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◇ 閑話休題 その3 クークラに関して ◇

砦跡でハクと共に暮す、謎の魔導生物「クークラ」。

何にでも乗り移る事ができ、現在は少女の人形の身体で生活している彼女(?)の紹介や誕生秘話となります。クークラが誕生した理由は、本編で語られる事はなく、クークラ本人すら知ることはありません。



名前    :クークラ

種族    :魔導生物

クラス   :無し(後に魔術師)

サブクラス :学生兼家事手伝い

趣味    :イタズラ・探索・アニメートで動くモノたちの観察・(秘密の趣味)盗み聞き

特技    :ヒカリムシ集め・乗り移り・(後に)魔術・棒術

性格    :好奇心旺盛・イタズラ好き・ポジティブ




 クークラは、どんなモノにも宿ることが出来る魔導生物。本体は目に見えないエネルギー体で、何かに憑依していないと霧散してしまう。


 普段は人形などの生き物を模した物品に宿っていることが多いが、依り代は何でもよく、やろうと思えばそこらに転がっている石ころにも宿ることが出来る。


 ただし、能力は宿った身体の影響を受けるため、あまり変なモノに宿ると運動能力はもとより知性や自我を失うことすらもあり、一度そうなってしまうと自力で他のモノに宿り直すことすらままならなくなる。

 また、純粋な水晶の結晶に宿ると、中で休眠状態に陥ってしまう。


 そのため、依り代の選定は慎重に行い、また万一の事が無いように、憑依体への「乗り移り」は必ず他人が見ている前でするよう、親がわりのハクから厳命されている。


 根本となる性格は、中性的で幼い感じ。

 そして好奇心が強い。

 不思議と思ったことに対し、その原理を解き明かそうという強い欲求を持つ。

 また、積極的でポジティブ志向。何に対しても物怖じせず、その分イタズラ心も強い。


 とは言え、これは宿っている憑依体によってかなり変化する。

 少女の人形に宿れば少女のように振る舞うし、大人の人形であれば多少大人びた性格になる。

 それから、これは本人も経験がないのでまだ知らないが、死体を依り代にすれば死者の生前の記憶を知り、生体に乗り移れば記憶や能力ごとその魂を吸収する。

 ただし、強い精神力を持つ者や、魔導の心得がある者ならば、クークラの乗り移りに抵抗出来る場合がある。


 ハクとの出会いは、勇者がハクに「クークラの養育」を義務づけた事に始まる。


 たった一人で幽閉された場合、ハクが精神的に落ち込み、死を選ぶのではないかと勇者が心配したための措置だった。

 勇者は、戦争を終結させ後顧の憂いをなくすためには、もはやミティシェーリを斬るしか無いという覚悟をもって事に当たっていたが、巻き込まれたに過ぎない子供を、感情のまま厳罰に処するような反知性的人間ではなかった。


 クークラが初めて宿ったボディは、ハクが手ずから作った小さな人形だった。

 水晶の中で眠っていたクークラを、勇者がその人形に宿り直らせた。


 小さな人形は、ハクが心を込めて丁寧に仕上げてはいたが、所詮は素人がなんの手本もなく作った物。造形的に可愛らしいというほどではなく、モノとして価値があったわけでもない。

 この人形では、宿ったクークラはあまり高い知性を持つことが出来ず、喋ることも不可能だった。

 ただ、何事にも好奇心を持つ性格はこの頃から顕著で、興味に導かれて危なっかしい動きをするためハクは眼を離すことが出来ず、よくクークラの世話を焼くようになっていった。


