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GOD HAND  作者: ホムポム
第7章  愛しの我が子へ
122/184

第122話 きょうだい


「ほら……今日は特別に龍神様が来てくれたんッスよ。

ノアは前に龍神様に会いたいって

言ってたじゃないッスか!

お姉ちゃんに恥かかせちゃ…………」


ニーチェの笑顔が消えポタポタと、瞳から雫が落ちる。

目の前にいるのは紛れもない怪物。

ニーチェの声など聴こえてはいない。

あるのは憎悪。嫌悪。邪悪の塊。



「……ノア。お姉ちゃん……頑張ってるからね。」


『ァァアアアァァァ!!』


ニーチェに向かい歪な拳を振り下ろす怪物。

怪物には透明な壁が見えてはいない。

怪物の目に映るのは獲物である亜人と人間だけ。

声も涙も届いていない。


「大丈夫。大丈夫だよ。お姉ちゃんここにいるから。

落ち着いてノア。お姉ちゃんどこにも行かないから。」


今までのニーチェとは明らかに違う。

飄々としたニーチェは其処にはなく。

怪物に向かい弟の名を愛おしく呼ぶ狂った姿。

その姿にアサミは呆然としていた。



この場所に来るまでに説明は受けていた。

ニーチェの弟。

魔法使いに憧れ育ての親であり魔法使いでもある

ジャムに師事。


ノアはより大きな力を欲し、上位悪魔を呼び寄せた。

ただ弟に目をつけた悪魔が悪かった。

ノアは力の代償に形を変えられ。言葉を失い。

変貌させられた。

自身よりも遥かに力ある怪物へと。


この場所にいるのはノア.ランカスターの残骸。


本来ならば殺される筈が

彼の所属する隊長は悲運な事に優秀だった。

姉弟の保護者であるジャムは悲運な事に有能だった。


二人の必死の嘆願の果てに今のノアがある。

二人の願いがノアを生かし続け。

ジャム。ニーチェ。ノアの三人を絶望させ続けている。


ニーチェの必死の呼び掛けに全く応じない怪物。

その光景。アサミは目を背けたくなる。


ーーーー

『アサミ!島の外は危険だから……

お願いだからお姉ちゃんの言う事を聞いて』


「あたしは大丈夫だよ!やりたい事があるの!」


ーーーー


一瞬の記憶がアサミの脳に焼き付く。

「お姉ちゃん……お姉ちゃんもあたしの事……。

ゴンちゃん……右目貸して…………うん。

あたしがやるから。あたしがやりたいの。」


アサミが透明な壁へと近付き左目を閉じ、

魔眼をもって怪物を睨みつける。


『………………ガ……ア……。』


「……ノア?どうしたの??」


突然大人しくなった弟にニーチェは戸惑いを隠せない。

弟が怪物になってから一度として

大人しくなった事などなかった。

人を見れば唸り、襲いかかる。

怪物の本能のままに生きてきた弟が初めて。


アサミは睨み続ける。目が血走り血管が浮き出し……

プツリ……プツリと切れ始める。


口から……鼻から眼窩から。

赤い血を垂れ流しそれでも魔眼を使い続ける。


ブチリ……一本の線が引き千切られる。

瞳からは血涙が止めどなく溢れ。

瞳孔は開き切りアサミの意志とは無関係に

ゆっくりと閉じられていく。


「……ブハァ!……ハァ……ハァ……。

アンちゃん。アンちゃんはどうやって……

どうやってお話ししてたの?」


吐血した血を拭い肩で息を吐きながら

右目を抑えるアサミ。


アサミが目を逸らした事により

怪物がゆっくりと壁に手をつけ。ニーチェを見る。

瞳には狂気を感じさせない無垢な眼差し。


『……ネエ……サン……』


怪物が言語を放つ。聞き取り辛く細ボソとした言語。


「ノア!?そうだよ!お姉ちゃんだよ!」


大人しくなるばかりか言葉を発した弟に

動揺しながらも感涙の涙を流すニーチェ。


『シンパイ……カケテ……ゴメン……ナサイ……

ボクガ……ネエサン……ノ…アカ……………』


「心配って……ノアは弟なんだから

心配かけてていいのよ!

お姉ちゃんが全部なんとかしてあげるから!

だから……もうちょっとだけ……待っててね。」


『…………ネエサン…ダイス……キダヨ……』


「あ……あっ……アタシも…

……ずっとずっと大好きだよ……ノア。」


『……ゴメン……ナサ…イ……………』


………………

…………………………


「見苦しい物見せてすいませんでした。」


錆び付いた扉を閉めニーチェはアサミに頭を下げた。

結局その後。

怪物は眠りにつきニーチェは

蝋燭の火が消えるまで語り続けた。


自分が今までやってきた思い出話しを。

相槌もない。聞いている確証などない。

そんな物は今までだってなかった。


しかし今回の弟との再開は

過去のどんな面会よりも大きな意味をもった。


弟には意識がある。通じていた。

一方通行だと半ば諦めかけていた心に大炎が灯った。

意味があった。今までの行い。

すべてが報われた訳ではない。それでも……。


「龍神様……お身体は平気ッスか?

おと……あっしのせいで

お疲れになってませんですかすか?」


「ん〜。大丈夫。あたしはすぐに治っちゃうから。

それよりゴメンね。

もっと話せたら良かったのに……。」


アサミは自身の傷よりも姉弟の会話の短さを……

自身の力不足を嘆く。仮に……アサミの中にいる存在。

本物の龍が魔眼を使っていれば

何が変わったのだろうか?


それはアサミにはわからない。

龍神は自分で力を貸す気はなく。

アサミの願いだから仕方無しに魔眼を貸し与えた。

ニーチェが今後どれ程懇願しても龍神自身が

ノアに魔眼を使う事はない。


「ニーチェちゃん……悪魔って……悪い人なの?」


軽々しく力を欲したノアに対する罰なのか。

その罰は重きは誰が決めるのか。

悪魔の法によって罰したのか……それとも


「……ジャムおじ曰く……ピンキリらしいですです。

第九位のファティマ.ヴァイスなんかは

魔法使いに優しい事で有名らしいですしすし。

第八位のアグニス.ヒュームも俗物的な所があって

基本無害らしいですです。……でも。」


ニーチェは言葉を切った。


「あたしのーーーー。

弟を……ノアを怪物にした第四位……

トルコマン.キリング……アイツは……

その種族の名前通り悪魔です。」


それとも……悪魔の暇潰し程度だったのだろうか。

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