第四話 第四章 「ハクの旅立ち」
クーデターによって国が倒れた。
その報を持ってきたゲーエルー。
そして、そこに現れた傷を追ったスヴェシ。
スヴェシがやってきた理由は、「魔王の娘」を担当するラビリンリェス地区の主教として、最後の仕事をするため。
かつて、本名を封じられハクの名前を勇者に与えられた魔王の娘。
その真の名前を、彼女は取り戻します。
そして。
キキさんは禍々しい「禁呪」としてのアニメートを使用する決意を……。
01.
「……あんたがレビリンリェス地区の主教スヴェシか?」
ゲーエルーは突如現れた老人を見た。
「……貴様は……」
砦跡の住人以外の男性、それも氷の種族がいたことに、スヴェシは少なからず驚いたようだった。しかし冷静さは失わず、スヴェシはゲーエルーを観察した。
「その風貌……そうか、魔王の護衛官ゲーエルーだな。こんなところで出くわすとは……」
「ほう? 俺のことを知っているのか?」
「ある程度以上の地位にある神品(聖職者)ならば、誰でも分かるはずだ」
「まぁ確かに、そっちの刺客をまきながら逃げ続けているからな」
「それもあるが……勇者様の言語録に、ゲーエルーさえ居なければ、戦争はカニエーツの戦いで終わっていたと記されているのでな」
「カニエーツじゃ、オレは姉御を逃すために時間を稼ぐのが精一杯だったが? それにしても、奴がそんなことを言っていたとは初耳だ」
「戦史書と矛盾するため、秘匿された文書となった。ある程度以上の神品でなければ、閲覧どころか文書の存在すら知らされておらん」
「そんなことより!」
男性二人の会話に、ハクが割って入った。
「傷の手当を! このままでは……!」
ハクは血を流すスヴェシに駆け寄る。
しかし、その傷は深かった。
「嬢ちゃん……その男はもう……」
「ハク様。……大変申し上げ難いのですが、すでに手遅れでしょう。スヴェシ……様はあとは死を待つのみの状態に見受けられます」
「そんな……」
スヴェシは、負った傷が致命傷である事を把握していたのだろう。二人の言葉に落胆することもなく、ただ身体を支えきれなくなってその場に座り込んだ。
「スヴェシ様……何があったのです?」
「クーデターへの賛同を表明した。お陰で反クーデターの旗幟を鮮明にしたオブラスト方面軍に攻められた」
スヴェシは大きくため息を付き、誰に言うでもなく語り始めた。
「私も老いた。人生の最期に、欲しかったものを手に入れようと総主教に加担したが……欲を出すものではないな。クーデターが成功した際の報酬として頂こうと思っていたが、結果はこれだ」
「クーデターに関わっていたのですか……」
「発端はあくまで若い総主教の狂信的な野心と、軍の不満。あるいはそれを呼び起こした政治家や王族の腐敗だ。まぁ私も多少は煽ったがな」
事もなげに言うスヴェシに対して、キキさんが聞いた。
「貴方ほどの方が、そこまでして欲しかったものとは?」
「なに、単なる宝石よ。他の人間からしたら、なぜそこまで拘ったのかわからないだろうな」
スヴェシは自嘲気味に嗤った。
「そんなことより、なんでここに来たのさ」
スヴェシの事が嫌いなクークラが、不機嫌そうに言った。
「主教ならばそれらしく、信者たちに説教でも垂れながら死ねばいいのに」
全員の眼がクークラに注がれる。
「クークラ!」
叱るハクを片手を上げて制し、スヴェシはクークラに対して言った。
「そちらの仕事はすでに終わらせてきた、魔導生物。我が主教府の神品たちは投降させ、方面軍司令部には住民保護の約束を取り付けておる。山河の義勇軍の幹部も居たが、意外と話のわかる奴らで助かったわ。流石に私は許されなかったので、命からがら逃げてきたが……」
スヴェシは少し自嘲すると、表情を改めた。
「ともあれ私の最後の仕事は、ここが舞台なのだ」
呼吸も苦しそうになってきたスヴェシが、最後の力を振り絞って立ち上がり、ハクに向き合った。
「ミティシェーリ。吹雪を意味する名の魔王。その娘であり、勇者様よりハクの名を与えられたモノに対し、担当主教に任ぜられた最後の仕事を果たしに来た」
一息だけついて、スヴェシは朗々とした声を取り戻して続けた。
「ハクよ。ハクよ。心して聞け」
02.
