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異世界少女は騎士王様!?  作者: 井上 叡智
第一章 異世界少女は騎士王様!?
3/6

第3話 非日常ー魔獣、襲来ー

朝が来た。

昨日は色々あったから、かなり体がダルい。

まあ、今日は休みだからいいか。

そして再び俺は目を閉じる。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

結局俺は、奏に叩き起され、やむなく二度寝を諦めたのだった。

「ったく。お前は毎回殴らなきゃ人を起こせないのか!」

「だって、おにぃがそこにいたままだと邪魔だし。てゆうか、アーサーさんもう起きてるよ?」

ふと見ると、椅子に腰掛けている少女がいた。

アーサー。彼女は異世界から来た王様だ。

「ん?達也。ようやく起きたか。」

「お前、そこで見てたんなら起こしてくれよ…。」

「す、すまぬ。起こし方がいまいち分からなかったのでな。向こうではそんなことは無かったから…。」

そんな何気ない話の後、姉さんも降りて来て、朝飯を食べた。

アーサーはふとした様子で、

「そういえば、達也達の父上殿や母上殿はどこにいるのだ?一応居候の身。挨拶はしておかねばと思ってな。」

父親と母親か。

俺達には父も母もいない。俺がまだ小さかった頃に事故で亡くなったのだ。

そのことをアーサーに説明すると、

「すまない。そなたたちに聞くべき質問ではなかったな。思い出したくない物を思い出させてしまった。」

「いや、べつにいいよ。忘れるより覚えていたほうが父さん達も悲しまないだろ?」

嘘だ。むしろ忘れたい記憶だ。だけど、俺は彼女に心配をかけさせたくないと思ってもいた。


だって、アーサーは女の子だろ?


俺は彼女に重荷を背負わせたくない。だからそうやって嘘を吐く。

「そ、そうか。たしかに忘れられるより覚えられているほうが幸せだな。」

アーサーはクスッと笑いながらそう言った。

その後アーサーは俺に言った。

「だが、辛い出来事ならば心の内に溜め込みすぎないほうがいい。そのせいで心だけではなく、体にも影響が出て皆に迷惑がかかってしまうぞ。」

「心配かけてごめんな。ありがとう。」

すると、アーサーは顔を赤らめて、

「う、うむ。こちらこそ、ありがとう…。」

と、言った。

そして、その後も、遠月家の団欒だんらんは続いた。

そんな時だった。

この物語の本当の始まりと終わりが訪れたのは…



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


テレビからいきなり女性の声が聞こえてきた。

『そ、速報です!えー、たった今、新宿区内渋谷区付近にて、これは…何でしょう?犬?ではないようですが…』

テレビに映った画像には、黒い生き物が映っていた。

なんだか嫌な予感がする。俺がその写真の生き物について気づいたのは、ほんの数秒後だった。

テレビからまたしても声が。

だが、それは先程までの冷静な声ではなく、

『た、大変です!さきほどの生物ですが、ひ、人を襲い、街を破壊しているとの情報が入りました!現場から映像をお送りします!付近の住民の方々は早急に避難をとのことです!』

そこに映った映像には、「三つ首の犬」らしきものが、映っていた。

「な、なんでこんなやつが…。」

有り得ない。

あれは空想上の生き物のはずだ。

俺はその生き物の存在を否定した。

けど、それは見間違いや幻想なんかじゃなく、本物。

「な、なんで『ケルベロス』が存在してんだよ!!」

俺が放ったその言葉に、皆が凍りつく。

「お、おにぃ?」

「た、達也?」

アーサーも奏もきょとんとしてこちらを見る。

俺は動揺しつつも、状況を整理する。

「ケルベロスはギリシャ神話に登場する、『冥界の番犬』だ。神話生物の中でも有名な怪物だ。でも、なんでそんなやつがこの世界にいるんだ?」

その時だった。画面に映っていたケルベロスが動き始めたのは。

街を破壊し、人を襲っていた。人の悲鳴が聞こえる。

まずい。そう思った俺の手と足は驚くほど震えていた。

アーサーの手が俺の震えている手に触れる。

「達也。大丈夫だ、心配しなくていい。私が何とかする。してみせる。」

アーサーの瞳は真っ直ぐに達也を見つめていた。

そこには、決意と覚悟が見えた。

そして、アーサーが立ち上がり、剣を取り出した。

その時だった。無意識に俺はアーサーが取り出した剣を掴んでいた。

「っ!達也!なにをするんだ!」

「お、俺はお前を行かせない。お前が行くというなら、俺は全力で止める。それにな、俺は男だ。だから、俺が行く。」

俺はその聖剣をつかみ、家を飛び出した。

「達也っ!」

「おにぃ!」

アーサーは思った。何故そこまでして私を戦わせたくないのかと。

その時、泉理がアーサーに、

「あの子はね。あれでもあなたを心配してるのよ。もう誰も自分の前からいなくなって欲しくないからってね。」

「そう思って心配してくれるのはありがたい。だが、達也にはあの聖剣は使えないんだ。聖剣自体が選んでいないからだ。それに、達也は私とは違う普通の人間だ。だからこそ…」

