11
「はぁ………」
約三十分ほど掛かって一騒ぎを鎮圧した秋は、時間掛けて何やってるんだろうと疲れきった表情でため息をつく。
視線を前に向ければ、疲労の原因となった四人が廊下にバラバラで座っているのが見える。
ある二名は申し訳なさそうにしているが、もう二名は自分は悪くないアイツが悪いと開き直っていた。
「はぁ………」
また、秋はため息をついてしまった。
ある程度治癒したといえ、秋はまだ完治していない重傷人だ。本来ならば、絶対安静にしていないといけないのだが、こうまとまりがないとそう言ってもられない。なので、秋はこうしてまとめ役を買って出ていた。
「それじゃあ、皆落ち着いたようだし、質問しても良いかな?」
「はい、大丈夫でございます。秋様」
「え、は、九里?なに言っ……あ、うん、ゴメン。私も大丈夫…です」
即答した九里に睨まれ、うっ、と声に詰まりつつ小さくなった理世が答える。それに苦笑いしつつ秋がマリナと悠人の方を見ると、二人ともコクりと首を縦に振ってきた。
秋は頷き返すと、顎に手を当てて考え始める。
「さてと、まずは何を聞こうか………」
〈まずはあの黒布執事について聞くか?いや、あれは面倒だし、まずは良いか。だったら、妖刀の情報を何処で手に入れたか聞いてみるか?でも、なんで昔の俺について知ってるのかも気になるな………。うーん、迷うなぁ〉
頭を抱えるまでないが、どうしようかと悩む秋。
緊張感が漂う、静寂。
誰も喋らず秋が話し出すのを待っていると、他と同じく黙っていたマリナが唐突にヒラヒラと手を振りながら口を開いた。
「ねぇ、シュウにあの怪我させたのって貴女?」
「は?だったら、な……ヒッ!?こわ、この人こわ!?その、絶対殺してやるって目、こわ!?」
「フフ。正直に答えなさい?さもないと……」
「はい、やりました!私がやりました!マジ、すいませんでしたっ!!」
理世は土下座せん勢いで、秋に頭を下げる。
それを見たマリナは、殺意の波動込められた収縮した瞳孔を閉じ優しく微笑んだ。この表情の前に脅し行為がなければ、誰もが見とれる笑みだっただろう。
見ていた悠人は、うわぁ、とドン引いていて、理世の隣にいた九里は落ち着いて静かにしている。
そして、謝られた本人は訳が分からず、「あ、はい」と真顔で頷いていた。
正直、頭からスッポリ抜けるほどのどうでも良い事だったため、素っ気ない対応をする以外他にしようがない。と言うか、怪我でいうなら悠人もやられているのだが、それはどうなのだろうか?
隣にいる悠人が地味に凹んでいる。
後で慰めてやろうと思いつつ、秋は頬をかきながら言う。
「あーえっと、とりあえず君達の事を話してもらえるかな?ちょっと変な質問だけどね」
「私達の事ですか?」
そう言って九里が首を傾げる。隣にいる理世も訝しげな顔で秋を睨んできている。
その質問の意図が分からないからだろう。何故なら、あまりにも意味のなく関係ない話であるからだ。
実際、秋はこれに大して意味など込めてなく、しいて言うならばちょっとした興味本位からであった。
「うん、そうだよ。まぁ、全部話してくれとは言わないから、話せることだけを教えてくれるかい?」
「えぇ、はい。分かりました、秋様」
「ちょっと九里、私達の個人情報だよ!?プライベートな話だよ!?ほぼ初対面の人間に教えない方が良いと思うんだけどっ!」
なんの躊躇いもなく頷いた九里に、捲し立てるよう話さない方が良いと言って理世が間に入ってきた。
確かに、いきなり自分の事を聞きたいなどと言ったら、そう言ってきた相手を怪しんだりするものだ。なのに、彼女は問題なさそうに了承して話そうとしていた。恐らく、包み隠さずあらゆる、それこそ知らなくて良い情報ですら簡単に開示してしまうだろう。
