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蛇足の話:飲み会編 03 「キキさんの計画」

投稿済みの本編では、キリっとしたクールビューティで、仕事に対して真面目で非常に有能だったキキさん。後日談の章に入って以来なにかとポンコツっぽく……。

彼女……リーダーに忠誠を誓い、パーティの運営に力を注いでいたので割とプライベートでの対人スキルが育っていなかったという……。

01.モコの内心


 まぁ……男っ気のないパーティだったとは言いましたけどぉ……。

 と、モコは、キキさんと話しながらも内心では別の事を考えていた。


 私、キキ先輩と違って、独り旅の途中で色々と恋愛経験も積みましたし、男女の仲を取り持った事も少なからずあるんですけどねぇ。キキ先輩はパーティ以外の人との付き合いには消極的でしたけど、私はむしろ様々な人間模様に興味を持っていましたし。ルサ先輩の事も多分、キキ先輩に任せるよりは、私のほうがずっと上手くやれるとは思うんですよねぇ。

 とは言え、愛という感情を研究する身として、ここはでしゃばるべきではないでしょうね。この手の問題に不慣れなキキ先輩がどういう行動に出るか。それを見るほうが研究の役に立ちそうな気がします。

 まぁ、この問題に関しては人嫌いのキキ先輩では大したことは出来ないでしょうから、最終的には私が主導権を握ることになるでしょうけど。

 それでも先輩を立てるという意味も込めて、最初はお手並み拝見と行きましょうねぇ。


 そんな内心はおくびにも出さず、モコはキキさんに聞いてみた。

「キキ先輩は、お二人の仲を接近させる手段として、具体的にはどういう事を考えていますぅ?」

 キキさんは、後輩が何を考えているかなど察する事は出来ずに、顎に手を当てて考えながら答えた。

「……まずは、まあ正攻法で行くべきでしょうね」

「正攻法?」

「男女の仲を深めるとしたら、やはり初手はデートでしょう」

「……まぁ確かに正攻法ですぅ。……でもルサ先輩があの状態では、ゲーエルーさんと二人っきりの状況にしたとしてもあまり意味がないのでは……? ゲーエルーさんも年上の男性として適切な距離を保つでしょうし。まぁ彼がそういう性格だからこそ、私達もルサ先輩を任せてもいいと思ったわけですがぁ……」

「確かに、いきなり二人きりにして仲を進めさせるのは、状況をセッティングするのも含めて難しいでしょうね」

 モコのツッコミに、キキさんは頷く。

「ですので、わたくしに考えがあります」

 妙に自身ありげに答えるキキさんに、モコは無言で、ただ表面上はにこやかな顔を返した。




02‥キキさんの計画


「キキさんの考えって?」

 興味津々と言った感じで、ハクが質問する。

「二人っきりにするのが難しいならば、他の人間も交えてのデートをするのです」

「……(えぇ)……」

「つまりは、グループ交際です」

 我ながら名案……とでも言わんばかりのキキさんを見て、モコは眉をひそめた。

 ふと、クークラと目があった。

(キキさん……思春期の女学生みたいな事をいいだしたなあ……?)

(ルサ先輩もゲーエルーさんも、いい歳をした大人なんですけどぉ……)

 モコとクークラが、無言のまま目で会話する。

 その表情には、呆れと失望の色があった。

(これは……思った以上にダメダメですねぇ。出来るヒトではありましたが、しかし仕事一筋だったせいで、男女関係……いえ、プライベートな人間関係をあまり顧みないで生きて来てましたからねぇキキ先輩……)

 モコが思わず首を振る。


 クークラも、小さくため息をついていた。


 後輩と弟子から評価を下げられている事になど全く気づかず、キキさんは更に思いつきを口にする。

「もちろん、ルサ先輩やゲーエルーさんはもちろん、わたくし達もいい歳をした大人。何よりも男性が一人しか居ない以上、まともな形でのグループ交際など出来ません」

 お? と、モコがキキさんの方を見直した。

 人間関係の構築の仕方には難があれど、これでかなり頭もよく、優秀な先輩だ。自分やクークラが考えるような問題点にはちゃんと思い至っていたらしい。何か対応策があるのだろうか?

 そんなモコの視線にも気づかず、キキさんは宣言した。


「大人には大人なりの、仲を深める方法があります」




03.ハクの期待


(大人には大人なりの……。あぁ、昔っからキキ先輩がよくやっていたやつですねぇ……。本当に、対人スキルの引き出しが少ないヒト……)

 キキさんの言葉を聞いて、モコは彼女の次の句を予想した。


 失望するモコを尻目に、逆にハクは目を輝かせた。

「大人なりの仲の深め方。……つまりはアレですね」

(……あのですねぇ、ハクちゃん……)

「ええ。よくわかりましたねハク。そう、アレです」

 ハクの言葉を受け、キキさんは満面の笑みを浮かべた。

(キキ先輩……どうせ飲みニケーションでしょう?)