「下の大地に死と混乱の風雪をもたらしたミティシェーリ。その再来を防ぐため、我々はその娘を拘束し、自由を奪った。だが、決して殺すことはなかった」
瀕死のスヴェシは、しかし朗々と声を響かせ、最後の説教を始めた。
「そなたを活かしたのは勇者様の慈悲であり、英断であった。怒りと復讐に飲まれること無く、命じられた誇り高い仕事を、我々は果たしてきた」
クークラは何か言いたそうに眉を釣り上げたが、スヴェシの声には口を挟ませない迫力がある。
「だが魔王の娘よ」
スヴェシはハクの頭に右手を載せて続ける。
「時が経ち、我ら国教会は力を失った。その身を束縛するものは消えた。そなた……いや、貴女は、もはや我々の言葉に縛られる必要はない。自由を得たのだ」
命の最後の炎を燃やし尽くしたかのように、スヴェシは再び身体を支える力を失い、倒れそうになった。
ハクが、もたれかかってきた老人の身体を抱きとめ、ゆっくりと床に座らせた。
「貴女の冬は終わった。風雪の時を耐えた雪割草よ。自由に花を咲かせるがいい」
ハクは右の人差し指で涙を拭い、スヴェシの言葉に答えた。
「貴方にしては珍しく、随分と詩的な表現ですね。いつもの説教は、もっと直接的な言葉を使われていたのに」
ハクの言葉を聞いたゲーエルーが、意外そうな表情を見せ、そして肩をがっくりと落とした。
「嬢ちゃん……忘れたのか……」
しかしゲーエルーが言い終わる前に、スヴェシは再び目を見開いた。
「貴女はそれすら忘れてしまったのか!」
屈みこむハクの肩を右手でつかみ、半身を起こす。
「え?」
「ミティシェーリ(吹雪)の娘、プリームラ(雪割草)」
スヴェシは大きく息を吐いた。
「それが貴女の本当の名前だ。勇者様が与えられたハクの名を名乗る必要すら、すでに無いのだ」
スヴェシの手がハクの肩から滑り落ち、その身体を床に伏せた。
「名をお返しする。それが私の、最後の仕事だ」
スヴェシの全身から力が抜けていく。
目をつぶり沈黙したスヴェシに、突如キキさんが駆け寄った。
「スヴェシ、時間がないから手早く答えなさい。貴方は死後、どうされたい?」
「……この砦跡の片隅に……無銘の墓石でも立てて貰えれば、それ以上のことはない……」
か細く消えていくスヴェシの言葉に、ハクが頷こうとした時、クークラが怒声を上げた。
「なんでここに!? ここはハクのお母さんとその仲間たちの墓標だ! お前の入る余地なんて無い!」
「……聞かれたから答えたまで……。私はお前たちの敵だ、魔導生物。敵の亡骸など、どう扱おうとそちらの勝手……」
「では。勝手にさせてもらいましょう」
キキさんが死にかけているスヴェシを挟んで、ハクに向き合った。
「ハク様!」
「は……はい!」
「わたくしは考えておりました。やはり貴女は一度ここを離れ、世界を見る旅をするべきです。冗談でも、ましてや逃げなどではなく、自らの意志で」
キキさんの言葉に、ハクはハッとした。
「確かに、ここに縛られる必要がなくなった以上、私は外の世界を見てみたい。クークラにも、見せてあげたい」
「されど、人には帰る場所が必要。貴女の帰る場所は、ここをおいて他にはありますまい。しかし、人の手がなければ、この砦跡は廃れていくでしょう」
「……では……キキさん、引き続きここの管理を……」
ハクの提案に、しかしキキさんは首を振った。
「わたくしの雇い主は、ハク様御自身ではなく、国教会でした。ですが、それはすでに分裂し、力を失ってしまったようです」
残念そうな顔をするハクに対し、キキさんは言葉を重ねた。
「わたくしが力になれるのはここまで。しかし……」
「しかし?」
「ここに、そろそろ死ぬであろう、敵の身体があります」
03.