であれば、親族の理世が止めに入るのは常識であった。
短絡過ぎたか、と秋が反省していると、理世の説得する声が段々と小さく弱々しくなっていた。
どうやら、上手いこと丸め込もうとしているようだ。九里は会話に誤魔化を入れたり、偽ったりして無理矢理納得するよう誘導している。さらに、よく見ればバレないよう器用に魔術を使ってもいる。
かなり慣れている様子で、思わず感心してしまうほどだ。
なんて思っている間に、気付けば理世が完璧に丸め込まれていた。ただ、何やらぶつぶつと呟いて、「あれ、この娘大丈夫?」と心配するほどの正気なのか微妙な表情をしているが。
それを見て、納得させた手腕に称賛の気持ちが半分、何をしたらあぁなるのかという驚愕が半分の秋と悠人である。そういった反応をほぼしないマリナですら、珍しく「へぇ…」と、何にとは言わないが感嘆の声を漏らしていた。
「それでは、理世ちゃんも静かになりましたし、お話させて頂きましょうか」
「あ、うん。お願いするよ」
秋と悠人の危ない人を見る視線など気にしないといった様子で、九里が穏やかに微笑みながら言ってくる。先ほどまで、自身の妹だろう人に洗脳紛いの事をしていた同一人物とは到底思えない。
その変化に若干引いていた秋だったが、やや引き攣らせながらも笑みを浮かべて頷いた。
「では、早速、私達の家名………まぁ元ですが、『神楽』という姓に心当たりがないでしょうか?」
恭しく秋に頭を下げて一拍置くと、ゆっくりとそう言ってきた。
まったくない悠人は、はて?、と首を傾げたが、マリナと秋は目を見開くほど驚いていた。
悠人は二人のその反応の理由が気になり「どうしたッスか?」と聞いてみれば、その声で冷静になった秋が頬をかいて答える。
「あぁ、そうか。まだ、こっち側の事を教え始めたばかりだから、悠人は知ってるわけないよね。『神楽』家と言うのは、神仏への奉納の舞を行う家系であり、その血筋に人の領域を越えた者、いわゆる特異能力者が無条件で生まれてくるんだ。………だから、理世って娘はあの年齢で異能を使っていたのか」
「………?あの、秋さん?」
「あ、ごめんごめん。それで、その特異性から日本の裏社会を牛耳る『黄泉六家』の一つに入っているんだよ」
―――神楽家。表面は神仏へ奉納の舞を踊る由緒正しき家系だが、裏では血筋に生まれる特異能力者を使い、暗殺、工作、戦争・反乱での人員援助、などを行う組織を運営している。
そして、『黄泉六家』という裏社会を牛耳って誰もが関わるのを畏れる六つの旧家の一角。また、近代から世界で起きた暗殺から大量殺戮、戦争に関わっているとすら言われている。
金のためなら親兄弟だろうが無情に無慈悲に利用して使い潰す、『無血の鴉』の異名を持つ。
話を聞いていた悠人は、サァーと血の気の引いた顔で頬を引き攣らせたが、
「メチャクチャ、超ヤバい家じゃないッスか!え、ってか、あの人達そこの娘?うわぁ、マジか………あれ?それなら、わりと納得ッスね。普通に暴力振るってくるんスから」
唐突にポンと手を叩いて納得していた。
微妙に苛ついている口調なのは、怪我させられたことをまだ根に持ってるからだろう。
しかし、ここでそういう風に言えば………。
と秋の感じた予想通り聞いていた理世が、ガンを飛ばしながら近付き言ってきた。
「はぁ?そこの茶髪ピアス君、喧嘩売ってんのかなぁ?私がしたことまだ根に持ってんの?小さい男、ダサッ!下の方も小さい変人童貞」
「………そっちこそ喧嘩売ってるッスよね?売られた喧嘩は高値で買うッスよ?あと、別に根に持ってねぇス!この自意識過剰、クソシスコン女」
