番外編 ママになった日、パパになった日 4
子どものパワーってすごい。
産まれたての赤ちゃんが大人しかったのは最初の半年まで。
座れるようになってからは、あいりは色々と早かった。
腹ばいになればずりずりと移動して手を伸ばし、床にある物なんでも拾って口に入れようとするし、掴まり立ちができるようになったらテーブルの上の物を払い落としたり、ぶん投げたり・・・。
本当に目が離せない。ハラハラさせられっぱなし。
よく笑うし、機嫌もいいし、良い子なんだけどね。
ただ、好奇心が旺盛というか、行動力がありまくるってだけで。
この前も、テレビのリモコンでふすまに穴をあけて、きゃっきゃと笑ってた。
恐るべし、子どもの無邪気さ。
子育てってすごく重労働。とにかく、休みがない。
それでも、村のみんなが助けてくれる。おっぱいのことや夜泣きのことも相談に乗ってくれたり、様子を見にやって来てくれる。
色々と教えてくれる先輩ママのユキちゃんのアドバイスもありがたい。
おばあちゃんも家事に手が回らない私の代わりに、料理に洗濯と張り切って動いてくれてる。腰を痛めてるから無理はさせられないんだけど。
でもやっぱり一番支えてくれてるのはユウの存在。
パパってすごい。
日々に成長してずっしり重くなってきたあいりも、ユウはひょいっと抱っこしちゃうし、ご機嫌ナナメで泣き叫んでるような時でも、高い高いをしたりして、あいりを一瞬で笑わせることができる。
ある休日の昼間。
あいりを抱っこして「可愛い可愛い」ってメロメロなユウ。
ユウは、優しいパパ。娘をかわいがっていっぱい遊んでくれる。オシメを替えるのもお風呂にいれるのも手が空いてる時には進んでやってくれる。
「マナ。疲れてない? あいりと遊んでるから、ちょっと寝ててもいいよ」
「うん、ありがとう」
ユウは、優しい・・私の旦那さま。私のことを気遣ってくれる。
「ありがと、ユウ。でも、私も一緒に遊びたいな」
「ほんと? あいりー、パパとママ三人で遊ぼうか」
「あー!」
歌を歌って、ふわふわのボールを投げたり、畳で転がったり、ご機嫌なあいりは私やユウが何かするたびにきゃっきゃと笑って、マネしようと可愛い仕草をする。
それを見て私達はかわいい、かわいいを連発する。
「あ。写真、撮ろっか。父さんが新しい写真を待ってるんだ。マナのお母さんにも送るんでしょ?」
「うん!」
あいりが産まれるちょっと前に買ったカメラ。
私が初めて撮ったあいりの写真は、アップすぎてぼやけていた。
下手くそなその写真を見てユウはおかしそうに笑った。
「あいりが可愛すぎて、つい近づいていっちゃうんだよね。わかるよ」って。
失敗しても消せるから、バンバン撮っていいよ、とユウが言うので、普段の何気ない時でもパシャパシャシャッターを切ってる。だってあいりが可愛い顔するんだもの。
「ほらほら、マナ、笑って」
ユウは私にあいりを抱っこさせてからカメラを向ける。
自分が撮られるのは、ちっとも慣れなくて、恥ずかしい。
「ね、三人で撮ろう」
「ん。タイマーをセットして・・、これでオッケーかな」
今、おばあちゃんはお出掛け中。三人で撮るのはなかなか難しい。
あいりがなかなかカメラを見ようとしなかったり、あいりに気を取られて私もユウも視線が合ってなかったり。
失敗してばっかりで、でもそれも楽しくて、大笑いしながら何枚も写真を撮った。
デジカメのモニターで撮った写真を見てまた笑う。
「ふふ。親ばかだね、僕ら」
「ほんとね」
私とユウが体を寄せて笑ってると、あいりも間に入ってきてきゃっきゃと笑い出す。ああ、しあわせだなあ。