キキさんの言葉に、ハクは混乱した。
「え? ……それはどういう意味……?」
二人の会話に、クークラが割って入って、キキさんの代わりに答えた。
「スヴェシの死体にアニメートをかけて、ハウスキーピングの仕事をさせるってことだよね、キキさん。……でも、ボクは反対だ!」
「クークラ……」
「ハクを苦しめた奴の死体に、この砦跡を歩きまわってほしくない!」
「クークラさん。わたくしはハク様に聞いております。また、ことの決定権を持っているのもハク様です」
キキさんはクークラの眼を見て言った。
不満を隠さないクークラの肩に軽く触れてから、キキさんはハクに問いかけた。
「ハク様。クークラさんの意見も含め、貴女はどうお考えに? 時間がありません。即答をお願いします」
ハクは一瞬だけ考えるような表情をした後、床に倒れ伏しているスヴェシに近づき、かがみこんで耳打ちした。
「(もしもキキさんの意見を受け入れるのであれば、貴方は長い時を奴隷として過ごすことになるでしょう。ただしその場合は、砦跡に残して行く氷結晶の管理も任せることになります)」
他の三人には聞き取れないくらいの小声で、ハクは囁く。
ほとんど意識のないスヴェシの顔に浮かんだ表情を、ハクは確認し、立ち上がった。
そして、確信のある口調で宣言した。
「キキさんの意見を受け入れ、スヴェシさんの亡骸を利用してこの砦跡の管理を任せます」
クークラは顔をしかめたが、しかしハクの言葉に嫌だとは言わない。
「ハクがそう考えるのであれば、ボクは従う。でも、ならばせめてそのアニメートはボクにかけさせて欲しい。最近になってわかったんだ。自分のアニメートの術は、キキさんのそれをすでに凌いだ。今のボクならば、キキさん以上に上手く、アニメートをかけられる」
その言葉を聞いて、キキさんは笑顔を浮かべてクークラを手招きした。
「なんです? ……痛いッ!」
近づいてきたクークラの額を、キキさんは中指で弾いた。
おでこを両手で押さえて痛がるクークラに、キキさんは言った。
「生意気をいいなさんな。貴方の術が私を上回ったのなど、もう10年も前の話です。今更になって気づくなど、それ自体が未熟の証。……それに、クークラさん、分かっているのでしょう?」
「……このアニメートの使い方は……死体を用い、生と死の境目を曖昧にする……禁術です」
「正解。いえ、あるいはそれ以上に悪い。若くして主教を務めたほどの人物に、尊厳ある死を許さず、その亡骸を奴隷へと貶める、いわば呪いの類です。道を踏み外したヴァーディマが用いたものと同質のもの」
キキさんは、クークラを見据えた。
「そんな汚れ仕事はね……」
長身のキキさんは、しゃがんでクークラと目線を合わせ、その額に手を当て、撫でる。そして肩を抱き、はっきりと目を見て言った。
「そんな汚れ仕事は、大人に任せておきなさい」
クークラを離すと、キキさんはゲーエルーに目配せした。
ゲーエルーは無言でうなずいて、引き寄せてあった長剣を抜く。
鞘走りの音を聞いて、ハクが身をすくめた。
キキさんは、死を間近に控えた眠りの中に居るスヴェシに対して言った。
「精神を強く保ちなさい。強い感情、強い執着、強い意志。なんでもいい、その精神が強いほど、魂が身体から抜けだした際、生前の形を保持しやすくなります」
スヴェシの表情はすでに死人のそれだが、魂はまだ身体に宿っている。
「強いほど。生前の記憶や性格を保ったまま、抜け出た魂をそのままの形で身体に還しやすくなります。弱ければ、死の瞬間に雲散霧消するでしょう」
キキさんは眼をつむり、光をシャットアウトして、スヴェシの周りにある大気に満ちる魂を認識することに集中しはじめた。
準備が整ったと見たゲーエルーが、長剣でスヴェシの心臓を刺し貫いた。
04.