「「あ"ぁ!?」」
二人とも額に青筋を浮かべて、怒気を放ちながら今にも殴り合いそうな雰囲気を出している。と言うか、秋と九里が止めていないと殴り合いになりそうだ。
お互いに相手へ威嚇と挑発している二人を、これまた秋と九里が宥めて落ち着かせにいく。
さすがに大好きな姉と尊敬する上司の前で恥ずかしい真似は出来ないと思ったのか、二人とも睨み合いながらも静かになった。
一部始終を見ていたマリナは、呆れ顔だ。
「まったく、何やってんだか………。ま、後で説教するとして、まだ話の続きがあるから真面目に聞きなさい」
「え、説教?って、まだ続きがあるんスか?」
「正確に言えば、補足。神楽家はね、十年前に滅亡してるのよ。跡目争いの最中、敵対する他家によってね」
「えぇぇえぇぇぇっ!?」
十年前に神楽家は滅んでいる。
あまりにも滑稽な話。身内同士で争いあったために、力が落ちその隙を突かれ潰された。
一族郎党、皆殺し。
だが、そういった話は、強大すぎる力を持つ家ではよくある事だ。
しかし、ほぼ一般人な悠人には、聞き慣れない事で、驚かない方がおかしいだろう。
ただ、少しうるさい。
眉間に皺を寄せたマリナは、
「うるさい」
「あ、ス、すいませんッス。あまりにも俺っちの知る世界と違いすぎて……あれ?あの、今疑問に思ったんスけど……」
と、そこでマリナが悠人の唇に指をあて止める。
「それ以上言わなくても良いわ。私とシュウも同じようにそう思ったから。それに、だからこそ私とシュウも驚いたのだし。
………それで、貴女達が神楽家の人間だとして、どうやって生き残ったのかしら?」
殺気にも似た覇気を放ち、睨むように姉妹を見る。解答次第では、問答無用で殺ることも辞さないつもりだろう。
下手な事は言えない状況。
秋は口を挟むつもりがないのか傍観の姿勢、悠人と理世は見守ることしか出来ない。
緊張ある沈黙の中、九里が息を吸って答えた。
「そう、ですね………。信じては貰えないでしょうが、当時五、六歳の私達は、ある人に事が起こる前に保護され正体を偽りここに隠されました。そのお陰で、騒動に巻き込まれず生き残った、という訳です」
マリナの疑いの目が一段と強くなる。
「へぇ………、それが真実だと」
「えぇ、そうです。先程も言いましたが、信用されないのは百も承知です」
九里は目を逸らすことなく言ってくる。
お互いの目と目を合わせるマリナは、一言も喋らずその言葉の真意を測る。
長く重い数十秒。
唐突に、マリナがため息をついた。
「はぁ………。分かったわ、一先ず信用しましょう。で、貴女達を保護した人とは誰の事かしら?」
「フゥ………。はい、その人は我が家の執事です。黒い布で顔を隠した、私達にすら素顔どころか何一つ教えてくれない不気味な方。でも、どこまでも優しくしてくれていた方。父のように尊敬していた方。私に秋様の話を教え、理世を洗脳したあの執事です」
そう話した九里の表情は、怒るに怒れない、憎むに憎めないといったモノだ。あんな事をされたとしても、ここまで育てて貰った恩があり、悪感情を抱くに抱けないのだ。
妹である理世も同じく、色々な感情が混ざった表情。
裏切られたのに、憎しみや怒りと親愛、まだ信用していたいという気持ちが織り混ざって、どうしようもない感情。
「ちょっと、どうしたのよ?」
「マリナさん、何したんスか?こんな風にするなんて、今度はどんな酷い幻術を……!」
「はぁ!?知らないし、してないわよ!もう、本当にどうしたの?訳が分からないわ………」
二人の様子の変わりように、マリナと悠人は困惑してしまう。そこに、傍観を決めていた秋が来て、別れた後に何があったか説明してくれた。
