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何気ない恋

下心恋心

作者: 恋熊

思ったより長くなった気がします

とある放課後のことだ。


「あ、少年くん、久しぶり!」


いきなり声を掛けられ、俺こと木崎直人きざきなおとが振り返ると、そこには学園の有名人の七塚叶江先輩がいた。


七塚先輩は俺に向かって手を振り走ってくるので、その大きな胸がボヨンボヨンと盛大に弾む。

・・・・俺は思わず目を逸らした。


「お久しぶりです」

「おや?なんで目を逸らしてるの?」


不思議そうな顔で七塚先輩は俺の顔を覗き込む。


「別に特別な理由なんてないですよ。それより、七塚先輩の方こそ俺に何か用ですか?」

「およ?私、キミに名乗ったっけ?」


うんうんと考え込む七塚先輩。

正直可愛い。


「俺が一方的に知ってるだけですよ。先輩は有名人ですから」

「ほうほう、さいですか」


納得がいったと言わんばかりに手を叩く七塚先輩。


「それで、何の用ですか?」

「用がなきゃ、声掛けちゃダメ?」


七塚先輩は尋ねる様に首を傾げる。

そんなことを言われたらダメなんて言えるわけないじゃないか。


「そういえば、この前はどうだった?」

「え?どうって・・・・・」


いきなり聞かれたことに対し、俺は何のことかと考える。


「私とのキスの味♡どうだった?」

「ぶふぅッ!」


いきなり爆弾放り投げに来やがった。


「何聞いてるんですか!」

「え〜?変なこと聞いたかな?」


七塚先輩はニヤニヤしてる。


「先輩は女の子なのに、そういうこと聞くのはどうかと思いますが」

「え〜?女の子だから、自分とのキスがどうだったか気になるんだよ〜」


この前、俺は七塚先輩に、上げたジュースのお礼と称して自分で買った缶ジュースの口にキスをされた。


つまり、キスとは直接ではなく間接である。


「ほらほらぁ、お姉さんにお・し・え・て♡」

「・・・・ジュースの味がしました」


はぐらかしても逃してもらえるとは思えなかったので、俺は率直な感想を言うことにした。


「え〜?それだけ?」

「それだけです」


それだけも何も、キスされたこと以外は至って普通の缶ジュースで、意識しなければ変わる部分なんて一切ないからな。


「む〜。もっと『レモンの味がする』とか期待してたんだけどなぁ」

「残念ながらレモン味のジュースではなかったですからね」


何味だったかは覚えてないけど。


「あ、そうだ!」


七塚先輩が思い出したとばかりに手を叩く。


「ジュースと言えば、君ってあのジュース沢山買ってて、家に沢山あるんだよね?」


あのジュース、というのは、俺と七塚先輩が知り合うきっかけになった、いちごヨーグルト味の炭酸飲料のことだ。


「ええ、ありますけど」

「よし決まり!今から君の家にお邪魔します!」

「え⁉︎」


それは大変困る。

俺の家はともかく、俺の部屋には女の子に見られたら困るものが割と置いてあるんだ。


「だめ〜?」


七塚先輩が俺の腕に抱き付いてくる。

そのせいで先輩の豊かな胸が思いっきり当たっている。


・・・・・柔らかい。

女の子のおっぱいってこんな感触だったのか。


俺も男の端くれ。

この感触に酔ってついつい七塚先輩を家に連れ込んでしまいたい欲は確かにある。

しかし、それをやってしまったら色々な意味でアウトだ。

俺は犯罪者になりたくないし周りから白い目で見られたくないし性欲に溺れる様な人間になりたくない。


だから、七塚先輩がどんな誘惑で頼んで来ても断る所存ーーーーーーーー。


「貴方が買い占めてるせいで私のところにジュース回ってこないのに、こうやって頼んでもジュースくれないんだ〜・・・・・」

「ぜひウチに来てください!」


流石に、性欲と良心の呵責、両方せめられたら頷かざるを得ないよ・・・・。




それから数十分後、俺と七塚先輩は俺の家の玄関の前まで来ている。


「どうぞ。それと今、両親いないんで」

「え・・・?それって誘ってる・・・・?」

「そういうどう捉えていいかわからないことは言わないでください!」


俺の家族と会ったら気不味いだろうと思っての配慮の言葉だったのに、七塚先輩はわざとらしく頰を赤くしてモジモジして見せるものだから、家に上げる気が少し下がってしまった。

