ハルコ婆ちゃん、ハルルシアになる。2
ハルコ婆ちゃんの記憶とハルルシアの記憶が融合して来ています。
そして、ハルコ婆ちゃんの話し方については…温かい目で見てやって下さい…。
…――そして。また気を失って再度、目覚めてからは思い出した事が沢山あった。(ハルコの事もじゃが、ハルルシアの事も含めての)
「なんじゃー、こんな事になるんじゃったら都季にもっとゲームの話を聞いておくんじゃったかのう…――まあ、聞いていたところで忘れてしまったかもしれんがのう」
小さく呟き、ベッドで頭を抱える三歳児は世話役のメイドさんからは滑稽に見えたかもしれんが、そんな事を気にしてはいられん!
とにかく、まずは情報を整理してみようと思う。
ここはブルーリーズ王家が治める国。ブルーリーズ国じゃ、都季がやっていた、何だったかの…乙女の為のゲーム? その舞台となる国じゃったな…恐らく。(うぬう、百を越えて記憶力も衰えていたからのう)
割と広い国土を持ち、緑豊かで海もある平和な国らしい。(ワシ、今は三歳じゃからの。国について、そんなに詳しい事は、まだ学んでおらんかったのじゃ…)
そんなブルーリーズ国でのワシの家はと言うと、王家から降嫁してきた元・姫君の祖母がおる。割と王家に近い公爵家じゃ。
一緒に暮らしているのは公爵位を持つ父、公爵夫人の母、そして兄のラギル。他にはメイドさんや執事さん、庭師さん達じゃの。
ちなみにガードレッド公爵家の祖父母は領地にある本宅で暮らしている為、ワシ達とは別に暮らしていて、ワシらは王城に近い別宅にて暮らしておる。父の通勤(登城と言った方がいいかの?)に都合が良いからの。
寝込む前のワシは前世(何故、前世と言えるかって? ふぉふぉふぉ、その事について今話すと、ややこしくなるからのう。後にまた機会を見つけて、改めて語るとしようかの)の孫である都季が夢中になっていたゲームの登場人物である“ハルルシア・ガードレッド”としての記憶しかなく…まあ、普通は前世なんてものは思い出さんよな。嬢ちゃん(まあ、今世のワシじゃが)は、言葉少なく引っ込み思案。公の場でも、大抵お父さまやお母さまの背に隠れてばかり、おまけに表情も乏しい子供じゃった。
ハルルシア(まあ、今世のワシじゃ…くどいから、もう言わんで良いかの)は、他人との接し方、勉強、運動どれも優秀な二つばかり年上の兄、ラギルに幼いながらも引け目を感じていた。
おまけに父親譲りらしい銀色の髪に翡翠色の目を持ち、その容姿も整っている兄を周りが放って置かないのは簡単に想像できるじゃろ。
周囲からも直接比べられるような事や、悪しき言葉を言われた訳ではないが、上手く笑顔も作れない、会話もまともには出来ない嬢ちゃんは(まだ三歳なんじゃがの。上流階級は大変じゃな…)場の雰囲気で自分の立ち位置を感じていた。
そして、そんな時に起きた“ワシ、小童から暴言を浴びせられ、突き飛ばされるわ池に落とされるわ事件”じゃ。
ワルガキのエルシオン。あやつめ、アレで王太子なんじゃ。(しかも、攻略対象者の一人じゃ。りゅしおん様の事は何となく覚えていたんじゃが、ヤツの名も辛うじて覚えていたんじゃ。都季が嫌っておったからの。夢の中の都季の言葉に頷けた訳じゃな)全く持ってこの国の将来が心配じゃ!
しかし、あやつ…見た目だけは整っておったからのう。表情には出んかったし、今となってはもう有り得ん事じゃが、ワシの記憶の無かった“わたし”は『すてきなおうじさまと、けっこんできるのね』と淡い恋心を抱いてしまっていたのじゃ。ま、一目惚れじゃな! すっかり冷めたがの。
とまあ、そんな事あやつには関係ない訳じゃが、好意を抱いた相手の冷たい言葉と態度に酷く傷付き…(だってワシ、くどいようですまんが、三歳じゃぞ。しかも、引っ込み思案で大人しかったんじゃ。とても太刀打ちも出来んしな? 打ちひしがれるぞ?)それが切欠でワシ…ハルコの記憶が蘇ってしまったのじゃろう、と思う。
さて。これから、どうしたものかのう――?
うむむ。そうじゃな、まずはエルシオンとの婚約解消に向けて動くとするかの。
あやつもまだ幼い。(ラギル兄さまと同じ五つなんじゃと)今からなら更正出来るじゃろうが、何も婚約者じゃなくても更正の手伝いは出来るじゃろ――…あのな? ワシはな?
「王太子妃とか、そんな大層で面倒そうなもんになるのは、ごめんじゃー」
ふと呟いた言葉に。部屋に控えて居てくれたメイドさん(ワシが最初に目を覚ました時にもおった黒髪、紫目の人じゃ。名は確かアメリアと言ったかの?)が『どうかなさいましたか、お嬢様?』と、側に寄って来たからの。
丁度良かったから、ワシは彼女に――…
「お父さまと、お母さまと、お兄さまとお話がしたいのじゃが、時間が取れるかどうか、アメリアさん。すまんが聞いて来ては貰えんかのう?」
…――と頼み事をした。
何故か彼女は鳩が豆鉄砲をくらったかのような顔をしておる。
はて? ワシ、何かおかしな事を言ったかのう?
そして、数十秒後。
「ハッ!? し、失礼致しました。かしこまりました。至急、旦那様方にお聞きして参ります」
「うむ、すまんな。宜しく頼むのう、アメリアさん」
「は、はいっ!」
急いで部屋から出て行った。そんなに慌てんでも良かったんじゃがな?
「ああ、ワシの言葉遣いのせいかのう?」
おかしな事は言っていなかったが、普段のハルルシアとは違う、おかしな言葉遣いをしていた事に驚かれたようじゃ。
ふむ、ハルルシアは今まで…ほとんど単語を繋げたような話し方じゃったからのう。
「まあ、良かろう」
これからは(公の場では弁えるとするがのう、何じゃ普段から『ですわー』とか『でしてよー』とか肩が凝りそうじゃからの)ワシ、地の喋り方で話させてもらう気満々じゃぞ。
「ふぉふぉふぉふぉ」
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