向けた。


「吐けば礼の欠片も見当たらん貴様が

失礼を口にするとは余程だナ。面白イ。言ってみロ」


「……龍神様も乙女に対する態度じゃねッスからねらね。

……んと。龍神様の経典って知ってます?

アレってどれぐらい本当なんスか?」


南の国の聖典。龍神の歴史がまことしやかに

書き記された国民普及率90%を超える書物。

もっとも南の国での識字率は20%を下回っているので

殆どの国民は暗記している。


「…………読んだ事がないのでなんとも言えんナ。

そもそも我は貴様等の造った文字は読めン。」


龍であった時代に

龍に読ませる書物など存在する訳がない。

どれ程大きな石版を用意しなければならないのか。


またアサミも簡単な文字を読める程度。

父親とジェシカに覚えた方が良いと勧められていたが。

結局あまり必要と感じなかったので

積極的に勉学に励まなかった。


「へぇ〜……なんか意外ッスね……。えぇっと、

掻い摘むと爪は何でも斬れるし。

牙は何でも砕けるし。角は何でも出来るし。

翼は何処までも飛べるし血は何でも治すし

……とか書いてたっス。」


龍神は身体を軋ませながら体勢を起こす。

大きなアクビをしながら


「呆れた書物ヨ。時代を重ね誇張され続けた結果。

今の我が存在する訳カ。

そのような事が出来るのであれば

貴様の弟ぐらいは治しておるワ。」


不意を付かれたニーチェはドキリと、身を硬くした。


「龍神様もノアの事を気に掛けてくれてるッスか?」


「……我の半身ダ。我からすれば世界の理。

なるようにしかならン。」


「……でも嬉しいッス!あっしとジャムおじ以外にもノアの事を心配してくれる人がいてくれて!」


ニーチェは屈託のない笑顔を龍神に向ける。


「……本題を言エ。」


顔を背けながら龍神は先を促す。これまでの言動は失礼な事は言っていない。少なくとも今までよりは。


「龍神様が照れてるッス!可愛い〜ッス!よし!

この空気なら大丈夫そうですです!

あのですねですね!」



ニーチェは少しモジモジしながら指遊びをしつつ




「龍神様のウンウンって……どんな効果なんスか?

聖典にも不明としか書かれてないんスよ。」




「……ゲロ娘………礼を逸脱し過ぎダ。」

龍神はニーチェの問いには答えず身体を縮こまらせた。


「龍神様ぁ〜……あっしの予想だと食べちゃうッスよ!

一人永久機関ッスね!

どうスか?あっしの予想を超えた確信!

違うかどうか、だけでもでも。」


つらつらと喋るニーチェに呆れ返りながら

重ねた両手を顎に乗せ眠りについた。


尚もニーチェは質問し続ける。

一度聞いたからには何らかの成果がほしいのだ。

沈黙を護る龍神。沈黙を崩そうとするニーチェ。



「………………ひょっとして本当に食べちゃうんスか!?

ゲロゲロ……龍神様不潔ッス!」


「   寝ロ!!   」


龍神が放った叫びにより

王国の一室は荒れ果て、

土埃を吸い込んだニーチェは咳き込みながら

己の過ちを


「ケホケホ……『言ってみろ』って言ったからから……

あっしは悪くないッス……

龍神様はきっと便秘ですです。」


己の過ちを認める事なく夜が更けていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