あの一室であった出来事は勿論、ここに来る途中で聞いた二人について。姉妹であること、どちらも異能者であるということ、そして、異常な性格のこと。
それは、家族の愛を知らないがゆえに、与えられてしまった事で生まれたモノ。
大切と思えば思うほどに愛してしまう。
家族を大切に思えば、すぐに愛してしまう。
友人を大切に思えば、すぐに愛してしまう。
誰かを大切に思えば、すぐに愛してしまう。
それは強いようで儚く脆いモノ。
裏切りで、失望で、嫌悪で、壊れ心を苦しめてくる。
苦虫を潰したような表情をするマリナ。
「まるで、呪いね」
そう呪い。
狂った呪い。
押し付けられる愛の呪い。
「だから、話した後、あんな風に苦しそうなんスね………」
沈んだ暗い顔で、悠人は話す。
視線の先には、辛いだろうに微笑む姉と表に出さないようにする妹が目に映る。
きっと、泣きたいのを圧し殺している。想像も出来ない苦しみを耐えている。
「あの人達にされた事は許せないッスけど、同情……いや、そんな風に思うのもおこがましいッスね………」
「仕方ないよ。これは二人が時間を掛けてどうにかする問題だからね。……ところで、お二人に聞きたいんだけど、その執事はあの時、現れた黒布で顔を隠した奴かい?」
何かを確信しているような口調でそう話す。
九里はその言葉を肯定するためだけに頷いた。
理世を洗脳した者と助けた者が同じであると。
それだけを肯定。
不意に、それは襲った。
―――ゾワリ。
その場にいる全員の身体を凍てつかせるような寒気が、背筋に、全身に流れた。体温が急激に下がっていくのを感じる。
この世全てを凍えさせる冷気、絶対零度の覇気。
そこには、憎悪と憤怒、激しくそれでいて静謐な憎しみと怒り。何かへと向けていて、自分自身への憤り。
異常な負を纏い放つ秋は、見るからにおかしかった。
「し、秋さん、どうしたッスか!」
「―――ッ!Cet idiot!」
「ちょ、マリナさん!?何い……って、何する気ッスか!?」
「何ってこうするのよっ!『頭冷やせ、馬 鹿!』」
かなり大雑把に、適当に、対象を魔力により生成された魔氷の中に封ずる『氷結 の牢』という高位封印魔術を行使する。
フィンガースナップをすれば魔術陣は青く輝き、秋の周りの魔力へ干渉し術式を編み込む。魔力は空気中の元素と結合、魔水となり、そこから急激に冷えていき秋に触れた瞬間に魔氷へ変わり凍らせる。
一瞬で全身を同時に。
徐々に凍っていくわけでなく、瞬きより速く秋の身体を魔氷が覆い、気付けば青く半透明な氷像がそこに出来上がっていた。また同時に、おぞましい覇気がフッと消えている。
マリナは、一仕事終えたような表情で一息つく。
「フゥ………。とりあえず、これで大丈夫かしらね」
「いやいや、大丈夫じゃないッスよね!?秋さんが氷漬けなんスけど!?秋さんが死んでしまうっ!死んじゃうッス!?はやく、早く溶かさないとッス!!」
オーバーリアクションで動揺しながら悠人が突っ込んでくるのを、マリナは大袈裟だと呆れた顔をして言う。
「落ち着きなさいよ、ユウト。だいぶ中途半端に掛けたから放っておけば、すぐに解けるわ。むしろ、下手に何かしたらどうなるか分かったもんじゃないから、そのままにしてて大丈夫よ」
「………………分かったッス」
渋々、それはもう不本意そうに、悠人は頷いていた。だが、横目でチラチラと氷像を見ては考え込んでいるあたり、何かしようと考えているのだろう。
マリナはそんな悠人にもう一度同じ事を強めに言い釘を刺しつつ、向きを変えスッと目を細めて姉妹に聞く。
本当に、黒布で顔を隠していたのか、と。
九里と理世は、もう一度頷く。
「そう分かったわ」