「それは違うわよ、アーサーちゃん。あの子も私達も、あなたのことを普通じゃないなんて思っているわけないわよ。むしろ普通の女の子と思っているわ。それはあの子もそう。だからこうしてあなたを心配しているのよ。」

普通の、女の子。

達也はそんなふうに私を見ていたのか。

だから、心配してくれたのか。

だから…



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


俺は走った。

魔獣ケルベロスの元へ。

もう誰も死なせたりしない。

そんな思いを胸に、俺は駆け抜ける。

「っ…。ハァ、ハァ…。つ、着いたか…。」

かなり息を切らしていた。

こんな状況で戦えるとは思えなかったが、やるしかないのは承知の上でここまで来たんだ。覚悟も決めてきた。だからやるんだ。

その時、ケルベロスが、こちらに近づいてきた。

「グルルル…」

完全な敵意。俺は光のない剣を両手に持ち、魔獣の先制攻撃を待った。

RPGで言うところの、パリィをすれば、怯むだろうと踏んでいた。

周りには人はいなかった。おそらく避難したのだろう。

だから思う存分剣を振るえる。

そう思った時だった。

先制攻撃がきた。

キィィィン!

俺はその攻撃を弾いた。

しかし、ケルベロスは怯むどころか、二撃目を繰り出してきた。

「っ!まずいっ!」

咄嗟に剣で、ガード。なんとか防げたが、おそらく次に同じ不意の攻撃がくれば、防げないだろう。

それに、これはゲームじゃない。本当の戦いだ。ここで倒れても復活なんてしない。食いちぎられて殺されるだけだ。

絶対に死ぬ訳にはいかない。

俺は必死に剣を振り続けた。

俺は、守らなければいけない。

アーサーを、姉さんを、奏を、皆を。

だから俺は守るために戦う。

「うわあああああああ!」

「くそっ!なんで、なんでっ!」

俺は守りたいだけなのに。

「頼むから!俺に皆を守らせてくれよっ!」

その時だった。

聖剣が光輝き、まるで錆び付いていたような色が消え、本来の姿を取り戻した。

「っ!こ、これは…。」

バイクの音が聞こえた、その時。

「達也ぁぁぁぁぁぁぁ!」

「あ、アーサー!?な、何でここに!?」

「話は後だ!私の手を取れ!」

俺は言われるがままに、アーサーの手を取った。

「私と契約しろ!達也!」

「け、契約!?」

「そうだ!そうすることで、お前はその聖剣の力を思う存分使える!聖剣に選ばれたならばそれ以上の力を引き出せる!」

契約。それは異世界の英霊にのみ許された力をの解放の一つ。

契約者、通称マスターと呼ばれるものと契約を交わし、その契約者に自らの武装をコピーし、それを力とするもの。

「わかった!今、これしか方法がないならば!」

「一応言っておく。これはあくまで仮契約だ。本契約はこの戦いの後にする。」

契約が始まる。俺の体を魔法陣が包み、契約の終了を知らせる。

「契約、完了だ!達也、お前は仮にも私の契約者マスターだ。首のネックレスを引きちぎれば私の武装を転装てんそうできる!」

ネックレス。これか。

俺は引きちぎった。すると、瞬く間に鎧が装着された。

「す、すげえ。力が湧いてくるみたいだ。」

その途端、頭の中に情報が流れてきた。この聖剣の使い方。アーサーの記憶。いろいろな情報が流れてきた。

その中に、聖剣の魔力解放の方法があった。

それは、聖剣の名前を叫ぶことだった。それでこの魔獣が倒せるはずと踏んで、俺は…

「力を借りるぞ、聖剣っ!」

叫び、

「エクス…」

解き放て!

「カリバーァァァァァァァァァァ!」

途端光の柱が出現し、それはケルベロスを貫いた。

「ギャォォォォス!」

ケルベロスは光の粒となって消滅した。

同時に俺の鎧も消えていた。

「た、倒した…んだよな。俺。」

俺は床にへばっていた。

「すっげぇ、疲れた。」

「達也っ!大丈夫か!?」

不意に倒れ込んだ俺に駆け寄るアーサー。

「あ、うん。大丈夫。疲れただけ。で、本契約、だっけ?やるか。」

「そ、それなんだが、どうやら私の手違いで、さっき本契約をしていたらしい。すまない。」

「ははっ。なんだ、そっか。もう契約してたんだな。俺達。」

「わ、笑い事ではない!」

そうして、破壊された街の真ん中で、俺達は契約を交わした。

そして、それからが本当の始まりだったことを、まだ俺達はしらなかった。

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