 勇者の目論見は当たり、母を亡くし幽閉され絶望の淵にいたハクは、クークラを養育するという責任感に目覚め、その精神を持ち直す。


 後にハクはいくつか人形を作るが、人形製作の腕は上がらず、どれに入ってもクークラの性格や能力はあまり変わらなかった。


 ハクを監視する主教の代が進み、おおらかな性格の二代目主教が来た際に、ハクは思い切ってプロの手により作られた人形を貰いたいと言った。

 それはハクが初めて国教会に出した要求でもあった。


 二代目主教の命により、ハクが考えていたよりも遥かに立派な等身大の少女の人形が創られ、クークラはそれに乗り移る。

 そのボディで初めてクークラは喋ることを覚え、人格らしい人格を得た。


 それまで言葉を持たない子猫を育てていたような感覚だったハクは、その性格が人間の子供のように変化したクークラに大いに驚いたが、以後も変わらぬ愛情を注ぎ、クークラもまたハクを慕い、互いを支えながら生きて行くことになる。


 しかし、その出自を勇者は伝えることは無く、クークラ自身、自分が何故、どのように生まれ出たのかをわかってはいない。


 クークラは、氷の種族との戦争のおり、下の大地の魔導士たちが団結して創り上げた兵器である。


 正確には、兵器の動力として創り出された。


 自律式の大砲。巨大なゴーレム。動く小城。

 ただのオブジェでしかないそれらに、クークラのような魔導生物を宿らせることで自在に動かし、戦争における兵器とする。


 そんな思想の元に、魔導技術の粋を集めて創り上げられた魔動力。その第一号試作品がクークラだった。


 システムとしては、人工的に創られた付喪神とも言える。

 ただの物品に「大気に満ちる魂」を一時的に宿らせる魔術「アニメート」とも関連がある魔導技術だが、その完成度は比較にならないほど高度で、単純に技術としてのみ見るならば、芸術的、あるいは奇跡的と言ってもいい。


 しかし、その術式は禁呪と呼ばれる類のものでもあった。


 魔導士たちは、多くの子供たちの魂を身体から引き離し、加工して使用していた。

 戦勝という大義名分のため倫理は軽んじられ、勝つためならば何をしても許されるという風潮の中、子供たちの犠牲も尊く気高い犠牲として祀り上げ、肯定していたのである。


 魔導士たちはその技術を誇り、人間たちの旗頭として前線に立っていた勇者に、苦労して創り上げた「試作兵器」を紹介する。


 魔導士たちに罪の意識はなく、純粋に兵器運用上のアドバイスを求めようとしたのだが、計画の全容を知った勇者は激怒。

 研究機関と施術場に乗り込んで、全ての研究結果と施設を破壊した。


 もしもこの技術が完成し、量産化された暁には、どれ程の魂が「加工」された事であろう。魔導士達は勇者の行為を蛮行と非難したが、彼は意に介さなかった。

 勇者は当時の勇者後援会、後に「国教会」と呼ばれる事になる組織に、クークラに関わる全ての資料の廃絶を命じ、魔動力計画の存在そのものを歴史の闇へと消し去った。


 唯一の完成品だったクークラは、水晶の原石に宿らせたまま眠らせ、勇者が自ら保護していた。


 彼がハクにクークラを託したのは、ハクの精神を心配しただけの理由ではない。


 クークラの能力は、もしも悪意を持って成長すれば、それこそ魔王と呼ばれる存在になってもおかしくないほどのポテンシャルを秘めている。

 ならば、無為の存在として祀られる優しい性格のハクのもとで、彼女を支えながら無為の日々の中に生きていくことこそ、クークラ自身、そしてその周囲の者達にとっての幸せになるであろうという判断でもあった。 


 自らの生い立ちをクークラが知る機会は、未来永劫、訪れない。


 ただ、魔術「アニメート」を習得する過程において、自分が付喪神やアニメートによって動く物品と同質のものであると直感し、自分に比べれば原始的であるそれらの存在への愛おしさを、クークラは深めていく事になる。


 その愛おしさは、アニメートを習得したいという欲求の根源であり、遠い遠い遥か未来において「意志を持つアニメート」という形で子孫を残す事になる魔導生物クークラの、無意識の内にある種族的な本能の渇望でもあった。

次回投稿は2019/05/24になります。

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