そう呟いた彼女の声は、低く冷たい平坦な声音だった。
無意識に出したその声に、マリナ自身は思わず驚いていた。が、そうと思わない二名は、何を勘違いしたのか、
「ど、どうしたッスか?俺っち、何かしちゃいましたッスか?」
「あの、私、怒らせてしまう事でもしたでしょうか?もしそうでしたら、謝ります……」
と、不安げに恐る恐るといった風で聞いてきた。その様子は訳が分からず困惑するマリナ。理世は聞こえていなかったらしく、首を傾げている。
特に九里は謝っても謝り足りないほどの事をしてしまっているため、不安の他に申し訳ない気持ちを感じている。
そこに関してはすでに秋とマリナは、さっさと許しているのだが、本人はそう簡単にいかないのだろう。むしろ、簡単に割り切った二人がおかしいのだ。
と、そんな事など分かる訳もない九里は、自身で勝手にプレッシャーを感じ、押し潰されそうになっている。
だが、そこはマリナさん、フォローや弁明などするはずがなく、
「はぁ!?二人とも、何言ってんのよ!なんで、私が意味もなく怒らないといけないのかしら!」
と、若干キレ気味に言い放った。
唐突に怒鳴られた二人は唖然としつつも、何とか溢すように呟く。
「え、で、でもッス………」
「さきほど………」
「貴方達には、まったく関係ないわ。変に気にされる方がムカつくの。だから、忘れるか無視するか、適当にしといてくれるかしら」
ギロリと睨みを利かせながらそう言って、後ろを向けてしまった。
どう見ても機嫌が悪いようにしか見えないのだが、どうする事も出来ない。ちなみに、理世は理解する事を放置して一部始終を眺めていた。
しばらくあのままだろうと感じどうしようかとおろおろしていると、そうする悠人の頭の上に誰かが手を置いた。
強くもなく優しい触り方。
悠人は慌てて振り返って、その手の持ち主へ見る。そこには、
「あれは当分治りそうにないねぇ」
「秋さん!もう、動けるようになったんスね!」
やや全体的に濡れている秋が、苦笑いを浮かべながら立っていた。マリナとのやり取りの間に魔氷の仮封印から解かれたようだ。
悠人の声で、九里と理世達も秋に気付き驚いていた。
秋は、少し恥ずかしそうに頬をかきながら言ってくる。
「うん、なんとかね。いやぁ、ごめんね?ちょっと、御迷惑お掛けしたみたいで……」
「ホント、そうだし!ま、土下座で謝るなら、許してやらんこともねぇし?」
「理世ちゃん!」
「あはは、絶対土下座はしてやらない。
……っと、それよりもマリナの事を暫く見ててもらえるかな?ちょっと、行きたい場所があるからさ」
囁くような、ギリギリ聞こえるだろう小さい声で秋は、悠人達に言ってくる。警戒している雰囲気ではなく、どちらかと言えばマリナに聞かれたくないといった感じだ。
それほどに隠す事なのかと、悠人は疑問を持った。が、三人にはそれを止める理由がないので、コクりと頷いた。理世は文句を垂れながらだったが。
秋は悠人と姉妹に感謝しつつ、無音で数歩ほど下がった。と、思えば一瞬で音も立てずにその場から消えた。
ノータイムで予備動作もなく。
霞の如く、居なくなっていた。
「え、は?き、消えた!?」
「姿隠しの魔術?でも、魔術陣は描かれてなかったし、一体どうやって?」
二人とも、驚愕した声を漏らす。
目の前で人がいきなり消えたのだ。それこそ、方法でも知っていない限りは、誰でも同じ反応をしたであろう。
どんな仕掛けか考え込む九里達のその横で、悠人は目を輝かせながらボソッと呟いた。
「やっぱり、凄いなぁ。あの人は………」
その言葉は誰に聞こえることなく、空気の中へと溶けた消えていった。
評価、ブクマありがとうございます!
 