別の部分は勃つ・・・もとい、上がってしまったが、男だから仕方ない。


とりあえず俺は七塚先輩を家に上げる。


「わ〜!すごいすごい!」


キッチンに入るなり、先輩は目をキラキラさせてはしゃぐ。

まぁ、スーパーで全く売ってない飲料が段ボール箱でキッチンに所狭しと置いてあるのだ。

このいちごヨーグルト味の炭酸飲料が好きな人なら喜ぶし、好きでもない人はドン引きだろう。

ちなみに俺の友人達と幼馴染はドン引きだった。


あと、一応言っておくが、このジュースは俺が好きなこともあるが、両親が大好きで、俺が好きなのもそれが原因で、このジュースをほぼ買い占めているのも両親と俺でやっていることだ。

買い占めと言ってしまうと聞こえが悪いが、家族全員好きで1日に2Lボトルが一本なくなるペースなので大量に買ってしまうのも仕方ないだろう。

一応、結構買ってるから誰かに何本か譲っても問題はない。


「それで、何本売って下さいますかっ?」


七塚先輩がいきなり下手したてに出る。

擦り合わせている手がなんか卑しさを醸し出してる。


「え?売る、ですか?」

「今は手持ちが少ないけど、1本千円までなら出せるから!」


キラキラと目を輝かせる姿は可愛いが、セリフはそんなに可愛くない。


「お金なんていりませんよ」

「え⁉︎なんで⁉︎」

「元々、ウチで大量に買ってるから先輩が買えないわけですし、俺は別にお金に困ってるわけでもないですから。お金をもらうつもりはないですよ」

「そ、そう?」


七塚先輩は少し嬉しそうにモジモジする。


「じゃあ全部もらっていくね!」

「おい」


そこまで許した覚えはないぞ。


「え?お金はいらなくて欲しいだけ持って行っていいんでしょ?」

「欲しいだけ持って行っていいとは言ってませんし限度があるでしょう!」


好きなだけ持って行っていいと言ってはいないものの思ってはいたのに、まさか全部持ってくなんて発想が出てくるとは思わなかった。


「どうしてもダメ〜?」


先輩は胸を押し付け上目遣いでお願いしてくる。


「だ、ダメなものはダメです!」

「え〜?どうしても?」


先輩は俺の胸に顔を寄せ、スリスリとしてくる。


「ど、どうしてもです!」


俺は誘惑に屈したりしないぞ。



そんなわけで、俺は七塚先輩にジュースの2Lペットボトルを8本渡すことにした。


いや、別に七塚先輩の誘惑に屈したわけではない。

俺の家にある分は大分多いから2Lペットボトル8本くらいじゃなくなりはしないし、七塚先輩が運ぶ量にも限界がある。

だから交渉の結果、2Lペットボトル8本に落ち着いたのだ。


そんなわけで、俺は今先輩に渡す用のジュースを用意している。


「ありがと♪それじゃあ、まだ時間もあるし少し貴方の部屋に寄っていいかな?」

「いいですけど・・・・何する気ですか?」


嫌な予感がして俺は恐る恐る訊く。


「ふっふっふ・・・それは部屋に着いてからのお楽しみ♡」


七塚先輩が誤魔化すので、俺は仕方なく部屋に案内する。


そして部屋に着くなり。


「それでは、これからアダルトな品の探索に入りたいと思います」

「どいつもこいつも!」


七塚先輩がドヤ顔で敬礼する。

どいつもこいつも、俺の部屋に来てやることと言えばエロ本探しなのか!

俺の部屋を何だと思ってるんだ!


「ふふふ・・・。そういうものって、興味はあったんだけど、女の子が手を出すのって、結構抵抗があったんだよね〜」


手を出すのに抵抗があるのが女の子だけだと思わないで欲しい。


「興味がある、って七塚先輩そういう趣味が・・・・?」

「え〜女の子だって興味くらいはあるよ?だってそういうのって、よほどマニアックなものじゃなきゃ、出てくるのって女の子だけじゃないでしょ?エッチなことに興味のない人なんていませんっ」


ドヤ顔で力説する七塚先輩には悪いが、俺が持ってるのはあくまでグラビア雑誌の類であって、○EXとか、相手を必要とする行為を行う様なものは持ってないぞ・・・・?


