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外に連れてって

 「サン、お願いがあるのですが」

 「何?」


 真剣な目でサンを見つめるメル、どんなお願いだろうかサンは身構えた。


 「私を外に出してくれませんか?」

 「え?」

 「死ぬ前に外で思いっきり遊びたいのです」

 「うーん……」


 出来ないことはない、だがその願いを叶えるにはメルにとって大きなリスクを伴う。だからサンはどうにかしてメルを説得させようとした。


 「ちょっと無理かな」

 「えー、どうしてですか?」

 「秘密」


 そう伝えるとメルは頬を大きく膨らませサンを睨んだ。そんな目で睨まれても困る。


「何でですか?どうしてなんですか?外に出してくださいよー」

 

 息継ぎをすることもなくメルはサンに言った。そしてその後大きく咳き込んだ。苦しそうに咳き込むメルの小さくて華奢な背中をさすった。

 だいぶ落ち着いた頃、メルは潤んだ目でサンを睨んだ。


 「……私は最後に太陽の光を浴びたいのです。そんな簡単なことさえも私には叶わないのですか?」

 「そんなこと、言われてもな……」

 「少しでいいんです、お願いです」


 ベットから起き上がりメルはサンに向かって頭を下げる、ここまでされては断りにくい。


 「ちょっと待って」


 サンは考えた。どうしたらメルの寿命を縮めることなく願いを叶えることができるのか。


 「あ、そうだ」


 寿命には寿命を利用しよう。

 サンは閃いた、自分の寿命を利用すればいいのだと。これは本当は違反行為である、しかし、バレないように上手くやればいいだろう。

 死神の寿命は人間の倍以上だ、一日くらい痛くも痒くもない。


 「いいよ、叶えてあげる」

 「本当ですか?」

 「うん」


 にっこり笑うメルを見るとこちらまで頬が緩んだ。

 

 「今日一日、メルは自由に動くことができるけどもし、家族とかにバレたりしたらいけないから……そうだな、昼は難しいな」

 「だったら、明日の朝でもいいです」

 「……それでいいのかい?」

 「はい、太陽の光を浴びれるのならいつでもいいです」


 メルを外に連れ出すのは明日の朝四時頃だ、そこから朝七時くらいまで自由に遊ばせる、そういう計画だ。

メルはご機嫌で鼻歌なんかを歌ったりしている。よほど嬉しいのだろう。


 「早く明日にならないかなー」

 「もう少し待ってな」

 「はい」

 「じゃあ、俺、用事あるから」

 「さようなら。また明日」


 メルは今日は早めに寝るらしい、まだ日も暮れてない時間から布団を被って目を閉じている。

 そんな様子が遠足前の子供のようで微笑ましかった。



 「……何考えてんの、あんた」

 「だから、自分の寿命を代わりに……」

 「それはわかってるわよ!あたしが言いたいのは何でそんなことしようとしてんのってこと!」

 「ああ、そういうこと」


 ハンナに相談した瞬間、怒鳴りつけられた。相談しなかったら良かったと少し後悔した。


 「だって、願いを叶えてあげたいだろ?」

 「それはいいの!別に違反ではないから、でも約束でしょう?願いことを叶える代償にその人から寿命を奪うって」

 「それは俺にはできない」

 「どうして?皆辛くてもそうしてるわよ!」

 「……それでもあの子の寿命をこれ以上縮めたくないんだ、今まできっとたくさん我慢してきたんだろうからさ」


 きっと、友達とたくさん遊んだり、学校で勉強したりしたかっただろう。

 それでも、メルはもうそうする事はできない。

 だから、最後くらい我儘を聞いてあげても罰はあたらないだろう。当たるのは自分一人だ。


 「どうなってもあたしは知らないんだからね!」


 そう言ってハンナはどこかに行ってしまった。

 叱られてもサンの決心は変わらなかった。

 明日はメルにとって最高の一日にして見せよう。




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