ゲーエルーの長剣が、素早く静かにスヴェシの心臓に達した瞬間。
身体から魂が抜けだした。
それを認識し、キキさんは操作する。
手応えが強い。
普通ならば、死の瞬間に、記憶や人格といった魂の表層は、大気に満ちる魂の中に露と消える。しかしスヴェシのそれは、不完全ながらも形を保ち、大いなる魂に練りこまれていくことを拒否していた。
キキさんは、スヴェシの精神力に舌を巻いた。
この心の強さ。
本当に、ハクの敵でなければ素直に感服できていたでしょうに。
キキさんは手早くアニメートの術式を完成させ、スヴェシの魂をその死体に通していく。
魂を失った身体でも、魂の回路は残っている。それに従ってアニメートを施していくのは、キキさんにとっても初めての経験だったが、想像していた以上に容易な作業だった。
これが禁術。
禁じられたのは、生と死の狭間を操る禍々しさ故ではない。
あまりに簡単に死者の軍隊を作ることが出来てしまう。その容易さこそが、この使用法が禁じられた理由であろう。
スヴェシの魂は、いまだ自我を保ったまま、かつての自分の身体に編み込まれていった。
キキさんのアニメートの術式を通し、その魂は一つの意志を送りつけてきた。
早くせよ。
欲しかったものを我が手にする、最後の機会なのだ。
ここは自我を保つのすら難しい。
しかし、失ってなるものか。
私は身体へと還り、手にするのだ。
生涯をかけて欲したものを。
お黙りなさい。
キキさんは、言葉にならない意思をもって、スヴェシの魂と遣り取りをする。
術に集中させなさい。
それにしても。
貴方の強い精神力の根源は、その執着力ですか。
一体……なににそこまで執着しているのやら。
魂の回路の隅々にまで、スヴェシの魂を通していく。
その過程で、キキさんは一つの命令を織り込んでいった。
ハク=プリームラに服従せよ。
スヴェシの身体に再び魂が宿る。
アニメートの術が完成した。
そこには、自我を失わずに復活したスヴェシが居た。
「……成功しました……」
キキさんは、術を終えて大きく息を吐きだした。
スヴェシは新たな自分を確かめるように、指先から肘、肩と順に動かしていき、腰を上げて上半身を起こし、片膝を立てて、そしてゆっくりと立ち上がった。
「ス……スヴェシ……さん?」
ハクがおずおずと声をかけると、スヴェシは無言のままその前にひざまづいた。
ハクは何事かと思い、キキさんを見る。
キキさんは微笑みながら、ただ頷いた。
ハクは仕方ないと覚悟を決め、一度天井を見上げてから大きく息を吸い、スヴェシを見つめた。
「これより、暫くの間、旅に出ます」
「御意」
「その間の砦跡の管理、そして残していく氷結晶の管理をお願いします」
「仰せのままに」
命令に受け答えるスヴェシから、こぼれ落ちるように浮かんだその表情を見て。
ハクは微笑んだ。
「ハクの決めたことだから、ボクは従うよ」
そう言うクークラの表情には、しかし“不満”の二文字がありありと浮かんでいる。
どうしてもスヴェシを許せないらしい。
「でもね……ボクの部屋には絶対に入っちゃダメだからね!」
ハクは肩をすくめて、スヴェシに話しかけた。
「それも命令に加えます」
スヴェシは抑揚のない声で答えた。
「指示を拝命いたします、プリームラ様」
05.