「そんなわけで、抜き打ちでチェックをさせていただきますっ」


七塚先輩が可愛らしく敬礼する。

そんな七塚先輩に対して俺はというと。


「いいですよ。存分に探して下さい」


しれっと返すが、俺には絶対の自信がある。


俺のエロ本は見つからない。

常日頃から周りに見付からない様に、ない頭をひねって隠し場所を作り出してるのだ。

そう簡単には見付からない、とかではなく、知らないと絶対にわからない。

見付けられるのは精々隠した本人である俺自身か、俺の幼馴染の日向湊ひなたみなとくらいのものだろう。


「う〜む、女の勘が、あのクローゼットの下の段の引き出し中の、奥の壁に埋め込まれてるって囁いてる」


いきなり当てられてしまった。

女の勘ってすごい。


七塚先輩は早速、クローゼットを開け確認する。


「ちょっ!せんぱーーーーー」


慌てて止めようとして、俺は絶句した。


七塚先輩はクローゼットの下の段を漁っているため、膝立ちで上半身を屈めた様な状態になっている。

要するに、寝ている状態から尻を突き出した様な形だ。

一応説明するが、今は放課後に七塚先輩に俺の家に寄ってもらっているところだ。

つまり制服で、スカートを履いていらっしゃる。


何が言いたいのかと言うと。


七塚先輩が尻を突き出す様な形でこちらに向けており、スカートが思いっきり捲れて下着が丸見えなのである。

俺は思わず視線をそらす。


「なっ!何やってるんですか!」

「エロ本を探してます」

「そ、そうじゃなくて!見えちゃってますって!」

「えっ!私の大事な下着で隠してるのところが見えちゃってる⁉︎」

「そこまでは言ってませんよ⁉︎」


この人どんな発想してるんだ。


「あ、そうなの?それなら大丈夫!」

「大丈夫って・・・パンツは大事なところを隠すためのものだからパンツなら見られても問題ないって言う気ですか?」

「ううん、実は今日は見せパン履いてるの」

「見せパン?」


一瞬しか見なかったが、俺が覚えている限り普通のパンツだと思ったが。


「今日は勝負パンツの上に更にお気に入りのカワイイパンツ履いてきたから、見られても心配ないのです!」


なるほど?

二重に履いてきたから見られても恥ずかしくないと・・・・?


見てる限り普通にパンツ履いてるのと変わらず、尻のラインも見えてたしそこから色気のある太ももは何にも隠されておらず結局普通にエロかったんだけど。

先輩の感性はわからない。


とりあえず俺は七塚先輩をエロ本もといクローゼットから離すために先輩の方に近付く。


「とにかく、七塚先輩、そこから離れてーーー・・・・寝てる」


くーっ、くーっ、と可愛らしく寝息を立てて、七塚先輩はいつの間にかクローゼットの中で意識を失っていた。


「・・・ったく」


※※※※※※


【七塚叶江の視点】


七塚叶江という女の子は、実は周りが思っている印象とは違い、男が苦手である。


周りは叶江が男を誘惑していると勘違いしているが、叶江本人としては、普通に接しているつもりなのだ。


叶江は本人が天然なせいもあってか、胸を押し付けたり、男相手でも気さくに話しかけたり、下ネタを振っても、それは友達に対しての当たり前の行動としか思っていないし、初対面の相手だろうと少し話して仕舞えば叶江の中ではもう友達なのだ。