(ああ、そう言えばハクにお酒の味を教えたのはキキさんなんだっけ……)

「つまり、お酒ですね♪」

「そうです。お酒です」

 モコとクークラの内心と、ハクとキキさんの言葉が見事に重なった。

「でも、せっかくのグループ交際ですし、宅飲みよりもどこか外で飲みたいですね」

 ハクの目がキラキラしている。自分も参加すると、既に心に決めているようだ。

「ええ。実はいいお店を知っています」

「さすがキキさんです♪」

「古くから、カニエーツの街でBARを営んでいるマスターがいるんですよ。私もしばしば行くのですが。……そもそも砦跡のバイトもそのマスターの斡旋だったのです。縁を取り持ってくれた人ですし、ハクも一度は顔を出しておくべきでしょうね」




04.クークラの想い


 クークラは、はしゃぐ保護者と魔術の師匠を、醒めた目で見ていた。

(うーん……飲み会かぁ……。まあボクは未成年な上に病弱だったディエヴァチカの身体だし、お酒は飲めないから、今回はパスかな)


 呆れを表情には出さないようにして、横目でちらりとモコを見る。

 モコは腕を組みながら微笑んでいたが、その目にはクークラと同種の醒めた光があった。


 クークラの視線に気づいたモコが、少し身を寄せてくる。

「あの……」

 クークラが話しかけようとしたが、しかしモコはそれを遮るように軽く唇に人差し指を当てて、肩をすくめた。

(みなまで言うな)

(あ……はい)

 アイコンタクトを交わして、二人で軽く頭を振る。


 とりあえず、モコ先生も不参加……かな? と、クークラは思った。そう言えば、一緒に旅をしていたときもモコ先生はお酒は嗜む程度にしか飲んでいなかったっけ。

 むしろ、飲んでいるハクやゲーエルーさんの観察をしていたようだったけど。


 まあ、でも。

 飲み会自体は悪くないのかもしれない。ハクはともかく、キキさんもゲーエルーさんもお酒の飲み方を知っている大人だし、それは多分、ルサ姐もそうだろう。年長組二人の仲を男女のそれにできるかどうかはともかく、悪くなってしまうようなことはないと思う。 


 キキさんに砦跡のアルバイトを紹介したマスターという人にも多少は興味がある。飲み会が終わったら、どういう人なのかハクに聞いてみよう。


 それんしても。

 なんか、キキさん、目的が替わってない? 


 確かに興味はあるが、しかしBARのマスターとハクやゲーエルーさんを会わせるというのは、グループ交際……いや、多分ただの飲み会になるだろうけど、ともかく二人の仲を取り持つという目的とはまったく関係ないと思うのだけど……。




05.様々な思惑


 目的が入れ替わっているのではないだろうか……。

 というクークラの考察は、さほど間違ってはいなかった。正確に言うと、目的が混ざっていたのだ。


 キキさんには、ハクたちがこの館にいる間にやっておきたいと考えている事が幾つかあった。その一つが「ハクとゲーエルーをBARブレイブハートのマスターとの引き合わせ」だった。そしてそれとルサのグループ交際を同時に進められないかと考えたのである。


 合理主義者である彼女らしい思惑ではあった。


 ブレイブハートのマスターは、氷の種族との戦争に深く関わった過去があるらしい。その縁で国教会とのパイプを持ち、砦跡のアルバイトを斡旋してくれた。

 また敵であるはずのハクやゲーエルーに関してマスター本人が懐かしそうに語っていた事もあった。少なくとも氷の種族に対する敵対心は感じられなかった。

 もちろん、事前にハクやゲーエルーにその事を伝えて許可を取る必要はある。

 が、ゲーエルーもカラっとした性格だし、終戦から随分と時間も過ぎた。ゲーエルーはかつての敵に対しても恨みつらみを募らせる性格ではなく、むしろ昔話に花を咲かせられるタイプではないかと、キキさんは思っていた。


 もっとも、もしもモコがキキさんの内心を知ったら、クークラが心配するまでもなく、厳しく反対しただろう。


 それはそれ。これはこれ。

 二兎追うものは一兎も得ず。

 他人の色粉沙汰に口を出すのには、それ相応の覚悟が必要ですよキキ先輩。少なくとも、他の事と同時進行なんて先輩には難度が高すぎます。どちらかに集中したほうが良いでしょうね。


 とは言え。

 モコはゆったりと構えている。

 ルサとゲーエルーの仲を取り持つにしても、別に時間的余裕が無いわけではない。キキさんが提案するグループ交際も飲み会も目に見える効果はないだろうが、それでも少しづつ距離を近づけさせる事自体は悪くはない。

 慌てる必要はないのだ。


 そんな元冒険者二人の思惑とは別に。

 ハクは、お酒の事を考えていた。

 ルサとゲーエルーの仲を進めるのには賛成だし、その手伝いが出来るのであれば喜んで協力もしよう。だがそれ以上に、キキさんがお薦めするBARというのは気になった。

 砦跡を出て、狭い範囲ながらもここまで旅をして。

 ハクは、世界には思っていたよりも遥かに多くの酒があることを知った。

 出来るだけたくさんのお酒を味わいたい。……それは密かな旅の目的の一つでもあったのだ。


 大人たちを見ながら、クークラは思った。

 まあ、ボクもお酒に興味が無いわけじゃないけど、ハクには成人するまで待てって言われているから、あと5~60年(クークラの時間感覚からすると五~六年程度……ただしクークラには他の生き物のような寿命はなく、これは育ての親であるハクの時間感覚に準じている)は我慢しようかな。

 特に今は、この身体には無理をさせられないし。


 それにしても。

 ハクがお酒を飲むのは楽しそうだから別にいいけど。でも飲みすぎるとやたらと抱きついてくるようになるから、程々にしてほしいんだよなぁ……。

 様々な思惑が絡まり、夜は更けていく。


 そして結局。


「飲み会を開くので参加しないか」とルサとゲーエルーに打診する……という事だけが決定されたのだった。

次回


蛇足の話:飲み会編 04「居残り組」

「飲み会編」の前段になる話は次回で終わり。来週からは「飲み会」が始まります。


更新は2023年6月15日(木)を予定しています。

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