数日後の早朝。
かわたれ時。
まだ薄暗いながらもわずかな朝日が差し込み、下生えの草が朝露に濡れていた。
ハクとゲーエルーは灰色のフード付きローブをまとっている。氷の種族の旅装として一般的な服装だ。
クークラはサスペンダー付きのニッカーボッカーズにハイソックスを履き、上は暗い赤ワイン色のシャツに黒っぽいベスト、そしてハンチング帽という、動きやすいが男の子のような格好をしていた。
以前、キキさんが趣味で作った衣装の一つだった。
先導役としてゲーエルーが引率し、ハクとクークラは下の大地を旅することになっている。
アルバイトを正式に退職したキキさんが、旅立つ三人を見送りに来ていた。
新たな砦跡の管理人となったスヴェシも、高台にある参謀本部の入り口に立ち、彼女たちを見守っている。
「いつまで膨れているの? クークラ」
ハクが呆れたように言った。
ハクは、結局ハクの名を名乗ることにした。プリームラは母からもらった大切な名前だけれど、ハクと呼ばれていた期間のほうがずっと長い。
その間に、自分は挫折をし、立ち直り、成長し、そして再び自由を得た。
自分を自分として名乗るのであれば、ハクの方がしっくり来ると、彼女は考えた。
プリームラの名前は、自分の中に、今度こそ大切に取っておこう。
キキさんから微妙に距離を取り、むくれていたクークラは、しかしますますそっぽを向いてしまった。
「だって、キキさん、ボクの意見を全然きいてくれないんだもん」
「それは申し訳ないと思っています。しかし……」
キキさんは毅然として答えた。
「わたくしは最善の選択をしたと考えています」
クークラは、それを聞いて再び頬を膨らませた。
その姿を見て、大人たち三人の心の中に「反抗期」という言葉が浮かんだ。
これもまた、成長の一つの過程なのであろう。
ただ、別れの時にこうなってしまったのは残念だと、キキさんは思った。
「それでハク。旅の目的は決めたの?」
「ええ。まず最初は、世界を見回りながら、私のたった一人の友達の家を目指してみようかと思います」
ハクは笑いながら答えた。
「なるほどね。その友人の棲む最果ての森は遠いから、歩きでは到着するまでに長い時間がかかるけど、その分、色々な土地に寄ることが出来る。悪くない選択だと思うわ」
クーデターとその後に起こった内戦のため世情は荒れているが、ゲーエルーが一緒ならば身の危険は無いだろう。
むしろ、自分やゲーエルーとの練習しかしてこなかったクークラが、素人相手にその棒術を振るい事故を起こさないかが心配である。
「キキさん!」
クークラが、挑戦的な眼をしながら、キキさんに話しかけた。
「次、会う時には、キキさんがビックリするくらいのアニメート使いになっているからね! 覚悟しておいて」
それならば、覚悟ではなくむしろ喜ばしい。
キキさんは、しかしあえて素っ気無い感じで言った。
「楽しみにしていますよ」
そして、クークラを抱き寄せ、囁いた。
「貴方は自慢の弟子です。いつか、誰もたどり着かなかったところまで進みなさい」
クークラは驚くと共に、少しだけ照れくさそうにして、キキさんから離れた。
「さて、それじゃそろそろ出発するぞ」
別れを惜しんでいる女性陣に、ゲーエルーが声をかける。
「お二人をお願いしますね、ゲーエルーさん」
「おおよ。任せておけ。じゃぁまたな別嬪さん」
ゲーエルーを追いかけ、振り向かずに、ボロボロのアーチを潜るクークラ。
最後まで手を振りながらこちらを見ているハク。
「ではキキさん! 近いうちにまた!」
「ええ。最果ての森の館で待っているわ」
再会を約束して、砦跡からハクは旅立つ。
その後姿をキキさんは見送った。
あの墓参り以来、日に日に薄くなっていったミティシェーリの魂の残滓が、ハクたちの周りを取り巻いているのを、キキさんは感じていた。
もうちっとだけ続くんじゃ……。
次回更新は2019/08/02の予定になります。