しかし相手はそうではない。

周りにとっては叶江は初対面から気さくに話してくれるし下ネタも許容してくれる女の子だし自分に対してのスキンシップも多いし、大分気を許してくれている様に見えるのだ。


そのため、叶江としては普通に接しているつもりなのに、相手の男はいつの間にか叶江のことを色欲に塗れた目で見ているのだ。


周りから見ていれば普通のことなのだが、叶江にとってはそれが不思議で仕方ないと同時に、そういう目で見られてしまうことにショックを受けてしまうのだ。


そういう目で見られることは意外に気付きやすい。

相手は隠しているつもりでも、どうしても叶江にはわかってしまうのだ。

それが、叶江には辛い。


その点、この前会った少年には少し気を許せてしまうと感じた。

名前は知らないけど、自販機で会った、同じいちごヨーグルト味の炭酸飲料が好きな男の子。


別に、他の男と違ってエロい目で見て来ないというわけではない。

実際、再び会った今も、叶江に対して邪な気持ちなど一切抱かない、などという様子は見られなかった。

ただ、胸が揺れたり、スカートの中身が見えたりすると、顔を真っ赤にしつつ視線をそらしてくれた。

それが、彼が自分に対して誠実であろうとしていてくれるという証拠の様に感じて嬉しく感じた。


そのせいもあって、彼といるとどこか安心してしまった。


「・・・・ここって」


思わず眠ってしまうほどには、安心してしまった。


目を覚まし、上体を起こして周りを見回すと、そこは先程までいたのと同じ、彼の部屋だ。


見ると、叶江がいたのはその部屋にあったベッドだ。


「私、寝ちゃってたんだ・・・・・・」


そこでようやく自分がいつの間にか寝てしまっていたことに気が付いた。


「今・・・えっ⁉︎3時⁉︎」


叶江は部屋にあった時計を見て驚く。

いつの間にかそんなに寝てしまっていたのか。


ふと気が付くと、床に布団が敷いてあり、その布団の中で部屋の主が静かに横になっていた。


どうやら叶江を自分のベッドに寝かせ、自分は床で寝ている様だ。


「優しいな〜」


思わず顔が綻ぶ。

そして、布団の横にある机の上に、食事らしきものとメモ書きを見付ける。


彼が寝ているため電気は付けず、叶江は机に近付き、机の上にあった灯りを点けてメモを見る。


『七塚先輩の家には連絡を入れておきました。起きた時にお腹が減っているだろうと思い、用意しておきました。今日の夕飯の残りですが、良かったら食べてください』


く〜、とお腹が可愛らしく鳴く。

叶江は少し頰を赤く染め、ありがたくいただくことにする。


「ん・・・おいし・・・・」


叶江はその料理の美味しさに驚く。

店の料理というほど美味しいわけではないが、味付けがしっかりついているのに濃すぎるわけではなく、食感もいい。

ザ・家庭の味、というのはこういうものなのか、としみじみと感じた。

今度は温めて食べたいなと感じ、叶江は気付いた。

料理は冷めている。

しかし美味しい。


多分この料理を作ってくれた人は、叶江が夕食の時間に起きて来ないことを踏まえて、冷めても美味しい食事を作ってくれたのだ。


自分の分を用意してくれた上に、自分のために手間までかけてくれた。


叶江はそれが申し訳なく、同時に嬉しく感じた。



ふと、あることに気付く。


「この服・・・」


叶江が来ていた服は、学校の制服ではなく、女の子用のパジャマだ。

少し胸がキツいが、それ以外のサイズは大体合っている。


「ま、ままま、まさか、彼が・・・・⁉︎」


部屋の主が着替えさせたのかと、叶江は顔を赤くして動揺してしまう。


パンツは見せパンを履いていたので(叶江の中では)問題はなかったが、下着姿や裸を見られたとなると話は変わってくる。

叶江とてれっきとした女の子だ。

羞恥心がないわけがない。


ガララッ!


唐突に部屋の窓が開く。


見ると、青っぽい黒髪を頭の上の方で手ぬぐいで一纏めにした女の子が、窓枠に手を掛け、部屋に入ろうとしていた。


「・・・あ、失礼しました〜」


女の子は手を振り、部屋から出て、窓を閉めーーーーーー。


「ままま待って!」


叶江は慌てて窓に手を掛け、目の前の女の子を引き止める。


「大丈夫です。色々察したんで」


女の子はドヤ顔で親指を立てる。


「何が⁉︎何を察したの⁉︎」


もしかして彼と叶江が恋仲などという様な勘違いをされたのではないか。


叶江としては、恋人同士の行為をしていたと思われるのは誰が相手だろうと恥ずかしいと思うし、自分と恋人と思われることを、彼が嫌だと思わないかと申し訳なく思ってしまう。


窓にいる少女は少し困った様な顔をする。


「何を察したか・・・・ですか」


どう説明すればいいか迷っているかの様だ。


「えっと・・・まず、先輩が何らかの理由で、そこで寝てるなおくんの家にお邪魔したんですよね?なおくんとは多分友達同士とか、知り合いとか、そんな感じですかね」


どうやら、別に恋人同士だと勘違いされたわけではない様で、叶江は少しだけホッとする。


「それで、先輩は寝ちゃって、なおくんが先輩をベッドに寝かせた、ってところですかね?」

「あ、合ってる・・・・」


少女のあまりの勘の鋭さに、叶江は驚いてしまう。


「ちなみに、先輩をパジャマに着替えさせたのはなおくんのお母さんですね。パジャマがないかっておばさん・・・なおくんのお母さんに訊かれて、私のパジャマを貸しましたから。なおくんに女の子の着替えをする度胸はありませんよ」


