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◇ 閑話休題 その8 モコに関して ◇

キキさん達の五番目の仲間。「紅い月のモコ」


医者にして薬師。

愛とは何かを知るために、巷間を渡り歩く「流しの産婦人科医」。

月の光のような儚げな美しさを持ちながら、勝手気ままに動くトラブルメーカーで、ルサいわく「最も扱いにくい後輩」。


実は、この物語の最後に……。

閑話休題 キキさんの仲間たち 紅い月のモコ


○見た目と性格

 紅い長髪が特徴的な、神秘的な美しさを持つ女性。リーダーのパーティには五番目、つまり最後に加入した仲間。

 薬師でもあり、医者でもある。

 赤と黒のロングコートと、大きなボストンバッグがトレードマーク。喋り方や性格はおっとりとしており、どことなく艶っぽい雰囲気がある。

 年齢は四番目の仲間であるルギエと同じくらい。

 

 おっとりとした喋り方もあり、他人からは天然系の不思議な性格というイメージを持たれるが、実際には理系特有のドライと言えるほど合理的な考え方をしている。

 非常に知的好奇心が高く、疑問を持つとそれをひたすら追求する。しかしとにかく掴みどころがなく、その時々で考え方が変わる。

 何事にも「最初に目標を設定してそれを求める」のではなく、常に「その場や状況に応じた最適解」を模索しているのだが、自分のやり方や考え方を説明する気がなく、納得していない相手を説得する事を無駄な労力とすら考えているので、他人から誤解を受けやすい。

 

 薬物の素材を集めるため、よく館から出て一人旅をしていた。

 その過程でパーティ以外の人々と多く触れ合い、人々の求める「愛」とはなんであるのか、という事に強い興味を持ち、生涯の研究テーマとするようになった。

 その風来坊的なライフスタイルから、各地で色々な情報を集めては館に持ち帰りパーティの役に立てていたが、しばしば厄介事まで引っ張りこんでいた。



○生まれと仲間になった経緯

 大気に満ちる魂が、とある廃城に差した紅い月の光と習合して生まれた存在。

 紅い月は、古くから愛や結婚、出産のシンボルとして信仰されていた。

 紅い月が出ている夜に廃城とその周辺に出没して、人に幻を見せ劣情を引き起こすなどし、それによって人々がどのように行動するかを観察していた。

 時には自ら人を誘惑して廃城に引き込み、人体実験の末に発狂死させる事もあり、それを畏れた人々が名うての冒険者となっていたリーダーたちに討伐を依頼した。

 その後の経緯は他の仲間たちとあまり変わらず、リーダーがモコと名付けて仲間に引き入れた。

 名前と理性を得た後には、愛という感情への興味、ひいては人間や生物に対する興味を強め、それを研究するための手段として医師、薬師としての研鑽を積むことになる。


 館の自室は、怪しげな薬とその素材の保管庫、及び実験施設のような趣で、更に書き留めたメモやノート、医学系の書籍が雑然と書庫に収められている。

 館の維持整備に全てをかけていたキキさんですら手を付けることの出来ない、そこは魔窟であった。



○能力とパーティでの役割

 光と闇、そして人の感情のような「形を持たないもの」を操る術を得意としていた。

 光を自在に扱って幻を描き、戦闘においては敵を幻惑する。

 また薬物アイテムを扱い、傷薬で味方の傷を癒やし、毒薬で敵の力を削いだ。

 それ以外にも爆薬や農薬など、物理的な力を持った化学系アイテムの取扱いにも長け、それらは時に術以上の効力を発揮していた。


 光を操る術は、ただ幻として虚像を結ぶだけではなく、光を極度に集中させることにより熱などの物理的な効力を発生させる事もあった。

 基本的には後方からのパーティ支援が主な役割だったが、前線に立たなければいけない曲面では、収斂光のレーザーカッターを利用した物理攻撃を行う事もある。

 光を用いて竜の姿を虚空に描き、怯んだ敵に収斂光を放って焼き払う「竜幻術」を奥義としている。

 薬物に関しては、作り出すための素材が必要なため、リーダーが去る以前から積極的に遠出して、様々な素材の採取を行っていた。

 そのため、肝心な時に館に居ないということが少なからずあった。



○一言紹介とその後

 最後にパーティに加入したトラブルメーカー。インフォームド・コンセントをする気のない医者。

 月の光のような幻惑的な美しさのため誤魔化されるが、気分屋で行動方針も一貫せず、しかも知的好奇心に任せて勝手な行動を取るので、ルサやキキさんにとっては最も扱いにくい後輩でもあった。


 作戦会議などではよく発言するものの、彼女の案が採用されることは稀。

 考え方は理論的なのだが、「何故その結論になるのか」の過程をほとんど説明せずに提案するため周りから理解されにくく、その上、作戦行動中に別の要素が入った場合には自分の中だけで結論を書き換えるので、周りとの齟齬が生じやすかった。


 せめて報連相をちゃんと行うクセがついていれば、ルサたちももう少しやりやすかっただろう。


 医者として人と接していても、説明が足りずに誤解を招くことがしばしば。

 医療に関しては技術も知識も確かなため、難病を癒やした彼女を女神として崇める地域も多いが、その評価は場所によって毀誉褒貶が激しい。


 リーダーが異世界へ旅立った後は、「愛」とは何かの研究を極めるため、流しの産婦人科医として各地を放浪し、人の中を流れ歩いていた。


 ある日、とある農村に立ち寄った際、旧家の令嬢を診てほしいと頼まれる。

 その令嬢は生まれつき身体が弱く、モコが看た時にはすでに死の寸前だった。

 モコは「延命は無理であり、身体の痛みを取り除き、精神のケアをすることしか出来ない」と両親に伝える。

 そして彼女が医師としての無力感に苛まれた時に、ある出会いが発生するのだが……。


 それはまた、別の話である。

引き続き、第四章第二話「墓参り」をお楽しみください。

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