表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/78

番外編 ママになった日、パパになった日 2

六ヶ月を過ぎると、私のお腹はむくむくと大きくなり始めた。

こんな風になると、なにがなんでも実感させられる。

この中に、私達の赤ちゃんがいるんだって。


・・・もし私がコケたら、赤ちゃんはどうなる?

もしかして、死んじゃう?


途端に心配になった。

痛みに鈍感になってしまっている私は、怪我なんてすぐ治るからと気軽に考えてた。痛いのなんて一瞬だから我慢すれば平気だって。

でも今は・・。私の身体の一部に赤ちゃんがいる。

赤ちゃんの大事な命を身体を私が預かってる。絶対に怪我なんてできない。

こんなに怪我をすることが怖いと思ったのは初めてだった。


ユウはそんな私を見て呆れたように笑う。

「僕がどんなに言っても聞かなかったのに、子どものチカラは偉大だねえ。これを機に、マナが自分をもっと大事にしてくれるようになったらいいな」って。





ぽこり、お腹の壁を叩かれた変な感触。

「ゆ、ユウ! 動いた!」

「ホント? お。すごい、すごい。元気な子だね」

「すごい! ほんとにいるんだね。この中に。私のお腹の中に」

両手でお腹を撫でる。ぽこり、ぽこりと動いている。

動いてる!

生きてるんだ。

私のお腹の中で、赤ちゃんが。

うれしい。じわりじわりと喜びがあふれてくる。

こんなに大きなお腹を抱えて、今更なにを言ってるんだって自分でも思ったけど、ユウは嬉しそうに私を見てた。

「そうだよ。マナの中ですくすく育ってる。僕らの赤ちゃんがね。

おーい、聞こえるかい? ママがやっと笑ったよ。ありがと」


その言葉に驚いてユウを見た。

「私、笑ってなかった?」

「最近ずっと、困った顔してたよ。不安そうな顔。・・・ごめんね。なんにもしてやれなくて」

「ううん。私こそ、ごめんね。自分でもよく分からなくて」

「あ。また蹴ってる。元気だね。ママが喜んでくれたから、この子もきっと嬉しいんだよ」

「うん。どんな子かな・・・早く会いたいな」

「絶対かわいいよ。もう、間違いない」

「あ、な、名前! 名前も決めないと」

「うん。男の子の名前と、女の子の名前、どっちも考えておこうか」



「マナ・・」

ユウは私の頬に手を当て、にっこり笑うとそっとキスをした。

髪を撫でて、指を撫でて、ちゅ、ちゅっと顔中にキスしてくる。

ドキドキする。

くすぐったいのと、恥ずかしいのと、心地よい感覚で、身体がぽかぽかとあったかくなるような気がした。


「マナ。マナの不安も全部、僕にも分けて欲しいな。僕達は夫婦でしょ?」

「ね?」とユウはいつものように優しく笑う。

ユウのしてくれるキスはだいすき。

ユウが触れてくれる毎に私の中のもやもやとかが消えてなくなっていくような気がした。


両腕を伸ばしてユウに抱きついた。

お腹がつかえるので体は横向きだけど。

「ありがとう。すごく不安になった時、ユウが抱きしめてくれるの嬉しかった。

ユウ、もっといっぱいキスして欲しい。ユウのキス、とっても好き」

「可愛いこと言ってくれちゃって。

安定期になって山じいも許可してくれたし、今夜は抱き合いたいな。

・・・あ、ぎゅうって抱きしめるだけじゃないよ。その先のえっちなこともね」


ユウがくすくす笑って言う。

それは、まだ私が何にも知らなかった頃のあの時の言葉だ。

抱き合いたいって言われて、言葉の通り抱きしめ合うんだと思った。

まさかその言葉にもっとすごい意味があるなんてすぐには思い浮かばなかったんだもの。


でももう、あの時の私じゃない。

もう何度も何度もユウとえっちしてるし、それが気持ちよくって二人が幸せを感じれることだって知ってる。



「ふふ。私も、ユウと抱き合いたいな。

でも、お腹の赤ちゃんがびっくりしないようにしないとね」

「じゃあ、今夜はとびきり優しくマナを抱くよ。すみずみまで味わっちゃお」

「ユウはいつでも優しいよ」

「マナにだけね」

お腹を撫でていたユウの手が私の頬を包み、キス。

やさしくて、あったかい、キス。

・・ああ、しあわせ。




ユウは前よりも慎重に体を進めていった。

「痛くない?」「大丈夫?」「苦しくない?」って何度も尋ねてくれる。

だから私も、できるだけ答えた。

「ん・・、奥の方はちょっとだけ苦しい、かな。ユウ。

ああ・・あっ、そこは、きもちいい。すごく、すき。もっと、して」

「うん。マナの気持ちいいとこ、いっぱいしたい」


ゆるーく、やさしく、でもちゃんと私の気持ちイイところを探ってくるユウ。


私が気持ち良いことを伝えると、いつだってユウは嬉しそうに「僕も」って言う。

「マナが気持ちイイと、僕もすごくイイんだ。本当だよ」って。

そういうものみたい。


ユキちゃんが教えてくれたんだ。えっちは二人で感じ合って愛し合うものだから、一方的じゃダメだって。

だから、・・・ちょっと恥ずかしいけど、私もがんばってる。

がんばると、ユウも喜んでくれるし。




いつもより時間をかけてゆっくりえっちして、終わったあとは身体を拭いて、パジャマを着る。

いつも、この二人でモゾモゾしてる時間がちょっと照れ臭い。

目が合うとユウもそんな表情をするから、一緒なのかな。


また二人でお布団に入って、手を繋ぐ。


「おやすみ、マナ」

「おやすみ、ユウ」

ちゅっ、とキス。ユウはお腹を撫でて赤ちゃんにも「おやすみ」とささやく。

私も大きなお腹の中に眠る赤ちゃんをそっと撫でた。

「おやすみ、赤ちゃん・・はやくあいたいな・・」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