少女はクスクスと彼を笑う。


どうやら、叶江が着ているパジャマは目の前の女の子のものらしい。


・・・・・道理で胸がキツいと思った。


「今失礼なこと考えました?」

「とんでもない」


少女に睨まれ、叶江は首を振る。


「あ、このご飯って誰が作ったかわかる?」

「はい?」


目の前の少女があまりに事実がわかっているので、叶江は疑問に思っていたことを聞いてみる。


「あ〜これはなおくんのお母さんですね」

「そっか」


わざわざ息子の客人のためにこんな料理を作ってくれるなんて、優しいお母さんだなと叶江は思った。


「おそらく、なおくんがお母さんに頼んで作ってもらったんでしょうね。冷めても美味しい様に作ってって」

「えっ?」

「なおくんなら、絶対頼んでますよ。私にはわかりますから」


少女は笑ってそう言った。


「彼が、私のために?」


彼女の話が本当だとするならば、部屋の主は、不覚にも寝てしまった叶江を、裸を見ない様にと母親に着替えさせ、わざわざ自分のベッドに寝かせ、自身は床で寝ているのだ。

更に用意してくれた料理は彼が頼んでくれたものだという。


まだ2回ほどしか会っていない、叶江のために、彼はわざわざそこまでしてくれたのだ。


「そんなの・・・優しすぎるよ・・・・・」


叶江は、胸が熱くなるのを感じた。


「ねえ、1つ、教えてもらっていい?」


叶江は目の前の少女に尋ねる。


「彼の名前、教えてくれないかな?」


※※※※※※


翌日の放課後、俺と七塚先輩は、七塚先輩の家の前にいた。


結局先輩が起きたのは今日の朝で、学校には朝食を食べた後俺の家から直接登校したため、例のジュース8本は放課後に渡すことになったのだ。


「も〜!わざわざ家まで運んでもらわなくて良かったのに〜!」

「いや、俺も男ですから、七塚先輩に重い荷物を持たせて帰らせるわけにはいきませんよ」


とはいえ、七塚先輩はもうすでに十分重い荷物を背負っているのだが。

昨日、先輩が俺の家で寝てしまい、今朝まで起きない可能性は考えていたので、昨日の内に先輩の家から先輩の両親に連絡して授業の用意を全て持って来たのだ。

先輩のクラスの時間割とか必要な道具とかわからなかったから、全部片っ端から鞄に突っ込んでいるお陰で、鞄はパンパンである。


『も〜!キミって変なところで気が利かないんだね!』


と、七塚先輩にも怒られてしまった。


「今日は、ううん、昨日と今日はありがとうね、直人くん♪」


玄関の中に荷物を全て運び込み、帰る直前に七塚先輩は俺に向かってそんなことを言う。


「いえ、当たり前のことをしただけですよ」


そんな先輩に、俺も笑顔で返す。


「というわけで、コレもありがたくもらっておくね♡」


そう言って手に持っていた“それ”を見せびらかしウインクすると、そのまま七塚先輩は玄関の扉を閉じてしまう。



・・・・・ちなみに、手に持っていたのは俺が大事に隠していたエロ本だった。


「いつの間にぃぃぃいいい!」


俺の絶叫が響いた。


※※※※※※


叶江母「さっきの男の子、いい子ね〜」

叶江「お母さん、見てたの?」

叶江母「昨日も、私の携帯に突然叶江から電話が来たかと思ったら、叶江の携帯勝手に見て私に掛けて来たこととか真面目に説明してくれて、わざわざ謝ってくれたし、ここまで授業の用意も取りに来てくれたのよ?」

叶江「お陰で今日は重たかったよ〜」

叶母「そう言いつつ、玄関先の様子見てた限りだと、貴方、鞄も持って貰ってたじゃない」

叶江「え?」

叶江母「その様子じゃ、気付かない内に持ってくれてたのね。優しいわね〜」

叶江「うん・・・・本当に、優しすぎるよ・・・」

叶江母「叶江って、貞操観念緩いんだから、ああいう子が貴方の夫になってくれると、私としても嬉しいんだけどなぁ」

叶江「もうっ!お母さん!何言ってるのっ!」



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